2024年2月27日無料公開記事洋上風力発電
開発本格化に向け船隊整備進む
洋上風力作業船、建設やO&M需要で
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洋上風力発電の建設作業やO&M(オペレーション&メンテナンス)には多様な船が活躍する。SEP船(洋上風力発電設備設置船)やCTV(クルー・トランスファー・ベッセル)、SOV(サービス・オペレーション・ベッセル)、ケーブル敷設船などが挙げられる。これらの洋上風力作業船は洋上風力産業が先行する欧州で導入が進んでおり、欧州の気象海象に適したかたちに設計されている。そのため、日本でSEP船やCTVなどの作業船を導入するにあたっては、地震やうねりなどの日本の自然条件や施工条件に適した船型の開発・建造が進められている。国内洋上風力の発展に伴い、時宜を得た船隊整備が求められる。
■本格化する作業船需要
洋上風力作業船は洋上風力産業の発展においてボトルネックとなる可能性があり、実際に欧州では作業船不足による工期の遅れが発生した事例もある。国内洋上風力でラウンド1の洋上工事が本格化するのは2027年頃だ。その後はラウンド2以降の洋上風力発電所の建設が続くとともにO&M需要も増加する見込みで、洋上風力産業の発展に合わせて作業船を確保する必要がある。
船員の確保も急務だ。洋上風力作業船の多くに共通するノウハウとして、DPS(ダイナミック・ポジショニング・システム=自動船位保持システム)のオペレーションが挙げられる。洋上で定点保持するためのもので、SEP船やSOV、ケーブル敷設船、AHTS(アンカー・ハンドリング・タグ・サプライ船)などに装備されている。海運大手ではオイル&ガス分野で知見を持つ技術だが、習得者は一部に限られることから、船員への訓練を進めている。
■風車の大型化に比例するSEP船
SEP船は昇降装置やクレーンなどが搭載された自航式または非自航式の台船だ。昇降装置により台座部分を海面上に持ち上げ、基礎構造物の施工やタワー・風車の設置などを行う。基礎構造物の施工には起重機船が用いられる場合もある。日本では大手建設会社によるSEP船の建造が進んでおり、4隻が竣工している。
国内最大級のSEP船は清水建設の“Blue Wind”で、クレーンの最大揚重能力は2500トン、14〜15MW級の大型風車の建設にも対応できる。また、昨年10月には戸田建設ら6社の建設会社が中古の非自航式SEP船の買船を発表し、15MW級超の大型風車に対応するための改造を現在行っている。SEP船は風車の大型化に対応してクレーン能力の向上が求められる。隻数はもちろん、風車の大型化の動向を見極めた船隊整備が要求される。
■保守支援船のCTV、SOV
CTVは工事現場まで10〜20人程度の作業員を輸送する船舶だ。設置作業からO&M、撤去作業と洋上風力発電事業のあらゆる段階で用いられる比較的小型の船で、相当数が必要となることが見込まれる。双胴船が主流だが、日本では単胴船の開発も進む。国土交通省は国内で必要となるCTVの隻数について、2030年に約50隻、40年に約200隻と想定する。国交省ではCTVの国産化に向け安全設計ガイドラインの策定に取り組むなどCTVの国内建造を後押ししている。
SOVはO&Mで用いられるメンテナンス支援船で、作業員が一定期間、沖合に滞在し保守作業に従事するための母船の役割を担う。宿泊施設を備え、収容可能人数は50人から100人超。設備は船により異なるが、作業員が風車にわたるためのギャングウエーや、ヘリコプターデッキ、クレーンなどを搭載する。
作業員輸送という点ではCTVとSOVは同じ役割を担うが、一般には離岸距離やプロジェクト規模によって採用が分かれる。SOVはより沖合の大型洋上風力発電所での活躍が見込まれる。
■浮体式でさらなる需要も
発電した電力を陸地に送る電力ケーブルを敷設するケーブル敷設船も必要となる。離岸距離が短い場合は台船が用いられる場合もあるが、より沖合の大規模洋上風力や浮体式などでは自航式のケーブル敷設船の需要が見込まれる。また、浮体式洋上風力においては浮体の曳航や係留などを行う船種として、AHTSの需要も今後見込まれる。