1. コラム

2017年9月29日

【四海茫々】(265)パラドックス

 彼岸花が咲いて散った。10月初旬まで見頃という所もある。曼珠沙華とも呼ばれる花で、決まった場所でほぼ同時期にすっくと立って開花する。律儀だと思う。自然界の生き物とはそうしたもので続き

2017年9月22日

【四海茫々】(264)鍛練と鍛錬

 1980年代初頭、大阪商船三井船舶の経営企画部副部長、生田正治氏は社内行革の切り込み隊長として尋常一様でない働きを見せた。  とりわけ見事だったのは定航本部との意見調整。「本部制続き

2017年9月15日

【四海茫々】(263)阿修羅に烈風

 日本船主協会長、永井典彦氏(大阪商船三井船舶社長)の政策秘書に抜擢された生田正治氏は1年が経過したところで経営企画部副部長兼務となった。企画と予算の両チームを所管し、会社全体に目続き

2017年9月8日

【四海茫々】(262)課長の反抗

 説明が前後して申し訳ないが、話を1970年代の生田正治氏に戻したい。ロンドン支店で第3次中東戦争にぶつかり、基軸通貨だったポンドの切り下げも目の当たりにした生田さんは70年(昭和続き

2017年9月1日

【四海茫々】(261)オートクチュール

 「アライアンス」なる構想の存在を記者が初めて知ったのは1994年(平成6年)の連休明け5月10日、記者発表の席上。大阪商船三井船舶、米国APL、欧州(オランダ)ネドロイド、香港O続き

2017年8月25日

【四海茫々】(260)アライアンス誕生

 大阪商船三井船舶の生田正治氏は見えない世界に踏み込み、縷々、事績を重ねた海運人である。  まず、見えない世界とはなんぞやの問いに答える必要があろう。格好の手引書として岩波新書『文続き

2017年8月10日

【四海茫々】(259)見えない世界

 昔、マンハッタンでロンドンとニューヨークの違いが話題となり「譬えるならロンドンは辛味が利いたマスタード、ニューヨークは甘味が強いケチャップ」と語った海運人がいる。この指摘には“あ続き

2017年8月4日

【四海茫々】(258)因縁の地

 仏教界に「血脈相承」なる言葉がある。法の教えが師から弟子に相続されることをいう。  海運界にも固有の理念や理想を継承しようとする滔々たる流れがある。“三井ファイト”がその好例。同続き

2017年7月28日

【四海茫々】(257)基軸通貨の乱

 みなさんは世界主要航路の運賃がポンド建てだった時代をご存じだろうか。ドル建て運賃への変更が始まったのは、およそ半世紀前。それ以前はポンド建てだった。世界経済と海運業のパラダイムは続き

2017年7月14日

【四海茫々】(255)解題

 1993年(平成5年)秋、大阪商船三井船舶社長の転法輪奏氏は次期社長問題についてこう発言した。  「相対立する問題、事柄を解消して高次元の対応を実現し得る人材が1人存在する。彼な続き

2017年7月7日

【四海茫々】(254)次期社長に託す

 「あゝおまへはなにをして来たのだと…吹き来る風が私に云う」は中原中也作『帰郷』の一節だが、転法輪奏氏の心境はこれだった。  氏は、コンテナ化の初期段階から航路開設とサービス網の拡続き

2017年6月30日

【四海茫々】(253)忸怩たる思い

 1990年代初頭の転法輪奏氏は怒れる経営者だった。  欧州同盟解体論を主張したし、航路安定化協定の効力拡大も唱えた。氏は弊社物流情報誌のインタビューに応じ、こう語った(大意)。 続き

2017年6月23日

【四海茫々】(252)行蔵は我に存す

 親譲りの無鉄砲で子供の頃から損ばかりしていたのは漱石の『坊ちゃん』だが、海運界にも無鉄砲で鳴らした人物があまたいた。  ある席で「例えば」という話になり、日本郵船元副社長の高橋宏続き

2017年6月16日

【四海茫々】(251)世界規模

 邦船の定航業は、1960年代に始まったコンテナ化が70年代で本格化し一大変革期の賑わいを見せた。欧州同盟(FEFC)の中でトリオ・グループが誕生したのもこの70年代の初頭。在来船続き

2017年6月8日

【四海茫々】(250)桎梏の世界に訣別

 1980年代後半の邦船北米定航は船隊整備に続いて自営港頭ターミナルの立ち上げ、ダブルスタックトレインの設営、トラック業への進出、内陸物流拠点の整備、米国現地法人の設立、新情報シス続き

2017年6月2日

【四海茫々】(249)奇怪至極

 1990年代初頭の国際定航界にあって喫緊の課題は適正運賃の収受であった。  1984年(昭和59年)以降、定航運賃は崩れに崩れた。数年を経ていったんは下げ止まり、持ち直すかに見え続き

2017年5月26日

【四海茫々】(248)疾風に勁草

 「海運同盟は極東/北米航路で崩壊し、次に欧州/北米航路が崩れ、今は極東/欧州航路が危なくなっている。いわば世界3大銀座通りに相当する定期航路の同盟が全部潰れるか潰れかけるという危続き

2017年5月19日

【四海茫々】(247)思想革命

 前回、唐突に正岡子規を登場させ、「無念の一念大魔王」なる彼の言葉を注釈もなしに引用する乱暴をやってしまった。違和感を覚えた方が多かったろうと思う。どうかご容赦を。  実を言うと記続き

2017年5月12日

【四海茫々】(246)無念の大魔王

 1967年(昭和42年)、黒船研修生としてニューヨークに赴いた大阪商船三井船舶の転法輪奏氏はコンテナ船の経済合理性を認識させられ、反コンテナの旗幟を降ろすに至った。同時に新時代の続き

2017年4月28日

【四海茫々】(245)身震い

 日本/加州航路での競合を想定し在来定期船とコンテナ船の輸送コストを試算、比較した転法輪奏氏は、不承不承ながらコンテナ船の絶対優位を認識させられた。コンテナ船に関してはイスブランセ続き