2024年1月31日無料公開記事「2024年問題」船社のシナリオ 内航NEXT

《連載》「2024年問題」船社のシナリオ⑫
大型化と乗船日分散で輸送力増強
宮崎カーフェリー

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2022年に新造船2隻を投入(写真は“フェリーろっこう”)

 宮崎/神戸航路を運航する宮崎カーフェリー(宮崎市、郡司行敏社長)は、2024年問題によって現在の陸送体制の維持が難しい南九州/関西・関東輸送の受け皿になるべく準備を進めている。2022年に新造船2隻を投入し、トラック積載台数を130台から163台に増強。また、季節と曜日の繁閑差を平準化して輸送力を最大化するため、トラック事業者に乗船日を分散してもらうといった取り組みを検討している。一方、南九州では代替輸送手段としてのフェリーの認知度がまだまだ低いため、情報発信を強化していく。
 同社が本社を置く宮崎県は、大消費地である関東・関西から離れていることなどから2024年問題への関心が高いものの、フェリーを活用する動きは緒についたところという。宮崎県は2023年8月に県内のトラック運送事業者で構成する宮崎県トラック協会と共同で実施した2024年問題に関するアンケート結果を公表。2024年問題への対応状況・予定について、「海運や鉄道などへのモーダルシフト」と回答した運送事業者は6.6%、荷主は2.5%にとどまった。
 宮崎カーフェリーの郡司社長は「当社の2023年の貨物乗船台数は前年度と比べ増加したが、コロナ禍からの回復とも重なっており、2024年問題の影響はまだ限定的だ。最近はトラック事業者だけではなく大手荷主からの引き合いもあり、テスト輸送を行った事例もあるが、4月までに体制を整えようという企業が多いと感じる」と語る。
 同社ではモーダルシフトにもっと目を向けてもらうために情報提供を強化する。郡司社長は「トラック協会の行ったアンケートによると、フェリー会社に求められることは普及活動だという。まだまだフェリーをよく知らないトラック事業者が多く、欠航やコストアップといったイメージもあると思う。当社のフェリー航路の欠航率の低さやコストも含めて積極的な情報提供が重要だ」と話す。物流事業者向けの普及活動として、宮崎県と連携したポートセールスなどのイベントで航路PRを行いながら、荷主に対してはカーボンニュートラルの視点からもセールスを行う。郡司社長は「荷主は脱炭素をかなり意識している。データなどもお示ししながらフェリー利用を提案していく」と述べた。
 同社では、モーダルシフト需要の増加に対応するため、季節や曜日などによる繁閑差はあるものの、大型化した新造船のスペースを最大限生かす方針。南九州では主要産品の野菜の出荷ピークを迎える冬にフェリーのスペースが逼迫するのに対し、夏は貨物が減る傾向にある。また、市場の休日や土日に貨物乗船台数が減る。繁閑差の解消策として、顧客とコミュニケーションをとりながら乗船台数を極力平準化して生鮮品の出荷ピーク期を乗り切りたい考えだ。
 また、上下便の荷量差の解消策では、BCP(事業継続対策)も絡めた提案を検討。現在は神戸発の貨物が宮崎発に対して少ないが、郡司社長は「近年中国地方や北部九州で災害が頻発したことから、災害に強い海路への期待は大きい。食品や雑貨は九州北部の拠点から陸送する体制が主流だが、BCP対策で南九州にも輸送拠点をつくる考えが広まれば、当社のフェリー航路を利用していただけるチャンスがある」と語った。
(この連載は、伊代野輝、坪井聖学が担当しました)

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