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2024年2月5日無料公開記事海事スタートアップと描く未来 内航NEXT

《連載》海事スタートアップと描く未来㉘
内航貨物と空船、ウェブでマッチング
ミナクニ、デジタル化進め業務を効率的に

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 2023年に創業したミナクニは内航海運業界の業務をデジタル化することで業界発展に貢献しようと事業を展開している。従来電話やファクスでのやりとりが主流の貨物と空船のマッチング業務をウェブ上で完結できるプラットフォームシステム「みんなのボースン」や、手書き帳票をパソコンで作成できるようにするための業務支援などを提供。同社の代表を務める杉山喜康氏は「今後は内航海運事業者のニーズをさらに盛り込み、より使いやすいサービスを目指す」と語る。

■船舶の運航管理経験を基に起業

 — 2023年にミナクニを設立した。
 「大手物流企業でトラックの配車や倉庫管理業務を経験後、グループ内の海運会社に異動し内航貨物船の運航管理を担当した。陸運や倉庫の世界ではペーパーレス化が進められるなど徐々に仕組みが変わっているところだったが、内航海運業界に来てみるとアナログな手法が主流で驚いた。出先でコンビニからファクスを送ったこともある。少しデジタル化が進むだけでも業務効率がかなり上がりそうだと感じ、それを手助けしようと起業を決めた」
 「内航海運業界に貢献したいという気持ちが大きい。運航管理を担当するまで海事産業が日本にとってこれほど重要だということを知らなかった。大学時代にシステム関係を専攻していたので、これまでの自分の経験を全て生かして業務に当たっている」

■情報交換をデジタル化

 — 荷物と空船のマッチングプラットフォームを立ち上げた。
 「創業後まず着手したのが、荷物と空船のマッチング業務のデジタル化だ。内航海運業界では船ごとに貨物が決まっていることが多いが、荷量の増減にあわせて船舶そのものや荷物を融通し合うことも日常的に行われている。運航管理を行っていた際にこの業務が特に改善の余地があると感じていた。同業他社との情報交換は電話やファクスが主流で連絡が負担になる上効率が悪く、マッチングに時間がかかることも多かった。こうした実体験を踏まえてマッチングプラットフォーム『みんなのボースン』を立ち上げた」
 「『みんなのボースン』は会員企業がウェブ上で船と貨物の情報を公開し、双方で金額など条件を交渉して成約となるプラットフォームシステムだ。検索機能を備えており、船種やエリア、期間を絞って情報を閲覧できる。電話などと異なり、自由なタイミングで必要な情報にすぐアクセスできるのがメリットだ。現在はモニター版をリリースしており、会員から使い勝手などを聞いて本リリースに向けてブラッシュアップを進めている。成約まではデジタル化できたものの、成約後の書類のやりとりは従来通りファクスなどになっているのが課題だ。マッチングの全工程を『みんなのボースン』上で完了できるようにしてより使いやすい仕組みにしたい」

■脱「手書き」をサポート

 — その他の事業については。
 「内航海運事業者から要望の声を聞いてスタートしたのが日々の作業をデジタル化するための支援業務だ。Excelの関数を活用して船舶明細やクルーリストの発行を効率化するなど、企業ごとにサポートを行っている。船のドラフト計算といった海上での業務もExcelの関数を使うことで負担を減らせるようご提案している。内航の船主は家族だけで経営しているケースも多く、仕事のやり方を長年変えずに手書きで帳票を作成している会社も珍しくない。また、会社の規模を考えると高額なシステムを導入するのはもったいない。そこで、手軽に取り入れられるExcelなどを活用している」
 「陸上と海上で速やかにファイルの受け渡しができるよう船舶のパソコンと陸上のパソコンのフォルダの共有化といったインフラネットワークの構築も手掛けている。22年から船員の働き方改革がスタートしており、陸上と船とのコミュニケーションの重要性が一層高まった。ネットワーク構築はこうした需要にも応えられる」
 — 企業ホームページ作成も手掛けている。
 「社長が代替わりしたタイミングなどで依頼を受けることが多い。若手経営者はインターネットが身近なのでホームページの重要性を感じているようだ。パンフレットなど紙ベースの資料と異なり、情報の更新が容易で持ち運ぶ手間もないのがメリットで、荷主やオペレーターとの商談の際にホームページを使って自社を紹介するなどして活用いただいている。SNSの導入や運用もメニューとして用意している」

■利用運送事業登録で利便性アップ目指す

 — 23年12月には第一種貨物利用運送事業(内航)の登録を完了した。
 「『みんなのボースン』は現時点ではあくまで企業同士をつなぐプラットフォームだが、利用運送事業によりアップされた案件を当社が直接引き受けることができ、ユーザーの利便性の向上が見込まれる。加えて、マッチング業務に当たることで生の情報に触れる機会が増えてアップデートのための知見もさらに蓄えられる。『みんなのボースン』の24年度中の本稼働に向けて取り組みを進めていく」
(聞き手:伊代野輝)

荷物と空船のマッチングプラットフォーム「みんなのボースン」

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