2026年4月24日無料公開記事SEAJAPAN2026
【Sea Japan 2026】
造船再生と能力倍増、カギは協業
造船トップが討論、設計・人手・資機材に連携対応
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造船トップ4人が「Sea Japanフォーラム」で議論
23日に開催された「Sea Japan フォーラム2026」で、造船経営者によるパネルディスカッションが開催され、日本造船再生に向けた課題と対策が挙げられた。日本の建造能力倍増の目標実現には、造船所の設備投資だけでなく人手不足や舶用資機材の供給増など解決すべき課題があるとし、造船所単体ではなく業界全体で解決するとの方向性が示された。設計対応力のスピード化、LNG船の建造再開、さらにコスト削減など、日本造船所が抱えるテーマはいずれも、造船所同士での設計リソース共有や仕様標準化、建造連携など、協業によって解決できる道があるとの考えが挙がった。
海事プレス主催のフォーラムでは冒頭で「造船の未来」と題したパネルディスカッションが開かれ、今治造船の檜垣幸人社長、川崎重工業の荻野剛正執行役員、ジャパンマリンユナイテッド(JMU)の廣瀬崇社長、三菱造船の上田伸社長が登壇。国土交通省海事局の河野順次長が司会を務めた。
2035年に日本の建造能力を1800万総トンに倍増させるという目標については、今治造船の檜垣社長は「日本経済に必要な船、日本造船業の得意とする船、日本のオペレーター・船主が日本だけではなく世界の物流に挑戦していることなども考慮すべき」とし「中国・韓国とガチンコで勝負する大型船は、JMUとのグループ化で競争力を高めたい。一方、日本が得意な船型を伸ばすことが建造シェア拡大につながる。ケミカル船のように日本が強い分野もあり、こういう造船所も支援することで日本造船業全体のボトムアップに貢献したい」とした。
JMUの廣瀬社長は「造船にとって、またとないチャンス。どんな商品を造ってどこで戦うかをイメージし、不況にも強靭に耐えられる設備を考えたい」とした。三菱造船の上田社長は「かつて日本は1800万総トンを建造しており、挑戦的ではあるが実現不可能な数字ではない。明らかになる課題を確実にクリアする処方がとれれば到達可能」との見解を示した。
建造量増強の課題の1つは人手不足だ。檜垣氏は「造船所就業者数は9万2000人から7万6000人に減った。設備投資と両輪で、人手確保は必須」とし、「社宅や協力会社の寮なども建設して、人手確保を優先したい」と語った。廣瀬氏は「どう確保するかとともに、いかに辞めないようにしていくかも重要。教育制度も刷新し、若手技術者の成長を促していく」と説明。川崎重工の荻野執行役員は「夏場の作業環境を改善するような対策や、人材を訓練して早期に育成する投資も必要」とした。
また解決策の1つが、ロボティクスと人工知能(AI)などを活用した自動化という点で各社の見解は一致。荻野氏は「当社は社内のロボット部門と研究開発部門と一緒になり、造船現場の使用に耐え得るロボットの開発・実用化を目指す」とし、上田氏も「三菱重工の総合研究所と連携して造船の自動化・省人化に取り組む。造船現場を支える熟練技術者の価値を維持する形で、システム化などに取り組む」とした。
設計リソースも課題。廣瀬氏は「中国の商品開発のスピードに日本は追い付けていない。同志造船所を募り、設計リソースを共有化して速いスピードで出していくのが大事だ」とした。
建造量拡大には舶用機器など周辺産業の拡大も大きなテーマ。この点については、今後増える新燃料船に関する機器類が海外製が中心である点を課題視する声が多かった。上田氏は「機器メーカーの能力向上へ支援が広がることを期待する」とした。建造コスト面についても材料費が課題とし、荻野氏は「資機材メーカーも物価高や人件費高騰で価格を下げられない。中国と比べて日本にスケールメリットで差があるなら、日本が連携してボリュームを出す方法がある」とし、廣瀬氏も「今治造船と仕様共通化などを考えている。仕様は同志連合で標準化してメーカーに手間をかけさせないことも大事」とした。
このほか、日米造船協力については、廣瀬氏が「艦艇の建造・修繕や砕氷船分野でどういう形で貢献できるか考えている」とし、上田氏は「自社のリソースも考慮しながら、図面供与などいろいろな可能性を考えたい」と説明。また、日本でのLNG船建造再開に関しては、荻野氏が「建造再開のための課題解決は1社では困難だが、現在造船数社で鋭意検討している。関係業界や国の理解と協力をいただきながら解決に取り組んでいきたい」とした。