2023年7月21日無料公開記事内航NEXT 今治内航船主若手経営者座談会

<内航NEXT>
船員育成、コスト・定着率など課題
《連載》今治内航船主若手経営者座談会②

  • X
  • facebook
  • LINE

座談会出席者(社名五十音順、カッコ内は所属地区)
浅川汽船・宮政彰社長(今治)、朝日海運・三宅恭介取締役(波方)、東汽船・越智崇社長(今治)、井村汽船・井村省吾専務取締役(今治)えびす商会・野間裕人代表取締役(伯方)、木村汽船・木村利幸専務取締役(波方)、金力汽船・多田憲司社長(伯方)、錦城海運・田窪昭彦代表取締役(今治)、幸洋汽船・藤澤賢宏取締役(今治)、大東汽船・馬越康友取締役(伯方)、進宏海運・大木祐輔専務取締役(波方)、東豊汽船・武内源太郎代表取締役(波方)、明運汽船・赤瀬慎取締役(伯方)

<司会:日刊海事プレス副編集長 深澤義仁>



 — 内航海運業界の最大の課題と言われる船員の確保育成について、皆さんの課題意識と対応策を伺いたい。

 「当社では、船員の賃金を上げたり、船員を多めに抱えたりしている。コストをなるべくセーブしてしんどくてもやっていくか、コストをかけて船員を増やして船隊を整備するか、船主によっていろいろな考え方があると思う」

 「やはり用船料の改善という問題が根底にある。必要な用船料をしっかり頂くことができれば、船員問題についても策を練れると思う」

 「船員の働き方改革への対応で、荷主によっては船員育成の補助金を出したり、運賃をアップして頂けるなど、船員不足問題に対して寄り添う動きが出てきている。ただ、それでもまだ足りないというのが実情だ」

 「タンカー船主は、大型船が多いということもあって20年ほど前から未経験者の自社養成などをずっと続けている。未経験者を一から育てるのはコストがかかるが、貨物船でも自社で養成する船主が少しずつ出てきた」

 「当社ではこれまで船員の育成を積極的には行っていなかったが、近年その必要性に迫られ、断続的ではあるが、縁故による育成のほか、海洋共育センター(広島県尾道市)の卒業生を数名雇用して育成を実践してきた。当社への定着については、3年以上勤まった人も複数名いるが、さらなる定着率の向上が今後の課題だ」

 「女性船員の採用も5年ほど前から出てきた。今治は他の地域と比べて遅れていると思うが、本日お集りの中では幸洋汽船と明運汽船が女性船員を採用されている」

 — 女性船員を採用された方は、船内を改装するなど、何か特別な対応を行っているか。

 「新造船が竣工したタイミングで船員を3人採用し、そのうちの一人が女性だった。採用が決まってから499型にシャワー室や専用のトイレをつけ、一部屋だけ女性専用にした」

 「当社は船の設備を特に変えたりはしておらず、説明したうえで入浴の時間を分けるなど対応は船毎に任せている。当然力仕事など得意不得意はあるが、女性だからといって特別視はしていない。当社の女性船員は現在3人だが、これからも採用を続けたい。結婚・出産を経ても仕事を続ける人が多い。国土交通省の取り決めで女性船員が妊娠したら下船してもらうことになっているが、退職する人は今のところいない」

 「当社の女性船員で今のところ結婚・出産した方はいないが、結婚後も仕事を続けてもらえるように会社としてサポートしていく」

 「自分は船主だが船に乗っていて、女性を含む20代の船員たちは朝からわいわいがやがやと活気があり、船内環境は比較的いいと思う。女性船員は男性と比べると体力はないが気が利くし、結婚した後も産休をとりながら働きたいと言ってくれている」

 「女性船員がいると男性側が気を使ってストレスが増すという話も聞く。ただ、女性がいると船内は綺麗になるし、船内の雰囲気も明るくなると思う」

(続く)

関連記事

  • カーゴ