2024年11月22日無料公開記事洋上風力発電
洋上風力人材の育成強化へ
高専機構、八戸・函館・秋田高専拠点に
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国立高等専門学校機構は洋上風力分野の人材育成を強化する。2024年度から新たにCOMPASS 5.0(次世代基盤技術教育のカリキュラム化)の対象分野として、洋上風力に関わるエネルギー分野を追加した。また、カリキュラムの策定などの具体的な検討を進める拠点校として函館工業高等専門学校と八戸工業高等専門学校、秋田工業高等専門学校を選定した。洋上風力をはじめとする再生可能エネルギーに関する知識と広い視野を持ち、自律的に活躍できる人材の育成を、産業界のニーズに応えるかたちで進めていく。
高専機構は21日に記者会見を行い、拠点校3校が高専の風力人材育成の状況を説明した。高専機構は今年6月、「洋上風力人材育成推進協議会(ECOWIND)」と連携し、洋上風力発電に関する「再生可能エネルギー(風力)」分野の人材育成を継続的に取り組んでいく方針を明らかにしており、今回の取り組みはこれに基づいたもの。
八戸高専では再生可能エネルギー(風力)分野について、既存の4コースを横断した教育プログラムを作成する方針だ。分野横断型の教育では現在8つの「系」が組織されており、このうちの「エネルギー系」を「再生可能エネルギー系」と名称変更する。また、同校が学生の問題解決力を高める目的で実施している「自主探究活動」も活用するほか、グローバルエンジニア育成や、STEAM教育として小学生向けの取組みも展開していく。
函館高専では機械・電気・土木分野の技術を結集した洋上風力技術の基礎知識を学科横断で学ぶことができる洋上風力履修コースを新設する。洋上風力に特化した教材の開発・講義、関連業界との連携によるセミナーなどの開催を通じ、関連業界への就職やキャリアに結びつける。同時に、業界の協力を得て、講演や現地研修などを通じて受講生からの要望などをフィードバックしながらFD(教育内容の改善)にも取り組む。新設コースは3年生からの選択履修コースとして設定。5年次には洋上風力基礎技術科目として洋上風力概論を開講し、洋上風力に特化した技術を学ぶ。
秋田高専は出口志向で風力人材育成を行う方針だ。「卒業生がどんなところで活躍するかを考えて教育を行っていくのがポイントだ」(秋田高専の高橋雅之校長)。秋田県の産学官が連携する「秋田の未来を創る協議会」では、洋上風力人材育成について9月に方向性が決議され、発展可能性のある国際化に対応できる人材養成の必要が打ち出された。これに向け同校では国内外問わず、産業界や行政、大学、他校などとも連携して取り組む方針だ。まず、1年生全員に風力発電見学を行い、風力業界に関心がある学生は風力発電専攻として2年生から5年生まで一貫して卒業研究に向けた勉強を行うかたちとする。また、風力発電専攻の学生は英語学習や企業研修を行うほか、海外研修を必須とする。「ただし勉強はこの5年間では終わらない。その後実際に企業や大学に進み、さらに勉強を続けていくための基礎をしっかり身に着けてもらおうということを考えているのが秋田高専だ」(同)。