2026年3月19日無料公開記事
航海システムの統合化推進
日本無線、三輪マリンシステム事業部長に聞く
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日本無線は、航海機器の統合プラットフォーム「Ocean Explorer 3(OE3)」の開発を進めるとともに、船陸間のデータ連携を活用したサービス基盤の構築に取り組んでいる。航海機器の統合化やデータ活用の高度化を通じ、次世代の航海システムの実現を目指す。今年1月にマリンシステム事業部長に就任した三輪礼嗣執行役員に、事業運営の方針や今後の技術開発の方向性などを聞いた。
― 事業部長就任後の取り組みについて。
「これまで副事業部長として営業サービスや海外事業を中心に担当してきたが、事業部長として事業全体を俯瞰する立場になった。まずは事業の現状や課題を整理し、アクションプランに落とし込む作業を進めてきた」
― オランダの子会社アルファトロン・マリンで社長も務めた。欧州勤務の経験をどう生かすか。
「オランダでは合意形成に時間をかけるが、一度決まったことは確実に実行する文化がある。日本でも方針や行動計画を明確にし、組織全体で共有することが重要だと考えている。現在は事業部のアクションプランを整理し、社内で共有する取り組みを進めている」
― 造船業への関心が高まっているタイミングでの就任をどう受け止めているか。
「海運・造船市場には温室効果ガス(GHG)規制などを背景に強い追い風があると感じている。ただ、追い風を受け止める帆の張り方が重要で、帆が大きすぎると船はひっくり返るし、小さすぎると前に進まない。生産体制や技術力といった足元の基盤をしっかり整えながら、着実に需要を取り込んでいきたい」
― 事業運営で重視する点は。
「製造業としての基本である品質・コスト・納期(QCD)の徹底だ。需要が増える中でも品質と納期を確実に守ることが重要になる。また電子部品のライフサイクルが短くなっており、ICや電子部品の世代更新への対応が増えている。サプライヤーからの情報収集を強化し、部品変更への対応を早めることで影響を最小限に抑えていきたい」
― 注力したい分野は。
「1つは新プラットフォーム『Ocean Explorer 3(OE3)』だ。レーダー、ECDISなど複数の航海機器を統合するプラットフォームで、第三世代にあたる。APIを通じて他社機器やアプリケーションとも連携できる設計としており、拡張性の高い航海システムを目指している。日本とオランダの開発チームが共同で開発しており、今後本格的な展開を進めていく。OE3は4月の『Sea Japan 2026』でも展示する予定だ」
「船陸間のデータ連携を活用したサービスの強化にも取り組んでいる。船舶、船会社、管理会社、サービス代理店、当社拠点などをデータでつなぎ、船陸間での情報共有を進めることで、運航やサービスの高度化につなげていきたい」
― 中長期での技術テーマは。
「自動運航の分野は重要なテーマだが、当社としては自動運航そのものを手がけるというより、その基盤となるセンシングやモーションコントロールの技術を強化していく考えだ。例えば、昨年発表したアンチパラメトリックローリングシステムは、船体運動を検知して横揺れの発生を抑える支援システムだが、こうした技術は自動運航の基盤にもつながる」
「当社が参画する日本財団の無人運航船プロジェクト『MEGURI2040』では、実証船の商用運航も始まり、自動運航の実用化に向けた動きが本格化している。当社としても、センシング技術や船体運動モデルの高度化などを通じてこうした取り組みに貢献していきたい。どのタイミングで舵を切るかといった操船判断のモデル化など、今後さらに研究を進めていく」
― 最後に。
「社内では『MIRAI』という考え方を掲げた取り組みを進めている。マリタイムオーナーシップ(Maritime ownership)、イノベーション(Innovation)、信頼性(Reliability)、自律運航(Autonomous)、インテグレーション(Integration)の頭文字を取ったものだ。このうちマリタイムオーナーシップとは、海事産業に関わる一員として、海運会社や造船所など顧客の価値観や現場を理解し、業界の一員として責任ある姿勢で事業に向き合う考え方を示している。いまこそ、新しい技術開発だけでなく、顧客に信頼される製品やサービスを提供し続けることが重要だと考えている。海運業界は変化が大きいが、現場のニーズをしっかり捉えながら価値あるソリューションを提供していきたい」
(聞き手:岡部ソフィ満有子)