2022年7月25日無料公開記事内航NEXT

新造RORO船が26日就航
近海郵船、東京/大阪/那覇航路に

  • X
  • facebook
  • LINE

新造RORO船“しゅり”

 日本郵船グループで内航定期航路を運営する近海郵船は26日、新造RORO船“しゅり”を東京/大阪/那覇航路に投入する。同船は日本シップヤードで建造。船主は瀬野汽船を起用する。現在、同航路に投入されているRORO船の旧“しゅり”と代替される。既存船と比べて大型化することで積載能力を増強するほか、船内電源も増やし、食品などの冷凍冷蔵貨物の輸送需要に応える。営業区間も従来の東京・大阪/那覇間だけではなく、新たに東京/大阪間の輸送も始める。トラックドライバーの時間外労働規制に伴い、長距離でのトラック陸送が難しくなるとされる「2024年問題」が懸念される中、モーダルシフト需要に応えていく。
 近海郵船は現在、苫小牧/常陸那珂間、苫小牧/敦賀間、敦賀/博多間、東京/大阪/那覇間でRORO航路を運航している。近年は新造船へのリプレースを進めており、2015年に苫小牧/敦賀航路の3隻、2018年に苫小牧/常陸那珂航路の2隻を新造大型RORO船に入れ替えた。いずれの船舶も国交省海事局が実施する船舶の省エネ・省CO2性能を客観的に評価する内航船「省エネ格付け」制度で最高位の格付けに認定されており、省エネ化と輸送能力の増強を図った。
 東京/大阪/那覇航路は、近海郵船と琉球海運が共同運航している。琉球海運は2017年、同航路に新造船2隻を投入したが、近海郵船の運航船となる旧“しゅり”は2002年に就航し、今年で船齢20年となっていた。高齢化が進んでいたことから今回、新造船とリプレースすることとなった。
 新たな“しゅり”は1万5816総トンで、従来船の9813総トンから大型化した。全長は180.3m、型幅27.0m、満載喫水7.20m、航海速力約21.1ノット。ランプウェイは船首側が7.0m×30.0m、75トン、船尾側が7.0m×38.0m、75トン。トレーラーの輸送能力は13m換算で161台となり、従来船と比べて約3割増強する。コンテナを積載する場合は13mトレーラー111台とコンテナ121TEUを積むことが可能だ。沖縄県は日本国内で唯一人口が伸びている地域で、若年人口も多くなっている。今後も消費財など需要が底堅く見込まれており、輸送能力を高めることで輸送ニーズに応えていく。冷凍冷蔵貨物用の船内電源は従来船から35口増やし、計100口とした。内訳は220Vが95口、440Vが5口。充実した電源を活用し、食品など冷凍冷蔵貨物の取り込みを進めていく考えだ。
 旧“しゅり”は沖縄特例船であったため、東京・大阪/那覇間の輸送のみに対応していたが、新造船は沖縄特例船ではなくなるため、東京/大阪間の貨物輸送もできるようになる。東京/大阪間は国内物流の大動脈となり、現在はトラック陸送が主流となっている。だが、足元では荷主の環境意識の高まりやドライバー不足のほか、2024年問題への対応として海運モーダルシフトの機運も高まっている。近海郵船は新造船の投入を契機とし、首都圏に近い東京港・有明ふ頭に寄港する強みも生かしながらモーダルシフト需要に応え、集貨を進めていく方針だ。
 安全・安定輸送の観点からは、フィンスタビライザーを搭載し、船体動揺を減じる。また陸側でも主機の運転状況確認ができ、安全運航に役立つシステム「SIMS3」を搭載する。このほか環境に配慮した省エネ設計としており、脱炭素化に貢献する。
 新造船は26日大阪発から運航を開始する。運航スケジュールは東京・月曜午後6時発、大阪・火曜午後2時着。大阪・同日午後8時40分発、那覇・木曜午前7時着。那覇・同日午後7時発、大阪・土曜午前8時着。大阪・同日正午発、東京・月曜午前8時着。発着ふ頭は、東京港が有明ふ頭、大阪港は南港かもめふ頭、那覇港は那覇新港となる。

関連記事

  • カーゴ
  • Sea Japan 2024 特設サイト