2026年4月28日無料公開記事SEAJAPAN2026

【Sea Japan 2026】
脱炭素化に不透明性とリスク克服を
マースク研究所がセミナー、日本関係者ら議論

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 海運業界の脱炭素化を推進する研究機関マースク・ゼロカーボン・シッピング・センター(Maersk Mc Kinney Moller Center for Zero Carbon Shipping)が22日、都内で海事展「Sea Japan 2026」に合わせてセミナーを開催し、同センターの幹部や日本のメンバー企業らが船舶の脱炭素に関する現状や課題について意見を交わした。規制や燃料の不透明性とリスクが燃料転換の遅れにつながっているとの課題が共有され、これを克服するための方向性など意見が挙げられた。
 センターのボー・シモンセンCEOは基調挨拶で船舶脱炭素化の必要性について改めて強調し、「地政学的な不安定性や安全保障上の課題の裏側で、気候問題は確実に進行している。多くの政治指導者にとって気候問題の優先順位が下がっている状況は残念だが、科学的根拠は強まり、エネルギー転換への投資も続いている」と指摘。また海運セクターは過去15年で輸送量が増加する中でも排出量がほぼ横ばいに抑えられている点を評価し、「海上輸送の炭素強度は約40%低減されており、これは顕著な成果。日本などの技術革新やオペレーション改善が寄与している」とした。
 センターは設立から5年が経つが、その役割について「特定企業のためではなく、業界全体のために科学とデータに基づき最適解を探る独立組織」と説明。同センターには現在、日本を含む各国から約150人が参加しており、技術・ビジネス・規制の3領域で海運脱炭素化に必要な条件を分析しているとした。「日本のパートナーをこの分野のリーディング的存在と位置づけている」と語った。
 続いて、同センターのアレクサンドロス・カラミツォス氏が、新燃料の成熟度や技術動向を分析し、「多くの脱炭素技術は既に成熟段階だが、問題は導入の遅れにある」とし、導入が進まない要因として「性能や投資回収、リスクに関するエビデンスが断片的で不透明であることが障壁」と分析。「センターは関係者の協働を通じて透明性を高め、スケール化を後押しする」と述べた。
 セミナーでは、同センターに所属する日本企業らのパネルディスカッションも行われた。日本の造船・舶用メーカーによるパネルでは、三菱造船の上田伸社長が新燃料船の普及が進まない要因について「最大の問題は技術ではなく不確実性とリスク」「燃料供給や価格、規制などの不確実性に加え、運用面のリスクもあり、顧客にとって利益よりリスクが大きく見えている」と述べた。その上で、「リスクを可視化し共有するとともに、リスクを上回る価値を提供することが必要だ」とした。
 常石造船の関和隆商品企画部長は、統合リスクの重要性に言及し、「船全体として安全を確保するには全関係者の連携が不可欠」と指摘。「プロジェクト初期段階で責任分担やルールを明確化すべきだ」と語った。
 大島造船所の佐藤宏一設計本部部長は、将来燃料の不確実性への対応として「現時点で単一の脱炭素経路を選ぶことは困難」とし、「アンモニアやメタノールなどに対応可能なマルチ燃料船の設計を進めている。新造船だけでなく、レトロフィットも重要な選択肢だ」と述べた。
 ダイハツインフィニアースの早田陽一取締役は、「個別機器ではなく統合して性能・安全・運用を成立させることが課題」とし、「将来の燃料不確実性に備え、燃焼や燃料供給、制御の拡張性を確保することが重要だ」と指摘した。
 海運会社の視点を示すパネルディスカッションでは、日本郵船の首藤健一郎常務執行役員と筒井裕子常務執行役員が登壇。筒井常務は船舶の脱炭素化を促す要因について「脱炭素化は単に技術的な問題ではなく、トランスフォーメーション自体がわれわれの競争力や顧客・社会からの評価につながる問題だ」とし、規制当局や社会、株主など外部からの要請が最も大きな推進力だとした。また、首藤常務はパートナーとの協力の利点について規模やスコープの広さを挙げ、「国際的なパートナーと日本のプレイヤーの協力が成り立っており、確実に良い結果を生み出せると信じている」と語った。

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