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2024年10月1日無料公開記事洋上風力発電

【特集】浮体式洋上風力、国内で機運高まる
官民・業界横断で取り組み進む

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着床式は第3ラウンドの公募が締め切られる(写真=Adobe Stock)

国内洋上風力産業は着床式洋上風力発電所の商業運転が複数立ち上がり、一般海域での洋上風力公募も第3ラウンドが行われ、着床式が拡大期に移行しつつある中、浮体式洋上風力の機運も高まっている。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)では今年度、浮体式洋上風力の実証事業や技術開発に関する研究テーマを採択した。また、浮体式洋上風力の技術開発を目指す業界団体「浮体式洋上風力技術研究組合(FLOWRA)」も始動した。浮体式洋上風力の社会実装に向け、官民や業界を横断した取り組みが進む。


■NEDO、浮体式の技術開発を支援


新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は今年6月、グリーンイノベーション(GI)基金事業「洋上風力発電の低コスト化」プロジェクトでフェーズ2の浮体式洋上風力実証事業の事業者を決定した。

同プロジェクトではフェーズ1として次世代風車技術開発や浮体式基礎製造・設置低コスト化技術開発技術開発、洋上風力関連電気システム技術開発、洋上風力運転保守高度化事業といった要素技術開発が行われてきた。フェーズ2となる実証事業では、2030年までに一定状況下で浮体式洋上風力を国際競争力のあるコスト水準で商用化する技術を確立することを目的に、フェーズ1の成果も取り入れつつ、日本の産業競争力強化に資するよう、グローバル市場を見据え、コスト目標・タクトタイムなどを設定した大型風車を用いた実海域における実証を実施する。

フェーズ2では2件が採択され、いずれもセミサブ型浮体で15MW超の風車を採用する計画だ。事業者名などは表のとおり。支援規模は約850億円で、事業期間は2024年度から30年度。
また、NEDOは、「浮体式洋上風力発電の導入促進に資する次世代技術の開発」の公募を行い、9月に計5件を採択した。同事業は浮体式洋上風力の国際競争力のあるコストでの商用化に向けた中長期的な技術開発を進めるため、日本の周辺海域の気象・海象条件、水深、社会受容性などの観点を踏まえた技術課題などを抽出・整理・検証することを目的としたもの。フルコンクリート製浮体や垂直軸型風車など、低コスト化に資する革新的な浮体式洋上風力の技術開発テーマが選ばれた。

実施予定先について、アルバトロス・テクノロジーは川崎汽船、住友重機械マリンエンジニアリング、電源開発(Jパワー)、東京電力ホールディングスとともに「大型浮体式垂直軸型風車の実現性検証」を提案し、採択された。大林組は「TLP(テンション・レグ・プラットフォーム)型ハイブリッド浮体式洋上風車支持構造物の開発」に取り組む。東京電力ホールディングスは北海道電力、大成建設とともに「フルコンクリート製コンパクトセミサブ型浮体および大水深係留の技術開発」を行う。また、熊谷組は「ダブルドーナツ・スパー型浮体式風力発電システムの研究開発」を佐賀大学、横浜国立大学、長大とともに共同提案し、採択された。戸田建設は「コストミニマムを実現する風車一括搭載技術の開発」を行う。

NEDOの次世代技術に採択された5件の浮体構想(左から垂直軸型風車、TLP型ハイブリッド浮体、フルコンクリート製コンパクトセミサブ型浮体、ダブルドーナツ・スパー型浮体、風車一括搭載技術)

また、フェーズ1の追加事業として、「浮体式洋上風力における共通基盤開発」の公募も近々に開始する予定だ。浮体式洋上風力においては、多様な形状、風車・浮体間の連成解析などによるコスト増が課題となっている。大量生産や低コスト化に向けては、風車メーカーや浮体メーカー、エンジニアリング事業者らが連携し、各構成要素を1つのシステムとして統合し、全体最適を図ることが重要となる。また、有志国と連携し規格の策定・標準化を進めていくことでグローバル市場のさらなる拡大を図ることが求められる。これらを背景に、同事業では国内企業を中心とした協調体制を構築し、大型風車と浮体の一体システムを対象に最適な設計手法の開発、グローバル市場も意識した国際標準などの実現に向けた研究開発を実施する。事業期間は2024年度〜30年度を予定している。

同事業においては、国際基準などを見据えた研究テーマとして、「浮体システムの最適な設計基準・規格化等開発」「浮体システムの大量/高速生産等技術開発」「大水深における係留・アンカー施工等技術開発」「大水深に対応する送電技術の開発」「遠洋における風況観測手法等の開発」を想定している。


■浮体式洋上風力海上施工の課題解決へ


浮体式洋上風力を巡っては海上施工に関する諸課題の解決に向けた官民での連携も進む。国土交通省は「浮体式洋上風力発電の海上施工等に関する官民フォーラム」を設置。8月までに計3回開催し、今後の取組方針を示した。取組方針では海上施工の実施の観点から今後特に議論を加速させるべき課題について、「施工シナリオの検討」「港湾インフラ・関係船舶確保等のあり方に関する検討」「設計・施工・維持管理に係るガイドライン等の整理」「各種調査・研究の推進」「関係機関、組織との連携が不可欠な課題への対応」の5項目に整理し、取組を深化させていくこととした。各課題については官民ワーキンググループや検討会を別途設置し、議論を加速していく方針だ。


 浮体式洋上風力への挑戦 


  洋上風力、日本での普及に前進 

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