2024年2月27日無料公開記事洋上風力発電
CTV運航開始、4月に秋田訓練センターが開所
日本郵船
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「風と海の学校 あきた」開所に向けて実施しているデモ訓練の様子
日本郵船はグループをあげて洋上風力発電分野の事業化を進めており、その具体化が進む。洋上風車の保守などに携わる作業員を輸送する船であるCTVの運航を北海道の石狩湾新港で昨年開始した。今年4月には秋田県で船員や洋上風力発電の作業員向けの訓練センター「風と海の学校 あきた」の開所を予定する。
同社は中期経営計画で洋上風力関連事業を新規事業の1つとし、2023年度から26年度までの4年間で計430億円を投資する計画だ。洋上風力は発電プロジェクトの調査・検討から始まり、必要な資機材の輸送、洋上への風車の設置、そして運転・保守という段階を踏む。全フェーズで、海や船に関する知見を生かす。
過去数年にわたりさまざまな種をまき、それが徐々に花開いてきた。昨年稼働したCTVは作業員を陸上から風車へ、風車から陸上へと送り届ける船。“RERA AS”(レラアシ)と名付けた同船を世界的な風力タービンメーカー、シーメンスガメサとの複数年の用船契約に投入し、再生可能エネルギー事業開発を行うグリーンパワーインベストメントが設立したグリーンパワー石狩が石狩湾新港で運営する8MWの風車14基の運転を支える。
日本郵船は海外向けにCTVを保有した実績があるが、運航まで手掛けるのは“RERA AS”が初めてとなった。その経験を国内で多くの需要が見込まれるCTVの次なる事業へとつなげていく。また、“RERA AS”は海外建造となったが、今年1月、同社として初めて国内造船所の小鯖船舶工業(岩手県釜石市)にCTVを1隻発注した。本船は2025年から26年にかけて竣工後、日本国内の洋上風力発電施設の建設や保守に従事する予定。CTVを国内造船所で建造することで国内の造船業界の活性化や洋上風力発電の普及を目指す。
CTVのほか、洋上風車の建設に用いられるSEP船(自己昇降式作業台船)、直流ケーブル敷設船の事業化も進める。SEP船は1600トンクレーン搭載船“Aeolus”を26年内を目途に日本事業への投入を目指す。ケーブル敷設船は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業として開発を進め、風力発電の導入拡大に向けて効率的に送電できる電力系統を実現する。これら特殊船のほか、重量物を含む資機材の輸送に海運会社としての経験を生かす。
石狩湾新港に続き、今後さらなる発電プロジェクトへの取り組みを予定する。三菱商事らのグループが事業者となる秋田・千葉の大規模洋上風力発電の3つの事業で船舶などを提供する協力企業となり、26年頃から始まる建設工事に向けて準備を進めている。
その秋田では4月から人材育成事業を開始する。日本海洋事業とのコンソーシアムで、船員や洋上風力作業員向けの訓練センター「風と海の学校 あきた」を秋田県男鹿市で開所する。資源エネルギー庁の補助を受け、国際風力機関(GWO)が定めた作業員向け基本安全訓練や、船員向け基本安全訓練(STCW基本訓練)、シミュレータによるCTVなどの操船訓練を提供する予定。協力企業の東北電力リニューアブルエナジー・サービスが秋田市内で提供する風車作業員向けの保守作業訓練とも連携する。訓練センター全体として将来的に年間1000人程度の訓練修了生輩出を目指すとともに、男鹿海洋高校の生徒や近隣の小中学生などにも開放することで、将来的な海事人材の育成にも貢献する。
洋上風力発電は地元密着のプロジェクト。日本郵船は秋田県、北海道と再生可能エネルギー分野などを対象とした包括連携協定をそれぞれ締結した。これに伴い、22年4月には秋田支店を、今年4月には北海道支店を開設する予定。これらの協定の対象は洋上風力発電に限定したものではないが、両地域ともに国内で洋上風力が先行する地域でもある。地元関係者と持続可能で安定した事業環境を築き、発展させていく考えだ。