2025年9月18日無料公開記事天草内航船主
内航NEXT
《連載》天草内航船主④
「上天草ら3市を内航の街に」
熊本地区内航協組・増田好信理事長
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全日本内航船主海運組合傘下の熊本地区内航海運協同組合(宇城市)の組合員は船腹量を増強している。全国海運組合連合会傘下の熊本県海運組合(上天草市)と連携して国土交通省海事局への陳情を行うなど、事業環境改善にも注力。増田好信理事長は「上天草市を中心に宇城、天草の各市が連携して内航海運の街として打ち出せば全国から人材が集まるのではないか」と期待を寄せる。増田理事長に組合の現況や天草船主の課題などについて聞いた。
― 組合の現況について。
「熊本県内の内航船主34社が加盟している。加盟船主の保有隻数をみると、貨物船32隻、タンカーは油とケミカルを合わせて13隻、バージが1隻の計46隻となっている。船型は499総トン型貨物船を中心に、749総トンや3000総トンなど大型船もある。リプレースとともに大型化が進み、船腹量が増えている。また、ここ数年で複数隻所有する船主が増加しており、意欲的に船員を雇用している。事業継承が進んでいるのも特徴だ。子や親戚など、家族ぐるみで乗船し、家業として内航海運業を営んでいる」
― 組合の活動内容は。
「現場の声を届ける役割を担っている。熊本県海運組合とともに国交省へ陳情を行っている。国会議員同行の下、海事局に出向いて法律と実情の乖離を指摘し、よりよい方向に変えてもらうようお願いしている。今年は5月に海事局を訪問し、危険物等取扱責任者資格の認定について要望した。具体的には、この資格は船種別になっているものの訓練は同じ内容のため、共通の資格として認めてほしいこと、小型船の場合は甲板と機関に分けず認定してもらいたいことを伝えた。そのほか、仮バースやSTCW条約基本訓練などについても意見を伝えた。また、2020年に施行された船員の働き方改革の際もヒアリングいただいた」
「上天草市海運業次世代人材育成推進協議会にも参画しており、小中学校を中心に出前講座を実施したり、海事産業見学会を開くなどしている。直近では地元のみすみ港まつりで貨物船の船内見学会を催した。ブースも設置して缶バッジなどのグッズを配布し、普及活動に努めた」
― 船員確保について。
「主に陸上からの転職者を船員として養成する九州海技学院が付近にあり、雇用面で助かっている。肌感覚では卒業生の5割程度は天草船主が雇用しているのではないか。九州海技学院は廃止案が出たのだが、われわれ地元の両組合が要望して運営の継続が決まった。他地域では人手不足による減船や廃業が増えており、減った分を天草船主が増隻して補っている。15年という船舶の償却期間を考えると、高齢船員ばかりの会社では船を造る勇気は湧かない。船を増やせるのは人材を確保できるから。6級から育てるのは時間はかかるが、戦力になる」
「九州海技学院の入学者の半数は就職先が決まっている。残る半数の求職者を地元で雇用しようと努めている。船員の労働環境は改善しており、働きやすくなっている。まとまった休みが取れるといった魅力を打ち出して船員の成り手を増やしたい」
― 天草船主の課題と展望は。
「船員の高齢化とノウハウの継承が課題だ。人材を育成して船長・機関長になる船員を育てなければならない。船主が育成に前向きに取り組むことが必要だ。民間6級から雇用はできているので、自社に合った人材を自力で育てることが重要。船員経験者を中途採用すると仕事の好き嫌いがあったりと、自社の文化に合わないケースもある」
「次の世代が育つような環境づくりも求められる。船はチームワークが欠かせない。これは船員同士のみならず船主の連携にも言えることだ。親世代では他社との協力が少なかったが、今は天草船主の絆ができている。次の世代でも連携していくためには、内航海運業を魅力ある産業にしていく必要がある。これを実現するために、上天草市を中心に宇城、天草の各市が連帯感を持って内航海運の街として打ち出すのはどうか。上天草市では新たに海技免状を取得する人向けの助成などを実施しており、宇城や天草でも同様の施策を行えば、船員を目指して全国から人が集まるといった効果が期待できる」