2025年4月24日無料公開記事洋上風力発電

米国洋上風力発電所の建設が一時停止
米政府が命令、認可取得済みの案件に

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 エクイノールはこのほど、米国政府の命令により、ニューヨーク州で建設中の洋上風力プロジェクト「エンパイア・ウインド」の建設工事を停止したと発表した。同社は命令に対する不服申し立てなど法的救済を検討するとしている。同プロジェクトは2017年に米国政府とリース契約を締結。2段階に分けて開発が進められ、第1段階の「エンパイア・ウインド1」は必要となる連邦政府と州政府の許認可をすべて取得したうえで建設工事が開始されていた。認可取得済みの案件に対する命令を受け、同国洋上風力事業の先行き不透明感が強まる。
 米国内務省海洋エネルギー・管理局(BOEM)が同プロジェクトの開発を行うエンパイア・オフショア・ウインド社に対し、BOEMによる調査が完了するまで、同プロジェクトの全ての活動を停止するよう命じた。エンパイア・ウインドはニューヨーク州のロング・アイランド沖に建設するもので、サウス・ブルックリン・マリンターミナルの洋上風力専用港湾施設に向けた再開発も並行して進められていた。エンパイア・ウインド1の総発電容量は810MW、ベスタス製の15MW風車54基を設置し、2027年の運転開始を予定していた。建設段階では米国内で1500人以上の雇用を創出している。
 米トランプ政権は洋上風力に対し、新規リースの一時停止を指示する大統領令を発令するなど厳しい姿勢をとっている。大統領令ではリースの一時停止命令は既存の契約には効力が及ばないとした一方で、内務長官に対し、リース契約の終了や修正に関する経済的、環境的な必要性の包括的な見直しや、風力発電プロジェクトにおける連邦政府のリースと認可業務の見直しを指示していた。
 ダグ・バーガム内務長官は今回の措置について、エンパイア・ウインドのプロジェクト承認に関して深刻な問題を提起する情報を入手し、連邦政府のリースと認可業務の見直しの一環として一時停止を指示したとしている。
 これを受け、同プロジェクトの開発が行われるニューヨーク州のキャシー・ホウクル州知事は声明を出し、「連邦政府の完全な許可を得たこのプロジェクトは、大統領令が出る前にすでに着工済みであり、党を超えてわれわれが取り組むべきエネルギーソリューションの一つだ。知事として、連邦政府のこのような権限の濫用を許さない。私は雇用と適正価格のエネルギー、ニューヨーク経済の未来を守るため、あらゆる手段を講じて戦う」と述べた。
 米国では、バイデン政権下で10件の商業規模の洋上風力プロジェクトが承認されるなど、複数のプロジェクトが進行しており、エンパイア・ウインドの他にもすでに着工済みの案件がある。今回の命令を受け、米国洋上風力のさらなる減速が懸念される。

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