2022年7月25日無料公開記事内航NEXT 次代への戦訓

《連載》次代への戦訓
中小オペレーターのグループ化を
日本内航海運組合総連合会前会長 小比加恒久氏⑤

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 東都海運は1949年の設立以来、関係各位のご支援を賜りながら、「独立独歩」の精神の下、陸海従業員が一丸となって幾多の風雪を克服し、今日がある。当社は常に顧客の立場でニーズを考え、それに沿った物流を構築してきた。多年にわたって培ってきたコモンキャリアとしてのノウハウを生かしながら、今後も顧客の多様化するニーズに応えてまいる所存だ。
 現在、内航海運を手掛けるオペレーターは、大手荷主や大手資本の子会社、一貫輸送を行っている物流会社の内航部門などが多い。タンカー業界も系列化されている。そのような中で、当社のような独立系の中小オペレーターが今後も生き残っていくためにはまとまらざるを得ないというのが私の持論で、独立系のオペレーターがグループ化して協力していく必要があると考えている。
 内航船のオーナーのグループ化や統合が進まないのと同様に、家業のオペレーター各社も統合には抵抗感があると思うので、まずは提携などから取り組むのがよいのだろう。これを私は全国海運組合連合会(全海運)の会長時代から言い続けていて、当社では実際に複数社と業務提携している。
 ただ、オーナーの統合・グループ化が九州などで少しずつ出て来ているのに対して、オペレーターのグループ化はほとんど進んでいない。独立系コモンキャリアは今や少ないが、少ないからこそそのような話がしやすいのではないかと思う。3~4隻持つ会社が3社集まれば10隻の船隊を共同運航できるので、絶対にスケールメリットが出る。現在の内航海運業界はメーカー系、大手船社系、物流会社系のオペレーターに中小オペレーターがそれぞれぶら下がるという多重構造になっているが、そのような構造ではどうしても上だけを見て業界全体に目が向かない。
 オーナーでは世代交代が進んで乗船経験のない人が増えており、単独では船員を配乗できない、船のメンテンナンスもできないということで必要に迫られてグループをつくった例もある。特に船員の確保は難しくなっており、必要に迫られる形でオーナーのグループ化が今後進むと考えている。
 内航業界に若い人に来てもらうために、船員の働き方改革を進めてその魅力をアピールしていくことが大切だ。今の時代に合わせて変えるべきところは変えていき、環境対応もしっかりとやっていく。国土交通省にリードして頂きながら、荷主と内航業界が持続可能な契約を結び、そして内航業界自身がグループ化などを進めて体力を付けていくということが、内航海運を今後も続けていくために必要だ。
 私は創業者の父を手本にしてきた。業界のいろいろな方にお世話になったが、特に山中造船の会長だった浅海宣博さんには若い時から公私共にお世話になった。私が入社してから社船はずっと山中造船で建造し、用船も山中造船の建造船にしている。
 日本内航海運組合総連合会(内航総連)の会長になったことで日本船主協会や日本物流団体連合会にも関わるようになり、そこでこれまでとは違う世界の方々とお会いするようになり、良い経験をさせてもらった。社業でも業界活動でも、周りの方々に本当によく協力して頂いた。
 内航海運業界はまとまりがある方だと思う。内航総連傘下5組合には家族経営の一杯船主から大手上場企業まで加盟してるいるので、1つの方向に向かうのは簡単ではないが、話し合えば最後には必ず理解して頂けると思っていた。内航海運暫定措置事業終了後の内航海運組合のあり方は、上から押し付けるではなく各組合が考えることだが、より業界としてまとまって1つの方向に向かうために内航総連に一本化してその中にタンカー、貨物船、RORO船などの部会を置くという形も一案だと思う。暫定措置事業終了後も、内航総連には業界の広報、規制や諸課題への対応など、やらなければならないことが沢山ある。オーナー・オペレーター個々ではできない痒い所に手が届くようなフォローができる組合であれば加入するメリットがあるので、事務局を中心にこれからも頑張って頂きたい。
 内航海運業界の次の世代へのメッセージという質問にお答えするなら、人と人との付き合い、特に年齢の近い人たちとの付き合いを大切にしてほしい。時代が変わって世知辛い世の中になり、昔のようなバッファーがなくなってきている。そのような時代だからこそ、言いたいことを言える、何でも相談できる同世代の仲間を極力つくるべきだろう。もちろんお客様と業界の先輩にも可愛がられなければ進歩はない。人のために一生懸命やればいつか自分にも返って来る。内航海運業界は世の中の役に立つ商売であり、絶対に必要な仕事だ。この仕事に関わる全ての方々に誇りを持って頂き、常に心にある程度ゆとりを持ちながら、未来に向かって頑張って頂きたい。
(連載終わり。聞き手・構成:深澤義仁)

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