2026年1月15日無料公開記事ニッポン海運の海外拠点 洋上風力発電

《シリーズ》ニッポン海運の海外拠点【台湾】
事業領域拡大、洋上風力で存在感
商船三井、台湾船主と協業深く

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台湾初の新造台湾籍SOV“TSS PIONEER”、さらに2隻の建造も進む

 商船三井グループのMOL台湾は、船舶代理店業と物流、商船三井の台湾関連案件の事業開発支援を3本柱にグループの台湾ビジネスを担っている。台湾有数の船主である大統海運との協業も深く、2020年には両社でSOV(サービス・オペレーション・ベッセル)事業の合弁会社「大三商航運(TSSM社)」を設立し、台湾初の新造台湾籍SOVの運航を進め、さらに新造台湾籍SOV2隻の建造を進めるなど、洋上風力分野で存在感を高める。また、商船三井は台湾洋上風力発電プロジェクトへの出資を通じて発電事業の知見を蓄積するほか、浮体式LNG貯蔵・再ガス化設備(FSRU)と二酸化炭素(CO2)回収・貯留(CCS)など次の成長領域で取り組みを拡大することも狙う。エネルギー転換が進む台湾で、ビジネス展開を加速している。

 MOL台湾は1995年に設立された商船三井60%、台湾船主の大統海運40%出資の合弁会社だ。商船三井グループの台湾ビジネス全般を支える拠点として、船舶代理店業や物流関連事業、本社が手掛ける台湾関連案件事業開発支援などを担ってきた。大統海運グループはバルカー、作業員輸送船(CTV)、バンカーバージなどを保有する台湾有数の船主だ。MOL台湾董事長(会長)で大統海運総経理(社長)の林子傑氏は「(大統海運と)商船三井との関係は70年以上に上り、大阪商船時代から続いている。大統海運は現在保有するケープサイズバルカーを全て商船三井に貸船している」と語る。両社は2020年にはSOV事業の合弁会社TSSM社を設立し、それぞれの知見とネットワークを生かし事業を拡大している。
 MOL台湾の事業の柱は3つ。1つが船舶代理店業で、商船三井運航船の台湾寄港時やTSSM社保有のSOVの船舶代理店業務などを手掛ける。2つ目の物流関連では、サプライチェーン全体をスケジュール管理し、高効率輸送を実現するバイヤーズ・コンソリデーションサービス「MCS」を台湾で提供しており、主に台湾発米国向け海上貨物を取り扱っている。3つ目が商船三井の台湾における事業開発支援で、本社が進める台湾関連の案件を横断的に支援している。具体的には、台湾でのFSRU事業やCCS事業の取り組み支援などを行っている。
 このほか、大統海運が手掛けるバンカーバージ会社に商船三井グループ企業が出資している。現在、バージは4隻体制で、うち3隻は台中港で船舶への燃料供給を担う。残る1隻は高雄を拠点とし、台湾海峡に点在する離島への燃料輸送に従事している。
 商船三井が25年8月末に出資参画したフェンミャオ洋上風力発電所の開発プロジェクトでは、10月から本社社員2人が事業会社に出向しており、建設期間中のプロジェクトマネジメント等に従事し、建設期間中の洋上風力発電所の管理・運営などについて、知見を習得している。加えて、商船三井は台湾で稼働中のフォルモサ1洋上風力発電プロジェクトにも出資している。同案件では、CTVの調達やO&M(運営・保守)体制など事業者側の意思決定などに株主として関与することで知見を蓄積しており、両案件への出資参画を通じ「将来、当社がどのタイミングでどのような船を提供するかを検討する上で、大きな示唆を与えてくれている」(MOL台湾洋上風力商務代表の伊藤史哉氏)
 TSSM社では現在、台湾籍のSOV“TSS PIONEER”を洋上風力事業大手オーステッドの大彰化洋上風力発電所のメンテナンス支援に長期投入しているほか、2隻を建造中だ。建造中の2隻も台湾籍船となることに加え、アジア初のSOV船“TSS PIONEER”で培った経験もあり、TSSM社は台湾SOV市場で高い競争力を備える。「“TSS PIONEER”は台湾洋上風力の黎明期に、用船者であるオーステッドがローカルでSOVを用船する意思決定を行ったことをきっかけに誕生した。入札段階から建造、現在に至るまでオーステッドと二人三脚で作り上げた船であり、同社がSOVに関して有する知見やノウハウを積極的に供与してくれたことに関し、感謝している」(MOL台湾の柯偉傑総経理)。2隻目の“TSS CRUISER”は2026年3月竣工後、カナダのノースランド・パワーや三井物産らが開発する海龍洋上風力発電所のコミッショニング(試運転)作業に投入する。建造中の2隻はいずれも台湾船籍であり、台湾洋上風力への投入を前提に、リスクとリターンを踏まえながらどのような案件に投入していくのか、「バランスを見ながら考えていきたい」(伊藤氏)
 台湾で有望視する市場について、伊藤氏は「台湾籍の洋上風力関連船の需要は引き続き強いものがあり、SOV以外の船種の投入の可能性も含めて深堀していきたい」と語る。また、新規分野としてFSRUとCCSを挙げる。「台湾の伸張する電力需要を賄いつつ、風力などの再エネ電源に加えて移行期の電源としてのLNGの役割も重要視されており、台湾でのFSRU導入に向けて潜在顧客と議論を続けている」(柯総経理)。また、台湾政府は2050年ネットゼロ達成に向け、再生可能エネルギー導入だけでなくCCS/CCUS(CO2回収・利用・貯留)の活用も重要視する。台湾海峡にCO2貯留に適したエリアがあることから、台湾沖でのCO2の海底貯留が期待されており、事業化に向けた機運が醸成されつつある。将来的な有望分野の1つとしてMOL台湾が窓口となって情報収集とネットワーキングを進めている。
 台湾市場の魅力について、柯総経理は「安全で且つオープンマインドで、外国の方にも非常に安心してビジネスができる場所だ」と語る。また、ローカルパートナーの重要性について、伊藤氏は「SOVが最たる例だが、台湾籍船を運航するには台湾人船員の確保や当局対応などソフト面の対応が不可欠で、台湾で長年船主業を営んできた大統海運の地盤とノウハウはわれわれにとって極めて重要であり、大きな強みだ」とした。

左からMOL台湾の柯偉傑総経理、林子傑董事長、伊藤史哉氏

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