2026年8月26日無料公開記事自動運航技術の最前線
《連載》自動運航技術の最前線
人の感覚に近い避航を追求
日本無線、移動型FOCで複数船支援
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(左から)榎戸氏、佐藤氏、渋谷氏。開発した移動型FOCをバックに
日本無線は、日本財団の無人運航船プロジェクト「MEGURI2040」の第2ステージで、船上システム、陸上支援システム、船陸間通信システムの開発を担った。既存RORO船“第二ほくれん丸”では、避航ルートを提案する「Path Planner(パスプランナー)」を核に自動運航システムを高度化。陸上では複数船を監視・支援する移動型の陸上支援センター(FOC)を構築した。今回得た知見を生かし、船上から陸上までの技術を組み合わせた製品・サービスへの展開を目指す。
マリンシステム事業部プロジェクト管理部システム管理グループの榎戸達也グループ長、渋谷祐介グループ長補佐、ソリューション事業部海上アプリケーション技術部の佐藤茉莉総括担当課長に、第2ステージの成果と今後の展望を聞いた。
― 本プロジェクトでの担当内容は。
「大きく船上システム、陸上システム、船陸間通信システムの3つを担当した。船上システムでは川崎汽船、川崎近海汽船、YDKテクノロジーズとともに、“第二ほくれん丸”を対象に、Path Plannerを核とする自動運航システムを開発した。レーダーやAISなどから得られる情報を基に他船との衝突リスクを判断して避航ルートを提案し、ECDISやオートパイロットなどと連携して航行制御する仕組みだ」
「第2ステージでは、単に他船を避けるだけでなく、実際の操船者が行うような、より自然な避航を目指して改良を重ねた。その結果、周囲の有人船から見ても不安を感じない自動運航を実現することができた」
― 船上システムでは、どのような成果が得られたのか。
「“第二ほくれん丸”は既存船へのレトロフィットで自動運航を実現した。既存の航海機器を生かしながら自動運航システムを追加し、実際の営業航路で検証できたことは大きな成果だ」
「開発では、実船で得た操船者からのフィードバックや川崎汽船の航海士の知見をシステムに反映した。川崎汽船のシミュレーター上に“第二ほくれん丸”を再現し、避航ルートの検証も繰り返した。避航にはルールだけでなく、乗組員が経験の中で培ってきた感覚もある。例えば、不規則な動きの船舶に過剰に反応して避けたり、必要以上に大きく迂回したりしないよう調整し、操船者が見ても違和感のない、人の感覚に近い避航を追求した」
― 陸上側ではどのようなシステムを開発したのか。
「第1ステージから陸上支援に取り組んできたが、第2ステージでは複数船を監視・支援することを前提にシステムを構築した。移動型FOCでは、航海と機関の双方を陸上から監視・支援できる。災害などで常設型FOCが使用できない場合にも安全な場所へ移動して支援を継続でき、必要な機能をコンパクトにまとめた点も特徴だ」
「船舶から取得した情報は、当社の海上情報サービス『J-Marine Cloud(ジェイマリンクラウド)』に集約し、当社の船陸連携ソリューション『Smart Ship Viewer(スマートシップビューアー)』をベースにした機能などを通じて陸上側で確認できる。船の位置や航跡、速力、船首方位、自動運航の状態などを把握でき、他社のシステムを搭載した船についても、クラウド間連携によって情報を取得する仕組みとした」
「陸上側で航海計画を作成して本船に送る機能も開発した。航海士の作業手順を踏まえ、気象などの情報を確認しながら計画を作成できる構成とし、J-Marine Cloudに蓄積したAISデータを活用して、到着する時間帯の船舶交通量を予測表示する機能も備えた」
― 第2ステージを通じて得られた知見は。
「実際の船を使い、実運航の中で検証したことで、技術だけでは分からないことが多く見えてきた。特に無人運航を目指す上では、システムだけではまだ対応しきれない場面や、判断を要するケースを洗い出し、その不足分をどう補うかを明らかにすることが重要だ。そうした課題の整理やシステムの改善にあたって、実際の操船者の意見を聞きながら開発できたことは非常に大きかった」
「陸上支援も、単に船の情報を陸上に表示すればよいわけではない。複数船を見る中で、どの情報が必要なのか、どのように支援するのかといった運用面まで含めて考える必要がある。今回の実証を通じて、船と陸の役割分担を具体的に検討できた」
― 今後の課題と展望は。
「船側では、Path Plannerなど今回開発した自動運航技術を、今後の製品やサービスにつなげていきたい。今回構築したシステムを一律に展開するのではなく、顧客のニーズや船種、運航形態に応じて必要な機能を提供していく考えだ。既存船への導入も含め、実際の運航で活用できる形にしていくことが重要になる」
「陸上支援も、船社や運航管理会社の規模、ニーズに応じて必要な機能や構成を提供していきたい。今回開発した機能の一部はSmart Ship Viewerにも反映していく。当社は航海機器だけでなく、通信やクラウド、陸上側のシステムまで持っており、今回得た知見を組み合わせながら今後の製品やサービスにつなげていきたい」
(聞き手:岡部ソフィ満有子)