2024年6月26日無料公開記事洋上風力発電

浮体式洋上風力の技術課題に挑む
FLOWRA、早期導入へ事業者連携

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発電事業者ら18社が参画

 「浮体式洋上風力技術研究組合(FLOWRA)」が今年3月に発足した。同組合では発電事業者らを組合員とし、浮体式洋上風力のコストとリスクの低減や、技術開発の促進につながるテーマなどに共同で取り組む方針だ。関連メーカーや研究機関、海外機関との連携も視野に入れる。FLOWRAの寺﨑正勝理事長に発足の狙いや取り組み方針について聞いた。

■浮体式で日本が欧州を追い越す

 — FLOWRA発足の背景について。
 「欧州における洋上風力の技術開発で採用されてきた発電事業者主導の技術開発方式であるJIP方式をベースとしつつ、日本の気象海象や海底地形に適した、なおかつ日本の強みを活かしたかたちで浮体式洋上風力の技術開発を推進するべくFLOWRAを発足した。浮体式洋上風力は日本では2015年頃まで福島沖の実証など先行していたが、現在は欧州に追い越されている。一方で、欧州でも浮体基礎の大量生産や大水深への対応などまだまだ課題がある。日本が追い越せるチャンスがあるので、共通課題に向けて事業者単体ではなく業界全体で取り組むべく発足した」
 「当初、社員それぞれが会社の看板を背負って仕事をするという日本の企業文化がある中で、このような業界全体での取り組みがうまく機能するか懸念はあったが、各社でJIP方式の必要性について共通の認識を持っていただけた。着床式の公募が進み、洋上風力は一筋縄ではいかないことに気づかれたのではないだろうか。洋上風力に取り組んでいるとさまざまな壁が立ちはだかり、個社だけでは無理だと気づかされる。着床式の開発が進んでいくにつれて、みな同じ課題に直面されたのではないかと思っている」
 — FLOWRAの体制について。
 「まずは14社でスタートし、新たに4社が参加した。当組合では欧州のJIPを主催する第三者機関のカーボントラストと協力し、5つの研究テーマを設定しており、それぞれにテクニカルワーキンググループを設置している。また、6番目の研究テーマとしてコモンR&Dを設定している。例えば5つの研究テーマの中には『浮体システムの大量/高速生産等の技術開発』があるが、その大量生産した浮体の運搬方法や設置、港湾など掘り下げると別の課題が出てくる。そういった課題を6番目の研究テーマでカバーしていく」
 「組合員は発電事業者のみだが、今後の技術開発においては共同パートナーとして造船所や重電メーカーなど、洋上風力サプライチェーンに携わるさまざまな事業者に参画いただき、お力添えをいただきたいと考えている。われわれとしては開発した技術を標準化し、広く使えるようにしていきたい。標準化においては、洋上風力発電設備を設置する際に電気事業法などに基づき審査を行う、日本海事協会などの第三者機関にも技術開発に参画・監修してもらいたいと考えている。これにより開発した設備・システムを実際に設置する際の審査や認定を簡略化することができればと考えている。当組合の取り組みは日本市場のみを考えているものではなく、アジア太平洋地域を中心とするグローバル市場も視野に進めていく方針だ」

■浮体製造事業者と協力し開発進める

 — 造船業など浮体製造事業者との協力についての考えを伺いたい。
 「われわれ、発電事業者にはモノづくりができない。われわれが求める時期に求める量を、コストを考慮しつつ浮体設備をメーカーに作っていただかなければならない。ただし造船業など浮体製造を担う会社にしわ寄せするつもりは全くなく、低コストを無理強いするわけではない。いかに大量に安定して、ジャストインタイムで、低コストで浮体を製造するかを作る側と使う側が一緒になって考えていかなければいけないと考えているので、ぜひコミュニケーションをとらせていただきたい。当組合ではグローバル市場も視野に入れた取り組みを行う方針であり、そのためには価格や品質の競争は避けて通れない。浮体製造を担う事業者とは本音ベースで話をしていかなければいけないと考えている。日本のモノづくりの基盤が輝きを取り戻す、さらに輝いていけるようにしていきたいというのがわれわれの狙いでもある。互いに切磋琢磨していき、世界から注目されるものにしていきたい」
 — FLOWRAの発足は4月の日米首脳共同声明でも言及されていた。海外との連携は。
 「当組合の発足に非常に期待をされており、米国から連携できないか打診を受けている状況だ。国際連携をどのように進めていくかは現在検討を進めているが、その理念としては日本が浮体式洋上風力分野でどのような役割を果たせるかということを中心に考えていく方針だ」
 「欧州との連携について、欧州ではすでにある程度の知見が蓄積されているが、実証を行っているというわけではない。彼らの知見やデータは非常に有用であり、場合によっては欧州と協力して日本が開発した設備・システムを実証していくという可能性もある。欧州のJIPとはウィンウィンの関係を築いていきたいと考えており、今まさに意見交換を行っているところだ」
 — 国土交通省では、「浮体式洋上風力発電の海上施工等に関する官民フォーラム」を立ち上げられたが、意見交換や連携の可能性は。
 「施工側で同じような動きをされ始めたのはわれわれとしても歓迎するところであり、期待している。まだ直接的に話はできていないが、車の両輪で開発や社会実装を進めていけるような取り組みができればと考えている」

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