2024年2月27日無料公開記事洋上風力発電
国内外の支援船運航経験を生かす
ケイライン・ウインド・サービス
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“かいこう”
川崎汽船グループの洋上風力発電事業のプラットフォームであるケイライン・ウインド・サービス(KWS)は国内外のオフショア支援船事業を通じた海洋作業のノウハウを洋上風力発電プロジェクトに生かす。
2021年6月に川崎汽船と川崎近海汽船が折半出資で設立したKWS。川崎汽船グループの洋上風力発電関連事業はKWSが中核となり担当する。KWSは事業開発や営業、技術部門で構成し、人員は発足当初の8人から15人に倍増した。
川崎汽船グループの洋上風力発電分野における強みの1つは、オフショア支援船の運航実績だ。川崎近海汽船子会社のオフショア・オペレーションなどを通じてオイル&ガス分野などの海洋作業で豊富な経験を持つ。
グループをあげて洋上風力関連分野に取り組む中、KWSは五洋建設のSEP船“CP-8001”の曳船として“かいこう”を投入している。昨年完成した“CP-16001”の曳航なども担うほか、2027年に五洋建設が投入予定する自航式SEP船“Sea Challenger”の運用に伴う支援を行う。
大型アンカーハンドラーの運航経験を浮体式洋上風力発電にも生かし、KWSはジャパンマリンユナイテッド、日本シップヤード、東亜建設工業と連携し新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のグリーンイノベーション基金(GI基金)事業として浮体式洋上風力発電の量産化・低コスト化に向けた研究を進めている。風車・浮体を沖合に設置する際には、アンカーや係留索の積み込み・運搬・敷設、浮体の曳航などの現場作業が必要になる。そこに大型のアンカーハンドラーを投入することで、作業の効率化、工期の短縮につなげる。現在GI基金事業は要素技術開発を行うフェーズ1。実証段階に入るフェーズ2への参画も目指す。
KWSは支援船によるサービス提供のため、国内外企業との連携も進めている。シンガポール船社のマルコポーロ・マリンとの提携がその1つ。オフショア支援船、洋上風力発電向け作業船船隊を有し、気象・海象が日本に近い台湾で実績がある同社と日本での事業の共同開発を進めている。
洋上風力の調査段階から建設、保守・運用までの段階で用いられる船舶を中心にサービスを構築するKWS。「顧客に対して長期に良質のシッピングサービスを提供したい」とKWSの蔵本輝紀社長は語る。アンカーハンドラーのほか、造船所とともに日本の海に適した船型を作り上げた浮体式洋上風力発電設備向け多機能船やCTVをはじめ幅広い船舶需要に対応するため、新造や買船による船隊整備も選択肢となる。
船とともに日本人船員の確保も不可欠。このため、“かいこう”を保有・船舶管理する菅原汽船グループをはじめ、国内の船主・船舶管理会社との協力関係を構築している。「菅原汽船グループは、高品質の船を必要とするわれわれのニーズを理解し取り組んでくれる信頼できるパートナーだ」(蔵本社長)。
KWSは外航船に求められるISMの仕組みを用いて、オフショア支援船の船主・船舶管理会社を評価するための独自の品質マネジメントシステムを構築し、日本海事協会からISO9001:2015認証を取得した。海外の風車メーカーや発電事業者が日本の洋上風力に携わる中、船舶管理についても国際基準が求められるようになると見て、「その土台として品質管理システムを導入し、顧客に安心していただけるサービスを提供していく」(小林大輔営業部長、小寺隆事業部長)との考えだ。