2026年5月29日無料公開記事

船隊規模40隻目指して用船整備
乾汽船・乾康之社長に聞く

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今月定期ドック入りした2001年建造ハンディサイズ“KEN GOH”

 ハンディバルカー船社乾汽船の乾康之社長は本紙インタビューで、自社船・長期用船併せて約30隻の基幹船隊を40隻規模に拡大したいとの意向を示した。乾社長は「2030年ごろからハンディサイズ市況は底堅く強い推移を見込んでいる。自社船による船隊増強は、陳腐化リスクを気にせざるを得ないうえに、急騰した船価に運賃が追い付いていない。現状を踏まえると、当社の事業環境においては、用船による船隊整備に合理性がある。加えて、環境対応の陳腐化リスクに尻込みをせざるを得ない中、保有リスクを取れる船主を起用した船隊の整備を進めたい」と語った。また今年3月新たに公表した中期経営計画「あしたも元気」では、不動産事業でプラザ勝どきのリノベーション戦略を打ち出した。新たな再開発計画では、観光ではなく、これからの“経済都市TOKYO”を意識した、“ビジネスパーソンにとって安全で快適な空間”の実現を目指していく方針だ。

■プラザ勝どきはリノベーションで再開発

 ― 2025年度を振り返ってどう見ているか。
 「外航海運事業における今年1~3月期の収益が想定よりも良かった。それまでは同事業で赤字を想定していたが、ハンディサイズ・バルカー市況が好調に推移した結果、黒字に転換した。一方で、不動産事業では再開発計画の変更に伴って、それまでにかかっていた建設仮勘定計上の設計費など4億円強を特別損失として計上したため、一定程度業績を押し下げた」
 ― 不動産事業では今年、プラザ勝どきの再開発計画変更を決めた。
 「今年3月に2026~28年度の3カ年を対象とする中期経営計画『あしたも元気』を発表した。当社はこの中でプラザ勝どきの再開発計画を、建て替えからリノベーションに変更している。建て替えの計画を中断すると決めてから今回のリノベーション方針を発表するまで1年の期間を要したが、われわれはこの間、再開発で実現しようとしていた当初のコンセプトがリノベーションでも可能なのかを検証してきた。隅田川対岸の築地市場跡地の再開発に呼応した街づくりとして始まった計画として、リノベーションでも当初のコンセプトを継承できるとの結論に至った」
 「新たな計画では国際経済都市TOKYOにふさわしい、ホテル・住宅として整備する考えだ。コンセプトはDay to Years with BIZ。ビジネスパーソンにとって使いやすく、安全で快適な「住み心地」の提供を目指していく」
 ― 倉庫・運送事業の現状と見通しは。
 「昨年度までの前中期経営計画では、主要顧客の構造的縮小、ペーパーレス化による文書保管業の縮小、さらに転勤の減少による引っ越し縮小という、セグメントを支える3つの事業領域で悲観的な見通しを前提としていた。しかし短期的には、縮小速度の緩和と値上げを可能とする環境の変化があり、小康状態を維持できる見通しとなった。この間に、新たな事業を立ち上げ、展開していく必要があると認識している」
 「現在進めている取り組みが『Non Profit Platform Logistics(NPPL)』と『フライングモジュール』だ。NPPLでは非営利法人(NPO)と協業して物流プラットフォームを運用することで、新しい物流のかたちを構想している。またフライングモジュールはパレットやカゴ車などのモジュールを活用した物流効率化を進めるものだ。特にNPPLは、十余年にわたりNPO法人と連携し、限りある物流資源を有効に活用するための新たな物流モデルだ。プラットフォーム戦略の優位性を共同体に還元する仕組みで、実業者同士が合理的に実業の利益を追求しながらも、物流顧客にも経済メリットと持続可能性を提供していきたい」

■2030年ごろから船の退役増加を見込む

 ― 外航海運事業の見通しは。
 「供給面ではブーム期に大量に竣工したハンディサイズが2030年ごろから本格的に退役していくことから、ハンディサイズ市況は底堅く強い推移を見込んでいる。この基礎的な背景を前提に、直近の市況を例えるなら、「見通しの悪さが薄れはじめ、ブレーキペダルから足を離し、アクセルの上に足を置いた。しかし、まだ踏み込む時期ではない」という状態だろう。不安定な中東情勢が続く中で、経済とは違う要因の心理的影響は大きく、多くの荷主が様子見の姿勢にある。今後、不透明感の解消と共にアクセルを踏み込む方向に進むと期待している」
 ― 既存船の高齢化が進んでいる。
 「ハンディサイズの平均寿命が延びている。われわれの調査で3年前27.7年程度だった寿命が、現在は30年程度まで伸びている。これまでは船台不足・船価高による限定的な新造船供給によって市況が底堅い一方で、既存船の長寿命化が需給緩和の要因となり運賃上昇局面でも上値の重い状況をつくった。しかし船舶の長寿命化には限界がある。2030年ごろから船の退役が増加すれば、船舶の需給はひっ迫へと向かい運賃上昇圧力が強まるだろう」
 「船舶検査・格付け会社ライトシップによる検査基準の厳格化は、船齢15年以下の船が不足してきていることに対応したもので、『船齢が15年を超えても安心して使えることを保証する制度』という一面を強く認識している。仮にライトシップによる対応がなければ、船齢15年以下の一定の品質水準を満たす船の供給不足がより進んでいただろう」
 ― 船隊整備に対する考え方は。
 「現在の基幹船隊は自社船・長期用船併せて約30隻だが、まず40隻の規模を目指したい。ただ新造船価は数年前に比べ、急騰したというより、次元の異なる一段上にあがった。運賃や用船料がこれに追い付いていない以上、現時点では自社船の発注よりも用船による船隊整備に合理性がある。そのため短期的には自社船への投資余力は残しつつ、用船を中心に基幹船隊の整備を進めたい。また、中長期的に次世代燃料船の方向性が定まっていない今、自社船の発注は陳腐化リスクを気にせざるを得ない」

■船齢25年船が定期ドック入り

 ― 自社船長寿命化の取り組みは継続しているのか。
 「この5月、自社船で最高齢の船齢25年を迎える2001年建造の3万1900重量トン型ハンディサイズ・バルカー“KEN GOH”を定期ドックに入れた。自社船の長寿命化プロジェクト“ご長寿お達者”の一環だ。船齢30年程度まで使用する挑戦も視野に、中国で3週間ほどかけて整備している。船齢20年を超えた船は敬遠されがちだが、ありがたいことに整備後の投入先も直ぐに決まった。荷主も当社の考えをよく理解してくれており、賛同の上、試みとして使ってくれる。今後の船腹供給の見通しを踏まえ、荷主側の意識も変化してきていると感じている」
 「この投入先を決められたのは、外地に数週間~1カ月単位で中長期の出張を行い、通常業務と並行して現地での営業活動を行う“ダブルウィング”の取り組みの成果でもある。荷主と直接会って話す中で、理解を得られた」
 ― 船舶管理の方針は。
 「現在自社所有船22隻のうち7隻の船舶管理は自社で行っている。しかしこのためにそれなりの人員を充てている。本来であれば管理隻数を増やすことでスケールメリットを出したいが、そのためには船員ソースの開拓もしていく必要が出てくる。一方で世界には数百隻規模で船舶管理を行っている大手船舶管理会社がいくつもあり、ノウハウや効率の面で優位性を探すのが難しい」
 「また人材不足を背景に、今後、日本人海技者による船舶管理を行うことがますます難しい状況になる。そうした事業環境の変化に対応するためにも、船舶管理の外部化の検討を進めている。持続可能な船舶管理を行うための総合的なマネジメント体制を構想していく」
(聞き手:中村直樹、藤原裕士)
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