2024年4月1日無料公開記事内航NEXT 内航キーマンインタビュー

《連載》内航キーマンインタビュー㊺
雑貨・商品車の輸送量増加を見込む
栗林商船・栗林社長、2024年問題に対応

  • X
  • facebook
  • LINE

栗林社長

 栗林商船の栗林宏𠮷社長は本紙インタビューで物流の2024年問題の同社事業への影響について、「当社のRORO船航路は寄港地が多いこともあり、モーダルシフトの問い合わせが多く来ている。こうした需要を踏まえて、2024年度の当社の輸送量は雑貨が2%、商品車が5%のそれぞれ前年度比増加を見込んでいる」と話す。2024年度は同社の中期経営計画の最終年度で、経常利益目標の20億円の達成を見込んでいる。

 — 2023年度の荷況は。
 「近年のトレンドから変わらず、当社の主要貨物である紙製品の減少が続いた。段ボールは微減だったが、印刷用紙の落ち込みが大きく、これに伴い原料古紙の荷動きも減っている。雑貨も北海道の農作物が天候不順で不作だった影響で盛り上がりに欠けた。食品や飲料の値上げが荷動きに影響したこともあり、全体の輸送量は予算を下回った」
 — 2024年度の輸送量と業績の見通しは。
 「当社のRORO船航路は寄港地が多いこともあり、2024年問題を見据えてモーダルシフトに関するお問い合わせを多数頂いている。こうした動きに対応して、当社は今年2月から大阪寄港を週4便に増やしたのに加え、混載サービスを大阪/仙台航路で開始した。東京/大阪は物流の大動脈のため、これを中心に海運にシフトする貨物を取り込んでいく。特に商品車は既にここ数年でモーダルシフトが進んでいる。これまでは新車トラックや中古乗用車は陸送されていたが、トラックドライバー不足により他の品目に先立って海運にシフトしている。こうした需要を踏まえて、24年度の当社の輸送量は雑貨が2%、商品車が5%のそれぞれ前年度比増加を見込んでいる。紙製品の減少基調が続くと見ているが、雑貨と商品車の増加でカバーする」
 「懸念材料は燃料高が続いていることだ。現在は燃料油価格激変緩和補助金のお陰でBAF(燃料価格調整金)の上昇を抑えることができているが、補助金が4月末で終了する予定で、BAFが増えれば海運の競争力が低下してモーダルシフトの妨げになる。現状は海運とトラック輸送の運賃に差があるため、補助金の延長によってその差を埋めることがモーダルシフトの推進に必要だ」
 「2024年度は当社の3カ年の中計の最終年度で、中計で掲げる経常利益目標20億円の達成を見込んでいる。当社が中計を対外発表したのは今回が初めてだったが、これまでの成果を踏まえながら次の中計の検討を始めたところだ。3カ年という中計の期間が妥当なのかも含めて検討していきたい」
 — 今後の船隊整備計画は。
 「RORO船は2019~21年に新造船4隻が竣工してリプレースはひと段落したが、他船社に貸船している“神明丸”(2000年竣工)のリプレースを検討している。499総トン型貨物船も船齢の高い船があり、数年内にリプレースする。内航船では代替燃料の方向性がまだ見えないため、当面は当社が特許を持つ『ゲートラダー』などのさまざまな省エネ技術を組み合わせてCO2の排出を減らしていく」
 — 内航海運業界全体の課題である船員の確保育成に関する取り組みは。
 「RORO船は比較的船員を採用しやすいが、以前ほどの余裕はない。若手船員を余裕を持って配乗して育てたいが、なんとか回しているというのが実情だ。学校訪問などを地道に行って新卒者を採用する方針は変わらない。乗船期間が業界全体で短縮化しているが、当社は2カ月乗船1カ月休暇の配乗ローテーションを現在の配船では導入している。3カ月乗船ではこれからは若手船員を採用するのは難しいのではないか。船内Wi-Fiも整えている。また、若いうちに陸上勤務も経験してもらっており、船に戻った後も船舶管理、営業などの陸上業務が分かると全体像を考えながら仕事をすることができる」
(聞き手:深澤義仁、伊代野輝)

関連記事

  • Sea Japan 2024 特設サイト
  • カーゴ