2023年4月12日無料公開記事内航NEXT

マリンドウズ、グリッド、グロークが講演
内航NEXT第2回セミナー、解決策を提示

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 海事プレス社は、内航海運業界を応援するキャンペーン「内航NEXT」の第2回セミナーを11日にオンラインで開催した。今回は内航海運業の課題解決に向けたソリューションを提供するマリンドウズ(Marindows)の末次康将CEO、グリッドの照井一由取締役AI事業本部長、グローク・ジャパン(Groke Japan)の住吉彩乃副支店長(三菱商事船舶部)が講演し、内航海運業が抱える課題とその解決策、自社の取り組みなどについて語った。
 初めに「スマホ化EV船と船版CASEで海洋版テスラを創り、内航海事産業を日本最大の成長産業へと変革する」と題して講演したマリンドウズの末次CEOは、内航業界が抱える課題を説明した上で、「課題解決のためには業界を飛躍的に成長させるしかない」と指摘した。具体的なアプローチとして「船版のテスラや船のスマホ化によってエコシステムを作りたい。そのためにはEV船を世の中に広く普及をさせなければならない。そこで必要になるのが徹底した標準化、モジュール化、大量生産だ」とし、そのために進めている「DroneSHIP」プロジェクトを紹介。「このプロジェクトの肝はEV船の価格破壊を起こすことで、まずは既存船と比べてプラス15%以内、その先のターゲットとして既存船以下を目指す」と説明した。さらに、「建造量も300隻まで増やしたい。そのために強化したいのはアジア圏への積極的なセールス展開だ。アジアという大きな1つのサークルの中で内航船を増やしていく」と構想を語った。「船単体ではなくエコシステム全体で価値を生むことで、内航業界はサステナブルに成長していける」と強調した。
 続いてグリッドの照井取締役が「デジタルツインとAIが実現する内航船DX最前線」とのテーマで講演。同社の事業について、社会インフラの計画業務を最適化するAI(人工知能)エンジンの開発をしていることを説明し、「われわれのポリシーは単にデータ分析やAIモデル開発の技術力を提供するのではなく、最新技術を実業務で利用していただくことだ」と述べた。計画業務最適化への取り組み例として、出光興産と実現したAI技術による内航船の配船計画の最適化を紹介。「実証実験の結果、燃料コストの大幅な削減、安全在庫の遵守、業務負担の削減などが実現でき、輸送効率が20%向上した」と説明した。また、同社が開発したアプリケーションで、海上輸送の配船計画に特化した「ReNom Vessel」について、(1)AIエンジンが配船計画を自動立案することで、人手による計画立案業務から解放される、(2)日々変動する状況に合わせてAIが何度でも計画を立案し、状況に合わせて計画を作り替えることができる、(3)必要とあればいくつかのケースを想定し、主要KPIを比較し、ベストな配船計画を導き出す—などの特徴を紹介した。
 最後に「船の目となる状況認識システム−Groke Proで踏み出す自律運航への第一歩−」と題して講演したグローク・ジャパンの住吉副支店長は「グロークは世界で初めて自律運航の実証実験を成功させたロールスロイスの出身者と三菱商事によって共同設立された。高い技術力を持っていて、事故の軽減や乗組員の負担軽減などの課題に取り組んでいる」と紹介。状況認識システムの開発については「日本の内航船が抱える乗組員不足や高齢化などの課題を、デジタル技術を用いて解決できないかというのが出発点になっている。現場の乗組員から出た課題に対して、赤外線カメラやセンサーフュージョンなどの技術を用いることで解決してきた」と説明。また、自社の「Groke Pro」の特徴として、本船機器との接続が不要なのでレトロフィットが簡単なこと、船内で完結するため通信環境の整備は必要ないが、通信のつながるところに行くとデータがクラウドに上がって機械学習が行われてアップデートされることなどを挙げた。グロークは現在、船隊を一元管理・監視できる遠隔監視管理システムも開発中で、「グロークの技術は将来の自律運航の一翼を担える」と語った。

末次氏

照井氏

住吉氏

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