2024年3月13日無料公開記事内航NEXT

九州発着航路で複数選択肢提示
商船三井さんふらわあ、2024年問題対応で

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(左から)松本執行役員、藤井部長

 国内最大規模のフェリー・内航RORO船事業会社として2023年10月に誕生した商船三井さんふらわあ(東京都千代田区、牛奥博俊社長)は今後モーダルシフトの拡大が見込まれる九州発着航路においてフェリーとRORO船のサービスを提供できることを強みに物流の2024年問題に対応していく。フェリーでは有人トラックの乗船が既に増加。RORO船による無人シャーシ航送の需要は数年後から徐々に増えると見込む。松本淳執行役員と藤井純物流営業二部長に2024年問題の対応状況や見通しを聞いた。

■九州全域に営業拠点

 — 昨年事業統合して新たなスタートを切った。
 「当社は商船三井フェリーとフェリーさんふらわあが事業統合して誕生した。商船三井フェリーでは苫小牧/大洗でフェリーを1日2便、東京/博多・苅田でRORO船を運航。フェリーさんふらわあでは大阪/別府、大阪/志布志、神戸/大分の各航路を毎日フェリーで運航してきた。現体制では2社のこれまでの事業を合わせて定期航路6航路、運航船14隻を有する国内最大規模のフェリー・内航RORO船事業会社となった。今後モーダルシフトがさらに広がると見られる九州発着航路でフェリーとRORO船両方のサービスを提供しており、1社で関西発着、関東発着の輸送ルートを提供できるのが強みだ」
 — 2024年問題で荷動きに変化はあるか。
 「フェリーでは北海道航路、関西航路ともに有人トラックの乗船が増えてきている。今まで使ってきたトラックでそのまま乗船できるので、労働時間短縮の効果がすぐに出やすく、4月の規制開始を前に利用が進んでいるようだ。RORO船については、大きな変化は起きていないものの問い合わせは増えてきている。九州/関東を従来陸送している自動車部品や建材といったストックポイントに納める貨物の引き合いが多い。ただ、足元は国内全体で荷動きが停滞している状況で、シャーシ輸送は単車トラック輸送に比べて輸送会社の追加投資が必要であり、荷主との輸送ロット調整が必要なためなかなか利用が進んでいない印象だ」
 — 2024年問題への対応で、合併の効果は出ているか。
 「事業統合により九州での地盤が強化された。6航路のうち5航路が九州発着で、営業拠点が北部九州、中九州、南九州にあり、九州全域をカバーできる体制としていき、新たなアプローチを行っているところだ。例えば、熊本発の貨物は北部九州を経由して関西や関東に運ばれることが多いが、当社の大分発着航路を使い走行距離を短縮するといった提案をしている。半導体需要に沸く熊本と当社のフェリー発着港がある大分を結ぶ中九州横断道路の整備も急ピッチで進められており、追い風が吹いている。片荷の課題もそれぞれの航路でフォローし合う体制にしていきたい」

■シャーシ浸透が海上シフトの鍵

 — モーダルシフト推進の課題は。
 「九州でシャーシ輸送を広めることが海上輸送への移行に欠かせない。九州/本州は陸続きのためシャーシが根付いておらず、現状ではプレーヤーも少ない。そのため、荷主や物流子会社などからは船だけでなくシャーシ運行も含めた海陸一貫輸送の問い合わせが多い。トラック運送事業者自身がシャーシやヘッドを購入して輸送するようになるには、現在保有しているトラックの更新のタイミングになるため5〜6年はかかるのではないか。シャーシを九州に根付かせることが第一の使命だと考えている」
 「シャーシの利用を増やすには、積み合わせできる中継拠点も必要だ。2024年問題に対応するスイッチ輸送のための中継拠点が増えてきているが、これらの施設に積み合わせ機能を持たせることや、新たな積み合わせ施設が増えていけば小ロットの貨物を組み合わせてシャーシでの海上輸送もできる。貨物の種類を問わず、そうした物流拠点が増えていくだろうと期待している」
 — 船隊整備についてはどうか。
 「昨年日本初のLNG燃料フェリー“さんふらわあ くれない”“さんふらわあ むらさき”を就航したのに続き、2025年には大洗/苫小牧航路に新造LNG燃料フェリー2隻が就航する予定だ。新造船はトラック積載台数が増えるので、さらなるモーダルシフト需要に応えられる。LNG燃料は従来船と比べて環境にやさしく、そうした側面からも荷主にフェリーの利点を訴求していきたい。RORO船も、東京/博多航路の“さんふらわあ はかた”と東京/苅田航路の“むさし丸”はいずれも2003年竣工で、28年の更新を予定している。こちらも船舶の大型化や次世代燃料への対応を考えていきたい。LNGに限らずさまざまな選択肢から最適な燃料を検討していく」
(聞き手:伊代野輝)

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