2023年7月11日無料公開記事内航NEXT

内航船員だけでなく教員も不足
船協、船員教育機関と福岡市で懇談会

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 日本船主協会・九州地区船員対策連絡協議会は7日、「人材確保・育成に関する船員教育機関‐内航海運業界懇談会」を福岡市で開催した。内航船員の採用・育成に関する最新の情報を交換し、その中で船員だけでなくその教育機関の教員も不足しているとの報告があった。
 日本船主協会九州地区船主会の鶴丸俊輔議長(鶴丸海運会長)、九州地区船員対策連絡協議会の宗田銀也会長(旭海運社長)が開催にあたりあいさつ。鶴丸議長は「ここ数年、船員教育機関の卒業生の内航海運事業者への就職者数は徐々にではあるが増加傾向にある。一方で新卒船員の定着率が低いことが問題で、船内の環境や働き方、人間関係などが離職の主因のようだ。これを解決するため、いわゆる船員の働き方改革に官民一体で取り組んでいる。職場環境を整えることで若年船員の確保・定着につなげていきたい」と話した。
 来賓としてあいさつした国土交通省海事局の小林基樹内航課長は「トラックドライバーの労働時間規制が来年スタートする。このいわゆる2024年問題により輸送力が14%減少すると言われている。さらに2030年問題というものもあり、トラックドライバーの自然減でさらに20%の輸送力が減る。こうした状況を踏まえると、船員確保も待ったなしで対応を迫られている」と語った。
 水産系高校と海上技術学校からの説明・意見交換では、卒業者数、内航業界への就職者数、生徒が就職先船社を決めるきっかけ、内航船社就職後の生徒達の声などが報告された。複数の学校が教員不足を指摘し、「家族の事情などで船員を退職する社員に教員への転職も可能だと周知して欲しい」との要望が出た。また、出向という形で一時的に教員になった事例も紹介された。
 内航海運事業者は、水産系高校、海上技術学校の生徒を採用する際に期待・重要視すること、その一方で懸念・心配すること、新卒就職者の主な離職理由、船員教育機関に取り組んで欲しいことなどを語った。
 日本船主協会内航委員会の三木孝幸副委員長(三洋海運社長)が意見交換を総括し、「少子化は日本全体の問題で、船の世界では自動化ツールの活用なども考えられるが、それでも人がいなければ船は運航できない。海外では女性船員は珍しくなく、我々も頑張って育てていかなければならない。また、若手船員が注意に委縮してしまうことについては、先輩がカバーするしかない。教員不足については、船員との賃金の差がネックだ。高齢船員が引退する際に教員への道を案内するのがいいのではないか」と語った。
 懇談会全体の総括を日本船主協会内航委員会の田渕訓生委員長(田渕海運社長)、九州地区船員対策連絡協議会の阿部和久副会長(霧島海運商会社長)が行った。田渕委員長は「内航海運でなくとも働く場所はいくらでもあるといった厳しいお話を伺った。九州は四国と並んで船員の宝庫。いい乗組員を育てていただき、内航海運に貢献いただければ幸い」、阿部副会長は「4年前はミスマッチが議題の中心だったが、今回は教員不足などの新しい課題を共有できた。また、昔気質の指導ではいけないといった耳に残るコメントが多かった」とそれぞれコメントした。

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