2024年5月29日無料公開記事洋上風力発電
「洋上風力人材輩出・地方創生の拠点に」
日本郵船・曽我社長、秋田の「風と海の学校」開所式で
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開所式の様子。曽我社長(右から3番目)、佐竹知事(右から4番目)
日本郵船と日本海洋事業が今年4月に秋田県男鹿市内に開設した洋上風力発電向け訓練センター「風と海の学校 あきた」の開所式が28日に行われた。日本郵船の曽我貴也社長や秋田県の佐竹敬久知事、男鹿市の菅原広二市長らが出席。訓練センターは洋上風力発電に関わる技師や船員、海事産業の人材開発の拠点となる。曽我社長は「この訓練センターのオープニングはあくまでわれわれがスタート地点に着いたということ。洋上風力黎明期であるわが国で先頭を走っているこの秋田県において必要不可欠な洋上風力人材の輩出拠点となり、産業基盤の安定に寄与することを目指すのみならず、地方創生の拠点にもなれるようさらに頑張りたい」と語った。
「風と海の学校 あきた」は男鹿半島にある秋田県立男鹿海洋高等学校の実習棟の一部やプール、それと隣接する旧男鹿市立船川南小学校の一部を活用して整備された。産官学連携の取り組みで、洋上風力の先進県である秋田に新たな産業クラスターがつくられる起点の1つになると期待され、次世代を含む海洋人材の確保、雇用創出、人流の活性化によって地方創生へとつなげる取り組みにもなる。
同センターでの訓練コースは、洋上風車で作業する技師向けのGWO基礎安全訓練、船員向けに有事対応を想定した生存訓練や消火訓練といったSTCW基本訓練、海外製の最新型操船シミュレーターを使ったCTV(洋上風力作業員輸送船)など小型船の船員向け訓練の3つ。既にすべての訓練が開始され、4月以降の県内外の受講者は数十人となった。
開所式で日本郵船の曽我社長があいさつに立ち、関係者らに謝意を示した上で、「4月から運営を開始し早速多数の受講生がいらっしゃった。受講生からは『秋田に来たのは初めて。お米がおいしく訓練中なのに太った』『地元施設で頑張ってと声をかけてもらった』とうれしいコメントをもらっている。これはまさに訓練センターが地方創生に貢献できる可能性を秘めていることを示している。県外から訓練の受講を目的に来た方が秋田を好きになり、家族旅行で、数年後の更新訓練で、再び訪れようという新たなサイクルの人流が生まれ、地方創生につながっていくのではないかとわれわれも信じている」と思いを語った。
この訓練センターの特徴の一つは既存の学校内に置かれていること。「教育現場に近い場所にある訓練センターであることも生かし、現役世代の人材育成のみならず、小・中・高生といった次世代の人材育成にも貢献していきたい」(曽我社長)。秋田県では2027年頃から一般海域での洋上風力発電の開発が予定されている。「一つの発電所の運転期間は約30年と言われている。そこで活躍する方々はまさに今の小・中・高生、こういった年代だ。作業員や船員に限らず、秋田で洋上風力に関連する人材を輩出するには次世代の興味や関心を促すことが求められている。訓練センターでは男鹿海洋高校の生徒に最新鋭の操船シミュレーターを開放することや、秋田の小・中・高校生に訓練センターを見学してもらい、それを通して彼らが洋上風力、海事産業へ興味を持つきっかけ作りになれば」と期待を込めた。
来賓として秋田県の佐竹知事もあいさつ。「洋上風力発電のメンテナンス技術者は全国的に不足しており今後の大量導入を見据えて人材育成が大きな課題となっている。県としてはこのセンターが新しい人材育成の場としてそうした課題に応えながら、人流の創出、地域経済の活性化にも多く貢献する施設となることを期待している」と述べた。
開所式ではプール訓練施設、CTV操船シミュレーター、消火訓練施設の紹介も行われた。
日本郵船は2022年2月に秋田県と再生可能エネルギー事業の推進や人材育成などに関する包括的連携協定を締結するとともに、同年4月に秋田支店を開設。包括連携協定を具体化する取り組みの1つが訓練センターの開設となった。「このようなおあつらえ向きの施設がここに存在し、その上、秋田県や男鹿市、経産省、地元の方も含めてこれを有効に活用しようという後押しをいただいたことに非常に意味があると思う。当社はESG経営に取り組んでいるが、この施設を通じて行いたいのは代替エネルギーの開発に携わること、それに関わる人を輩出していくこと。このような形で施設を使用することはサーキュラーエコノミーでもある。無駄なく、既存のものを有効活用していくという点で大きな意味がある」(曽我社長)。
同センターの今年度の受講者の延べ人数は数百人を見込む。「受講生からはトレーニングの中身もさることながら、男鹿について非常に良い印象を持っていただいている。講習の技術内容は極めて高度なものでありながら、男鹿自体の良さも感じてもらえるセンターになってほしい」(曽我社長)。
今後、日本郵船は秋田県での取り組みにおいて、CTVやSEP船などでの展開を推進していく。曽我社長は「(一般海域の)洋上風力が出来上がってくるのは数年後になるが、その間にわれわれが取り組むべきはCTVやSEP船といった船会社ならでは分野。次のステップに進みながら、洋上風力に関するあらゆることに秋田の皆さんと取り組んでいいきたい」と期待を語った。
開所式では各施設の紹介も行われた
開所式では各施設の紹介も行われた
曽我社長