2024年3月18日無料公開記事船舶保険各社に聞く 洋上風力発電

《連載》船舶保険各社に聞く③
PIクラブと連携、洋上風力案件の対応強化
東京海上日動火災保険

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 日本の損害保険3社に現状や今後の展開などを聞く連載、東京海上日動火災保険は、海上業務部の石嶋大之船舶業務グループリーダー(写真左)、竹内朋幸課長(写真右)がインタビューに応じた。同社は、社会課題解決につながる洋上風力発電関連船舶の取り組みや新燃料船対応などを積極的に進めていく。質疑応答の概要は以下のとおり。

 — 人員や組織体制、保険料率、加入船腹量、収支状況の近年の推移は。
 「国内7拠点(東京、大阪、神戸、広島、今治、松山、福岡)、海外2拠点(ロンドン、シンガポール)に人員を配置している。昨年4月から広島海上課を中国海上課、九州海上室を九州沖縄海上室にそれぞれ組織としての名称を変更した。全社で地域創生に取り組んでいるが、地域密着しながらその地域の方々と連携しながら成長したいという思いを反映したものだ」
 「保険料率、収支についてはインフレ、環境意識の向上に伴う救助費用の増加、賠償金額の高額化があり、クレーム単価が上がっている。内航船も単価の上昇という点では同じだ。さらに今後は環境対応の新燃料、新技術が採用されることで未知のリスクの出現、修繕費の高額化、修繕期間の長期化が懸念される」
 — 売り上げ、加入船腹量など目標とする数値は。
 「2024年度から2026年度までの3カ年中期経営計画がスタートする。船舶部門では、海事クラスターの『いつも』を支え、『いざ』をお守りすることをパーパスに位置づけ、より一層『お客さま起点』の取り組みを進めていく。その様な取り組みがお客さまからの支持につながり、結果的に売り上げにつながっていくと考えている。売り上げやマーケットシェア自体を目標とすることはない」
 — 最近のトピックス、新サービスは。また、サービスの特徴や強みも併せて。
 「2022年1月にリリースした船舶戦争保険関連のポータルサイト“TripAdmin”について、フェーズ2として、AIS(船舶自動識別装置)を用いて自動的に船舶の位置情報がサイト上に反映される仕組みを構築した。これにより除外水域を航行する際、従来お客さまに手入力頂いていた寄港地や日時等が自動入力されるよう改良され、お客さまの実務の効率化が実現した。加えて当社ではTripAdminのデータをAPI連携で社内システムに自動的に取り込むことで、社内業務の効率化も実現した」
 「社内横断の船舶分野におけるデジタル取組推進プロジェクト“e-GISプロジェクト”に関する取り組みとして、アイデア社の海事産業向け情報プラットフォーム“Aisea PRO”の活用を引き続き進めている。現在はさまざまなシチュエーションを想定した実証実験などをお客さまの協力を得て進めている。Aisea PROについては、今のところ内航船、作業船の運航者が主な顧客だが、内航業界は高齢化、船員不足などの課題があり、アイデア社でそれらの課題解決に向けたサポートを進めている。当社としてもAisea PROをさらに普及させ、運航データ、エンジンデータを入手することで、より正確な引き受けの判断につなげていきたい」
 — 貴社はP&Iクラブのノーススタンダードとの協業も進めている。進捗状況は。
 「スタンダードはオフショア船の引き受けに強いクラブだったが、日本でこれから洋上風力発電が普及していく中、ノウハウを持ったノーススタンダードと協業できているのは強みだ。当社が持っているオフショア関連船を運航管理する会社との関係に加えて、ノーススタンダード社の持つ海外ネットワークを組み合わせサービス提供していく。洋上風力案件では、新たな作業、船種に取り組むことで、さまざまな事故も起きている。事故を防ぐ方策について、クラブと一緒に取り組み、ロスプリベンションを強化していきたい」
 — そのほか、取り組んでいることがあれば。
 「東京海上グループには再生可能エネルギー関連の100%出資会社GCubeがある。世界最大の再生エネルギーに特化した保険会社で、洋上風力発電はそのポートフォリオの大きな割合を占める。グローバルな保険グループとしてノウハウ、専門性をグループ間でシェアしながら最大化して、グループ単位で方針を立てて連携して取り組んでいる。GCube以外にも、グループ内にはTokio Marine Kiln、Tokio Marine HCCという保険会社を擁しており、各社から欧州、北米の元受、再保険マーケットの最新状況を常に入手できる。そこで得た情報やノウハウを最大限活用しお客さまに高いクオリティのサービスを提供できるのも当社の大きな強みだ」

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