2024年3月25日無料公開記事内航NEXT

大型内航アンモニア船を共同検討
旭タンカー、商船三井内航、イコーズ、28~29年頃導入へ

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1万立方㍍級内航アンモニア輸送船のイメージ

 旭タンカー、商船三井内航、イコーズは、脱炭素エネルギーとしてのアンモニアを一度に大量に輸送することを可能とする大型アンモニア内航船を2028~29年頃に導入するためのコンセプトスタディを共同で実施することに合意した。22日、旭タンカー、商船三井内航が発表した。1万立方㍍級を想定し、日本で初となる燃料アンモニア輸送の大型内航船を目指す。船員の負荷低減や安全・安定輸送に向けた「サステナビリティ」を軸に、温室効果ガス(GHG)削減や汎用性、円滑な荷役といったニーズを網羅する船型開発を推進する。
 今回の取り組みを進める旭タンカー、商船三井内航は、22年に商船三井とともに「AnMO内t(アンモナイト)」を結成し、今後の日本国内での燃料アンモニア需要を見据えアンモニア内航船の在り方について検討してきた。これが今回の大型アンモニア内航船のコンセプトスタディ実施につながった。旭タンカーの澤田真新規事業室長は「検討を重ねる中で必要な船型がどういうものかがなかなか見えてこなかった。そのため、まずわれわれからコンセプト船を打ち出そうという試み」と説明する。
 コンセプトスタディでは、旭タンカーの電気推進タンカーを含む内航タンカーの運航経験、商船三井内航の省力・安全に関する技術支援、イコーズのアンモニア内航船の船舶管理ノウハウを活用し、「顧客のみならず、現場で働く船員にも喜ばれる船」の建造を目指していく。
 現在、アンモニアは肥料原料としての利用が中心で海上輸送量も限定的だが、脱炭素化の流れの中で二酸化炭素を排出しない次世代のクリーンエネルギーとして世界的に需要が高まっている。日本でも、外航船でアンモニアを輸入した後、電力事業者をはじめとする需要家まで内航船で二次輸送を行う新たな需要増加が見込まれている。
 旭タンカー、商船三井内航は「既存のアンモニア内航輸送は容量1000立方㍍程度の船で行われているが、経済性や昨今問題となっている船員不足への対応も視野に、1万立方㍍級の大型アンモニア内航船の投入が有効と考えられる」としている。
 コンセプトスタディの軸とする「サステナビリティ」では、「省力」「安全」「ウェルビーイング」の3つを柱とする。それぞれ船員の負荷低減への寄与、危険物輸送での安全率向上への寄与、定員定着率向上と長期安定輸送への寄与を目的とし、施策案として荷役遠隔操作や離着桟支援、通信環境向上などを検討する。
 また、船型開発においては「GHG削減」「汎用性」「円滑な荷役」の実現に向け、燃料電池を含むアンモニア燃料導入の検討などを行う。
 旭タンカーは「お客さまのアンモニアサプライチェーン構築の取り組みに貢献するとともに、電気推進船の運航をはじめとする先進船舶の開発・導入を通して内航海運の喫緊の課題である乗組員の労務環境改善と地球環境保全に取り組み、サステナブルな海運業を実現する。そして、さらなる安全、かつ良質な輸送サービスを提供することによってわが国の社会・経済に貢献していく」とコメント。
 商船三井内航は「商船三井グループの一員として外航と内航の連携により、お客さまのアンモニアサプライチェーン構築の取り組みに貢献するとともに、当社事業活動での脱炭素を推進することによって、環境価値の事業化とカーボンニュートラル社会の実現に貢献していく」と述べた。

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