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2022年12月14日無料公開記事注目設備探訪 内航NEXT

《シリーズ》注目設備 探訪
内航船居住区の「モデルルーム」
長崎船舶装備、次世代の居住区を提案

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 長崎船舶装備はこのほど、新たな内航船居住区を考案し、長崎市内にある家具工場内にモデルルームを完成させた。499トン型内航船の居室をターゲットとしたもので、限られたスペースの中でも快適性を追求した居住環境を提案する。若手や女性、ベテランなど世代や性別を超えた活用を想定しており、物の配置や照明、収納機能など随所に工夫を散りばめている。モデルルームは「ベーシック仕様」で、船主や造船所らの意見も反映させてブラッシュアップしていく考え。また、今後は外航船や漁船向けにも新たな居住区提案の取り組みを拡大する方針だ。

 同社は2020年度から、新規事業開発に特化した「企画開発部」を軸に、さまざまなアイデアの具現化を進めていた。この一環として、船舶の居住環境の改善によって内航業界の人手不足などの課題解決に貢献しようと、船員の快適性向上を実現する新たな発想の居住区「次世代居住区」の開発に着手。このほど、第一弾として内航船居住区が完成した。モデルルームには、「船長級」「職員級・部員級」「食堂」の3室を設けている。
 現地を訪れてみた。最初に足を踏み入れたのが、船員のお腹と心を満たす食堂だ。まず、なかなか目にすることのない「台形」の食卓が目に入る。開発に携わった宮崎一郎設計部デザイン課長によると、座った際にお互いの目線が気にならず、かつ疎外感を感じることなく食事や会話ができるよう配慮した形状とのことだ。
 食卓にはTVモニターを設置し、TV会議にも対応可能。配線が目立たない納め方にするなど、細かい配慮も施されている。また、入り口左手の配膳区画には、動線を考慮して冷蔵庫や炊飯器、スパイス棚を配置している。
 いよいよ、船員の部屋に入る。まずは職員級・部員級だ。床面積は3畳程度。狭小空間を有効活用するため、デスクの天板は折り畳み式とし、椅子の代わりに、デスクと平行に大型ベンチ型収納庫を設置した。この収納庫を筆頭に多くの収納を備えており、例えばデスク上部には小物トレーやブックラックを備えるほか、ベッド床板の下にはキャリーケースを置ける空間もあり、宮崎課長は「3畳分だが、多くの収納機能を持たせている」と自信をのぞかせる。
 次に、船長級の部屋に入る。床面積は約6畳だが、想像以上の奥行を感じる。特徴的なのが、ひと区画であるにも関わらず感じる「2部屋感」。よく見ると、居室と寝室の空間が、折り畳み椅子を格納できる間仕切り壁で仕切られており、「二部屋あるような感覚を与え、ステータスを高めている」(宮崎課長)。居室には、幅広なL型デスクと、ゆったりとしたひじ掛け回転椅子を備え、上部にブックケース、下部には金庫設置スペースも設ける。寝室には、ワードローブや大型ベンチ型収納庫を設置するなど、高い収納力も確保する。
 船員の居室区画でのもう一つのこだわりが、広々としたベッドスペースだ。3畳の居室では、実に部屋の3分の1ほどを占めている。「絶対に譲れないところがベッドサイズ。寝心地が良いものにしたい」(宮崎課長)とのこだわりで、個人の嗜好に合わせたマットレスを選べるようにしている。
 照明も工夫する。食堂は活発的な印象を与える白色の照明器具を天井に直付け。一方の居住区画は、天井照明をなくし、間接照明とすることで、室内のリラックス感を演出する。さらに職員・部員級と船長級とでも、色みの違いを出しているそうだ。
 新たなモデルルームは意匠登録を申請中。今後、漁船や一般商船などの新たなモデルルームについても開発し、家具工場内に順次、整備していく方針だ。
 宮崎課長によると、特に内航船の居住区の設計は、スペースの制約や規制、予算面との兼ね合いで、どうしても定型的になりがちだったという。そこにいかに切り込み、変化を生み出し、特徴を出していくのか—。長崎船舶装備が知恵を絞って生み出したその答えを、モデルルームで目にすることができた。(岡部ソフィ満有子

【内航船居住区のモデルルーム】
▼所在地=長崎市香焼町3021-9(家具工場内)
▼展示中の部屋=船長級(10㎡)、職員級・部員級(5㎡)、食堂(15㎡)

職員級・部員級の部屋。3畳分に多くの収納機能を持たせている

船長級の部屋。間仕切り壁で「2部屋感」を与えている

船長級の部屋(寝室)。広々としたベッドを配置

台形の食卓が置かれた食堂

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