2025年2月18日無料公開記事洋上風力発電

離島・グリッド・洋上風力で事業発展へ
海上パワーグリッド・大西新社長インタビュー

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パワーエックス子会社の海上パワーグリッドの新社長に大西英之氏が1月から就任した。海上パワーグリッドは昨年2月に設立され、電気運搬船の開発や販売、電気運搬船を用いた海上電力輸送、電力販売、船舶用蓄電池の販売を手掛ける。大西新社長は電気運搬船初号船の2027年竣工に向け、「離島」「グリッド」「洋上風力」の3つの分野でプロジェクトを積み上げていきたい考えだ。

― これまでの経歴を教えてほしい。

「大学時代は電力・エネルギー分野に魅力を感じ、太陽光を専門に研究していた。外資系化学メーカーに就職した後、やはり電力関係の仕事をしたいと思い、2010年にGEエナジーに入社。日本代表で電力事業部を統括する立場として、発電機器と送配電、オイル&ガスの3本柱の事業に取り組んでいた。16年から国内の陸上風力事業、21年頃から洋上風力事業の立ち上げに従事し、今年1月に海上パワーグリッドの社長に就任した。GEエナジーでは電力事業全般を見ることができただけでなく、社内ベンチャーのようなかたちで風力事業の立ち上げを経験できたので、その経験を当社でも生かせると思っている」

― 社長就任の抱負は。

「船による電気運搬は世の中にまだ存在しないビジネス、無限の可能性があり、その可能性をどの順番でどういう風に実現していくかがわれわれに課せられた課題だと認識している。すごくいいタイミングでこの事業に巡り合えたと思っており、この事業の立ち上がり自体も良いタイミングだ。電気自動車(EV)の台頭に伴い、エンジニアリング技術としてバッテリーの安定性・安全性が向上していると同時にコストも下がっている。また、電力の使われ方と発電方法自体も変化している。データセンターの設置により電力需要が増加しただけでなく、需要地と供給地のバランスもこれまでと異なってきた。再エネの増加に伴い、その発電量や発電する時間帯などをコントロールする必要もでてきた。場所と時間のバランスをとるために、バッテリーが非常に大事になってきている。われわれがその合間を縫って、電力運搬船という柔軟性が高いソリューションを提供できるのではないだろうか」

― 電気運搬船事業を取り巻く事業環境についてどのように見ているか。

「海底送電ケーブルは欧州の場合、遠浅で海底が砂地のため、敷設が比較的簡単だ。一方で日本は海溝や岩盤が多く、技術的に難しいところがある。そういったところに、系統補完というかたちで電気運搬船のニーズがあるとみている。また、浮体式洋上風力については、浮体の技術自体はオイル&ガスの分野で水深2000mまで建設の実績があるので、浮体を設置するだけであれば水深300~400mは十分実現できるだろう。そこからさらに水深を深くしていくとなると、電力ケーブルなどの課題がでてくるため、そこにわれわれが貢献できる分野があると考えている」
 「当社の事業は3段階にわけて発展していく必要があるとみている。1つ目が離島で、発電単価が高く、脱炭素化もしなければいけないところは協力できることが多いだろう。国内には系統でつながっていない有人島が多く存在するので取り組み甲斐がある分野だと考えている。2つ目がグリッド関係で、先ほど説明した系統補完だ。安心安全が非常に重視され、公共性が高い事業なので、われわれが単独で行うのではなく、電力業者と協力して作り上げていきたい。3つ目が浮体式洋上風力で、発電した電力を船で需要地に運ぶ事業だ。第7次エネルギー基本計画案からも洋上風力に対しては期待要因が多く、浮体式関連のビジネスが当社において大きなものとなるだろう」

― 海上パワーグリッドは設立から1年を迎えた。今後の展開について。

「2027年内に初号船を竣工し、27年末から28年にかけて実際に運航を目指す。それまでに、離島とグリッド、洋上風力の3つのステップをさまざまな所でプロジェクトを積み上げ、技術的あるいはオペレーション面の課題などを整理していく」
「また、われわれだけでできることは限られているため、しっかりとパートナーを見つけ、足りないところをカバーしていく。首都圏近郊では横浜市と東京電力パワーグリッド、戸田建設、三菱UFJ銀行と多様な分野のパートナーと協業に向けた1つのかたちができたので、他の地域でも新たなパートナーの模索も含め、取り組みを深めていきたい」

― 仕事をするうえで大事にしていることは。

「自分がどういう変化を起こせるのかを常に頭に描きながら仕事をしている。そういう意味で海上パワーグリッドは私たちのチームがいたから1年後にこういうことができたというのが目に見えるかたちでできるものなので、非常にやりがいのある仕事だと思っている」

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