2024年3月5日無料公開記事内航NEXT

海上の通信環境改善、船員定着に期待
内航海運活性化セミナー

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講演のようす

 国土交通省近畿運輸局と神戸運輸監理部は2月28日、「内航海運活性化セミナー」を大阪市内で開催した。海上の通信環境の改善が進み、DX(デジタルトランスフォーメーション)化の促進が期待されていることについて講演が行われた。
 国交省海事局船員政策課の木坂祐一朗課長補佐は、「海上における通信環境の改善に向けた取組み」で講演。これまでの衛星通信は、低速であったため業務上必要な通信ができれば十分だった。しかし非静止衛星を用いた衛星通信で、通信環境が改善されて陸上とそん色がなくなるとした。非静止衛星を一体的に運用する衛星通信サービスの展開で、高速・低遅延のサービスが期待されるが、一方で使い放題プランなど静止衛星による衛星通信サービスのメリットも指摘。事業者の経営環境、事業形態、運航実態に合わせた最適な通信インフラ、料金プランの選択が重要とした。海上の通信環境の改善で、若年船員など船員の定着率が向上することも期待した。
 丸三海運の荒川和音会長は「船陸間通信におけるDX化の実施と成果」で話した。同社が2021年に就航させた内航コンテナ船“島風(しまかじ)”は、高度船舶安全管理システム、高効率推進器、最適航海計画支援システムなど搭載。実証実験を行った結果について話した。船舶動静管理では、陸上管理者から航海中の本船への動静確認(位置・速度など)をする必要がなくなり、陸上管理者および船舶乗組員(当直者)の電話応答など業務負担を軽減。船主へのリアルタイムでの位置情報の提供が可能で、輸送サービス品質が向上した。ブリッジに設置したカメラにより、気象海象や航行状況の確認が可能となり、陸上管理者と連携した安全航行を行った。特に、悪天候時には気象海象の状況を把握しやすく、本船とのコミュニケーションがスムーズに行えたという。
 船員も休憩時間にSNSで家族や友人とコミュニケーションを図るなど、陸上と変わらない通信環境を受けた。台風からの退避で、海上での停泊数が数日続いた際は、通信が可能なため有用に働いた。課題としては、データの大きいコンテンツはダウンロードに時間がかかり、スムーズに閲覧できないこともあった。衛星回線を導入した当初は、LTE回線から衛星への切り替えがスムーズにいかず、圏外になるなど不安定な通信状況になったりしたが、衛星回線への優先接続設定を行い対応した。
 鉄道建設・運輸施設整備支援機構(JRTT)の松井裕技術企画課長は「内航船のカーボンニュートラルと労働環境改善に関する技術動向」について説明した。内航の課題解決に向けて技術の橋渡し役を担う「内航ラボ」、内航の省エネ船、廃食油回収・バイオ燃料活用など説明。海上の通信環境を向上させる取り組みでは、船内LANを搭載済みの内航船に、PLC(電力線通信)機器を追加で設置して、実船で電力線による試験通信を行ったことを説明した。

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