2025年2月25日無料公開記事洋上風力発電

洋上風力作業船の課題など討論
国際風力発電展、日本郵船・商船三井が登壇

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 東京ビッグサイトで開催された「WIND EXPO【春】~第15回 [国際] 風力発電展~」では邦船各社が各種作業船や洋上風力人材育成施設など洋上風力に関する自社の取り組みをPRした。21日には「日本洋上風力市場成長の鍵 ~作業船の役割と展望~」をテーマとするパネルディスカッションが行われ、日本郵船の横山勉執行役員や商船三井の杉山正幸執行役員らが登壇。洋上風力作業船をめぐる課題などを討論した。
 日本郵船の横山執行役員はケーブル敷設船について、洋上風力ケーブル、直流ケーブル、通信ケーブルによって船尾や船体の大きさが異なることを解説し、洋上風力ケーブル向けでは船体120~150m程度の小回りが利くコンパクトなサイズが好まれると説明した。国内のケーブル敷設船の整備状況について問われると、「全く足りないと思う。政府目標達成に向けては洋上風力向けに特化した自航式の船を整備することが不可欠だ」と答えた。
 商船三井の杉山執行役員はSOV(サービス・オペレーション・ベッセル)について同社の取り組みとともに特徴を紹介した。また、作業船の運航に不可欠な船員の状況について、内航船員の年齢構成や定着率のデータを交えて解説し、「洋上風力産業をサポートするための船をほぼゼロから作り上げていかなければならないことに加え、人も確保しないと船が動かない」として、作業船の船員確保をめぐる課題を共有した。
 最後に、昨今の船台不足などを踏まえ、5年後の新たな動きに向けて洋上風力作業船が必要となった場合、発注の決断はいつ下すべきかについてパネリストらがそれぞれ見解を述べた。横山執行役員は「船種によって異なるが、今、時すでに遅しということはないだろう。ただし発注に向けスペックの検討などさまざまな下準備が必要で、可及的速やかに取り組まなければならないと考えている」と答えた。杉山執行役員は「発注や最終投資決定(FID)という観点では3年半前でも問題ないと思うが、そこに至るために発注側も造船所側も相当なリソースをかけて準備する必要がある。そのためには本気度を示さなければ誰もついてこない。本気度を上げるには今すぐにでも始めないといけない」と述べた。
 同パネルディスカッションは浮体式洋上風力技術研究組合の猪狩元嗣国際連携部長がモデレーターを務めた。パネリストにはこのほか、インテグレイティド・ウィンド・ソリューションのクリスチャン・レイヴンMD(マネージングディレクター)とDOFのバリー・スチールVP(ヴァイス・プレジデント)が登壇した。
 今回の展示会では浮体式洋上風力や洋上風力人材など、洋上風力の各トピックに焦点を当てた催しが行われた。また、愛媛県や北海道、福岡県など風力発電に注力する各都道府県のブースや、台湾やスコットランドの海外パビリオンの出展が目立った。19日と20日に行われた特別企画「洋上風力人材育成フォーラム」では、北拓と商船三井の「北九州トレーニングセンター」や、日本郵船と日本海洋事業の「風と海の学校 あきた」などが紹介された。北拓の吉田響生専務執行役員は同フォーラムで北九州トレーニングセンターのカリキュラムについて、「当社が風車メンテナンス企業として安全に作業するために自社でオリジナルで作り上げたものだ」と説明。同施設で提供する洋上風車のメンテナンスの特有のリスクを踏まえた実践的な訓練と、福島支店で提供するGWO訓練とあわせて、安全な作業をできる人材の輩出をしていきたい考え。また、日本海洋事業の運航事業部訓練運営部の高尾淳部長は風と海の学校 あきたについて、「高校の中で訓練をおこなっているのはわれわれだけ。訓練室をガラス張りにすることで、高校生がプロの訓練を見ることができるようにし、生徒に洋上風力や海上の仕事に興味をもっていただけたら嬉しい」と語った。また、同訓練施設では中学生や高校生向けのイベントなどにも取り組んでいることを紹介した。

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