1. コラム

2018年8月3日

【四海茫々】(305)所聞に溺れず独行

 「同じ情報を与えられても、ある人にとってそれは反故(ほご)となり、また別のある人にとっては自立への、あるいは大企業へと伸長する足がかりになる」  宮城谷昌光氏の散文集『歴史の活力続き

2018年7月27日

【四海茫々】(304)回天の海運人

 「一泡吹かせる」とは、強者を相手に怯まず、予想外の手を繰り出して大いに悩ませ、うろたえさせることをいう。見ている世間の大方は「天晴れ、快事なり」と囃し手を叩く。そういう場面が戦後続き

2018年7月20日

【四海茫々】(303)過誤の顛末と教訓

 商船三井の鈴木邦雄氏は1971年(昭和46年)、油送船部に異動して油送船課課長代理となり、10万トンタンカー5年定用の商いを立ち上げた。これが後に問題となる“博陽丸”プロジェクト続き

2018年7月13日

【四海茫々】(302)人間離れ

 1964年(昭和39年)の合併で発足した大阪商船三井船舶は昭和40年代に入って、定航部門のコンテナ化と不定期船部門の専用船化・大型化にまい進した。社内は活気横溢の状態であったと思続き

2018年7月6日

【四海茫々】(301)ドタバタ悲劇

 企業の盛衰、成否は時に衆知が及ばず否応なく決まってしまうこともあるが、たいていは役員、従業員の意思行動に大きく左右される。人事の重要性が説かれるゆえんはここにある。商船三井の足跡続き

2018年6月29日

【四海茫々】(300)不定期船市場の雄

 1964年(昭和39年)は、日本が東海道新幹線の開通や東京オリンピックの開会で沸き立った年である。産業活動も上向き、輸出主導型の経済成長が始まろうとしていた。そうした中で、わが国続き

2018年6月22日

【四海茫々】(299)遠因

 今は邦船大手3社体制だが、それ以前は6社が割拠する賑やかな競争社会だった。何やら懐かしい。3社に収斂されるまでの話はおよそ記憶しているが、怪しい部分もある。「6社時代を知らない」続き

2018年6月15日

【四海茫々】(298)浮き草

 勝海舟(1823~1899年)は江戸本所で生まれ育った。本所は下谷、浅草、深川とともに江戸の東外郭を構成する下町。竹本義太夫や鼠小僧次郎吉が眠る回向院(現住所:東京都墨田区両国2続き

2018年6月8日

【四海茫々】(297)事上磨錬

 初夏が過ぎ、空気が重くなってくると白い花がいい。と、聞いて神戸六甲山の北斜面へ。梅雨入りが迫る5月下旬の山歩きだった。  ヤマボウシ、シロヤシオ、ヒトツバタゴ、ホオノキ、ハクウン続き

2018年6月1日

【四海茫々】(296)近代日本の万能人

 駆けっこの掛け声として昔から「ヨーイ・ドン」がある。愛知のある町はちょっと変わっていて「オーヤマゲッセン・ドン」だった。  英文学者の外山滋比古氏(1923年生まれ)がエッセイ集続き

2018年5月25日

【四海茫々】(295)インテリゲンチャ

 下谷育ちの江戸っ子でインテリ、トンガリ、五月の鯉の吹き流し。これは噺家、彦六とクニさんこと鈴木邦雄氏の共通項を並べたものである。  伝えられる話によると、彦六は弟子が失敗する度に続き

2018年5月18日

【四海茫々】(294)鯉の吹き流し

 「東京の下谷」と聞いても実感がない。東京の生活は40年超に及んだが、振り返れば下谷に出向いたことが1度もない。行く必要、機会がなかったし、行こうと思っても何となく敷居が高い。江戸続き

2018年5月11日

【四海茫々】(293)トンガリ

 譬えるなら「冬の台風」。2000年(平成12年)6月、商船三井社長の席に就いた鈴木邦雄氏にはそういう印象があった。ただし、台風といっても豆台風。それが大方の第一感であったろう。 続き

2018年4月27日

【四海茫々】(292)晩晴

 伊庭貞剛が興した会社をいうなら住友倉庫も挙げるべきであろう。本連載前回を読んだご仁から指摘された。失礼しました。  1899年(明治32年)、住友銀行(現在の三井住友銀行)の倉庫続き

2018年4月20日

【四海茫々】(291)民生日用の世話

 前回、末尾で「住友化学を興したのも伊庭貞剛といえる」と記した。少々、乱暴なので説明を加えたい。  住友は別子銅山から産出した銅鉱を新居浜の臨海工場で製錬していた。しばらくすると、続き

2018年4月13日

【四海茫々】(290)浮利に趨らず

 愛媛県新居浜の別子銅山跡にはぴったりの謳い文句がある。「天空の歴史遺産」。  跡地の中で最も高い場所は銅山越と呼ばれる山の尾根。標高は1294m。また「東洋のマチュピチュ」といわ続き

2018年4月6日

【四海茫々】(289)木を植えた男

 フランスの作家、ジャン・ジオノの短編小説『木を植えた男』をご存じだろうか。  「プロヴァンス地方の高地をあてもなく旅していた『私』は、1人暮らしをしている寡黙な初老の男と出会った続き

2018年3月30日

【四海茫々】(288)糊塗せず

 中国北宋の蘇東坡が詠んだ詩の一節に「人生 字を識(し)るは憂患の始めなり」がある。  識字に限らず世の中の好いことはそれだけで終始しない。何事も正と負は一対、不可分の関係で動くよ続き

2018年3月23日

【四海茫々】(287)“虫”退治

 近江商人の心得として「三方良し」がある。  売り手良し、買い手良し、世間良しにつながる商いを意味する。近江は物づくりが盛んな土地である。さらに私塾『藤樹書院』(本連載283回参照続き

2018年3月16日

【四海茫々】(286)豪気

 橋本峨山(1852~1900年)の書に「名利を求めず、栄を求めず、ただ縁に随(したが)って、この生を度(わた)る」がある。洞山良价禅師“自戒の偈(げ)”と注釈されている。伊庭貞剛続き