2024年3月8日無料公開記事内航NEXT

内航課題解決技術の研究報告
船技協セミナー、隊列航行・荷役革新など

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 日本船舶技術協会は6日、研究開発成果報告セミナー「内航船の課題解決に向けて」を都内で開催した。内航海運のカーボンニュートラルや人手不足などの課題解決につながる水素燃料電池船や船上荷役装置の革新(マテリアルハンドリング機の導入)、隊列航行(トリプル連結バージ船)などの新技術の研究開発の状況を、同協会のほか海上技術安全研究所、内航ミライ研究会、広島大学大学院先進理工系科学研究科、富士通の担当者がそれぞれ報告した。
 セミナーでは東京海洋大学学術研究院海洋電子機器工学部門の清水悦郎教授が「自動運航船・カーボンニュートラル船開発の現状と可能性」と題して基調講演を行い、「洋上風力発電設備の設置によって、ただでさえ船員不足と言われている中で船舶を使うニーズが増え、さらに人が必要になる。それを助けるためにも自動運航技術を開発していく必要があると個人的には考えている。例えば、洋上風力発電設備のためのCTV(クルー・トランスファー・ベッセル)や定置網漁船、タグボートのように複数隻が連携して航行する船舶では、現状でも自動運航技術を適用できる可能性が高いのではないか」と語った。
 船技協は内航分野に関して「内航カーボンニュートラルの実現に向けた新技術の安全性評価手法の構築」と「内航自動化・デジタル化の環境整備事業」の2つのプロジェクトを日本財団の助成を受けて実施し、その成果の報告が今回のセミナーの主目的。
 内航カーボンニュートラル事業では、トラックの隊列走行を内航海運で実現するトリプル連結バージの概念設計・技術的実現可能性調査のほか、船上荷役装置としてマテリアルハンドリング機を搭載するガット船の安全評価を行った。24〜25年度はトリプル連結バージの標準安全評価手法の構築と事業性評価・活用提言、水素燃料船やタンカーの船内電化・自動化などの新コンセプト船の代替設計のための安全評価手法の構築を実施する。内航ミライ研究会の渡邉慶太理事は「今回選定したマテリアルハンドラーについては、実際の操作者からも簡易性と安全性の両立が期待できるとの声があり、俗人的ではなく一定の技術を持つ作業員であれば操作できる機器になる可能性を非常に感じた」と語った。
 内航自動化・デジタル化事業では、自動車分野で取り組みが進んでいるダイナミックマップの船舶版の研究開発の状況を海上技術安全研究所と富士通の担当者が報告。また、内航ミライ研究会が内航船内の弱電規格などのニーズに関するアンケート調査の結果を報告した。同会の曽我部公太専務理事は「タブレットなどのデジタル機器の船内での利用ニーズが多い一方で、デジタル機器であるかどうかに関係なく船舶安全法や船舶設備規定、NK規則に準拠し相応の試験を行った認定品が必要といった課題がある。タブレットで主機データを見たい、荷役装置を動かしたいといった要望もあるが、一般的に流通しているタブレットやパソコンなどには舶用規格は今のところないと思われる」と述べ、対策案としてMIL規格(米軍調達基準)の活用などを挙げた。

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