2024年7月18日無料公開記事内航NEXT

外航船の転籍や船舶の大型化
国交省ら、航空燃料不足で内航対応案

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 国土交通省と経済産業省による航空燃料不足への対応に向けた官民タスクフォースの会合が16日に開かれ、輸送力増強などの行動計画案が示された。内航海運分野の取り組みでは外航船の転籍による既存船の活用や船舶の大型化が挙げられた。これらの実行には主にコスト面での課題が多いことから、適正運賃の収受がポイントになると見られている。
 同日の会合では燃料供給不足を解消するために必要な対策をすぐに取り組める「短期」とロングスパンで実行していく「中長期」に分けて整理。内航海運分野では短期的な取り組みとして既存船のフル活用による輸送力確保、中長期では船舶の大型化をラインアップした。
 具体的な対応について、タスクフォースのメンバーである国交省海事局の伊勢尚史内航課長は「ジェット燃料のみならず国内のオイルタンカー全体の輸送力を増強することで航空燃料供給不足を解消したい」と話す。短期的な取り組みとしてまずは外航船が日本籍船に転籍して内航輸送を担う。そのほか、ケミカル船を灯油などの揮発油輸送に転用することで空いた白油タンカーの輸送分をジェット燃料に充てる。荷主である石油元売りの系列を超えた船舶の融通も国交省がマッチングの手助けを行う。また、満載での輸送にも取り組む。例えば、現状では5500kl積のタンカーでも切りのいい数量で輸送するために3000klや5000klで積載することが多いという。これを満載にすることで輸送効率をアップさせる。
 中長期的には船舶の大型化を推進する。5000kl積を1万kl積にすると、必要な船員数は前者が12〜13人、後者は17〜18人のため船員不足に対応しつつ輸送力を増強できる。行動計画案には船舶の大型化とあわせて、製油所・空港のタンクの増強や岸壁・荷役設備の更新も盛り込まれた。
 ただ、これらの取り組みを実行するには船主らのコスト負担は大きい。内外航兼用船として運航する場合は近海や遠海区域も対応するために高いグレードの海技免状を持つ船員を充てる必要があり、運航費もその分かさむ。船舶の大型化では船価が高止まりしているのに加え、2050年のカーボンニュートラルに向けて新燃料に対応した船舶への更新が求められており、新造船の建造にはこれまで以上のコストがかかる。あるタンカー船主は「取引しているあるオペレーターでは船主が1割以上減ってしまった。このオペレーターだけでなく他社も同じような状況だと思う。新造船も20億円でつくれたものが今は30億円に値上がりしている。カーボンニュートラルの潮流の中で石油需要は減るのに高い船価でつくるのか疑問が残る。廃業を選択する船主も出てくるのではないか」と吐露する。伊勢課長も「こうした取り組みには原資となる運賃の適正収受は欠かせない」と話す。十分な運賃が航空燃料不足を解決するための鍵の1つにもなりそうだ。

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