2024年2月27日無料公開記事洋上風力発電

《特集》
政府目標達成に向け着実に進む
国内洋上風力、浮体式実証やEEZ拡大へ

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一般海域の洋上風力公募はラウンド3へ(写真=Adobe Stock)

国内洋上風力発電では第2弾となる一般海域の洋上風力発電事業者公募(通称、ラウンド2)の結果が一部を除き公表され、ラウンド3の公募も開始された。洋上風力産業ビジョン(第1次)では2030年までに10GW(ギガワット、1GW=1000MW)の案件を形成する目標を掲げており、その達成に向け年間1GW程度のペースで着実に案件を積み上げている。また、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の浮体式洋上風力実証の公募も始まったほか、排他的経済水域(EEZ)への洋上風力拡大に向けた検討も進む。国内洋上風力は黎明期を脱しつつあるようだ。


■ラウンド2の事業者決定


国土交通省と経済産業省は昨年12月にラウンド2の選定結果を発表した。「秋田県男鹿市、潟上市および秋田市沖」「新潟県村上市および胎内市沖」「長崎県西海市江島沖」で、いずれも商社を中心とするコンソーシアムが落札した。なお、「秋田県八峰町および能代市沖」は港湾の利用重複に伴い公募占用計画の再提出が必要となったことから、選定結果は3月に公表される予定だ。

公募では供給価格と事業実現性について各120点の計240点満点で評価を行った。供給価格がゼロプレミアム水準以下の場合は一律120点として評価することとしており、今回の公募における同水準は3円/kWh。なお、供給価格上限額は秋田県八峰町・能代市沖、秋田県男鹿市・潟上市・秋田市沖、新潟県村上市・胎内市沖はモノパイル式を想定し19円/kWh、長崎県西海市江島沖はジャケット式を想定し29円/kWhに設定されていた。


秋田県男鹿市・潟上市・秋田市沖では公募に参加した3事業者すべてが、新潟県村上市沖・胎内市沖では4事業者のうち3事業者が価格点で120点を取ったことから、ゼロプレミアム水準以下の供給価格を提示したとみられる。価格点では差がつかなかったため、事業計画の迅速性や地域との調整など事業実現性で競うこととなった。

なお、2事業者が競った長崎県西海市江島沖では住友商事らのコンソーシアムが事業実現性評価点で後れを取ったものの、価格点で差をつけた。もう一方の事業者は供給価格について上限額に近い28.99円/kWhを提示したとみられる。

秋田県男鹿市・潟上市・秋田市沖では3事業者が公募に参加し、JERAと伊藤忠商事、電源開発、東北電力のコンソーシアムが選ばれた。ベスタスの15MW(メガワット)級風車21基を設置する計画。運転開始時期は2028年6月30日を予定している。

新潟県村上市・胎内市沖では4事業者が公募に参加し、三井物産とRWEオフショア・ウィンド・ジャパン村上胎内、大阪ガスのコンソーシアムが選ばれた。GEの18MW級風車38基を設置する計画。運転開始時期は2029年6月30日を予定している。

長崎県西海市江島沖では2事業者が公募に参加し、住友商事と東京電力リニューアブル・パワーのコンソーシアムが選ばれた。ベスタスの15MW級風車28基を設置する計画。運転開始時期は2029年8月31日を予定している。また、同事業から発電される電力は住友金属鉱山やSUMCOをはじめとする企業などに供給する計画だ。

■ラウンド3の公募開始

国交省と経産省は1月、ラウンド3となる洋上風力公募を開始した。「青森県沖日本海(南側)」と「山形県遊佐町沖」の2区域について、7月19日まで公募占用計画を受け付ける。選定結果は12月に公表する予定だ。ラウンド3では、青森県沖日本海(南側)が計60万kW、山形県遊佐町沖で45万kWの系統を確保している。

洋上風力産業ビジョン(第1次)では2030年までに10GW、40年までに30〜45GWの案件を形成する目標を設定している。また、第6次エネルギー基本計画では2030年時点の導入目標を5.7GWとしている。政府は年間で1GW程度の案件形成を継続することでこれらの目標達成を目指す。洋上風力公募を巡っては公募ルールの見直しに伴う遅れがみられたが、ラウンド1で約1.7GW、ラウンド2で約1.8GW、ラウンド3で約1.1GWの容量で入札を行い、合計4.6GWまで具体化の目途が立ち、遅れを取り戻しつつある。
 

■導入拡大へさらに取り組み進む


浮体式洋上風力の導入に向けた取り組みも進んでいる。NEDOは2月9日、グリーンイノベーション(GI)基金で実施する「洋上風力発電の低コスト化プロジェクト」について、フェーズ2となる浮体式洋上風力実証事業の公募を開始した。同事業では2030年度までに浮体式洋上風力を国際競争力のある価格で商用化する技術を確立することを目的としている。公募締切は3月25日で、5月下旬に交付先を決定する予定だ。2事業程度の採択を想定している。

実証で使用する風車の単基出力は10MW以上で、実証規模は30MW以下を基本とするが、例外として15MW超の風車については2基まで設置を認める。実証海域は、北海道石狩市浜益沖、北海道岩宇・南後志地区沖、秋田県南部沖、愛知県田原市・豊橋市沖の4海域で、提案者は1カ所を選択し、実施計画を策定することになる。

また、EEZへの拡大に向けた検討を内閣府や関係省庁が進めている。洋上風力発電の40年30〜45GW目標を達成するためにはEEZも活用し加速していく必要がある。また、昨年4月に閣議決定された第4期海洋基本計画では、洋上風力発電のEEZへの拡大を実現するため、法整備をはじめとする環境整備を進めることとしている。

EEZは領海内と異なり、都道府県の管轄外であることから国が主体となり区域の設定・指定を行っていく必要がある。現在、EEZにおける事業者の選定、利害調整、環境アセスメントのあり方などについて関係省庁で検討を進めている。事業者選定においては二段階方式を前提に、具体的な制度設計に向けた議論を行っている。二段階方式ではまず、国が指定した候補海域内で、事業者が区域図案や発電設備の設置計画案を提出し、国は一定基準を満たす者に対して仮の許可を付与。その後、事業者は利害関係者との調整を行い、調整後の設置計画と区域図を国にあらためて申請、国が正式な設置許可を付与し、国による支援を受けることを可能とするかたちだ。なお、選定基準については、事業者の適格性や事業計画に求められる事項は、領海内における選定基準や事業計画に求められる事項などと同程度とする方針だ。

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