2025年2月18日無料公開記事洋上風力発電
専用船で地質調査、第3ラウンドねらう
川崎汽船グループのKWS、オフショア支援船は実績着々
-
地質調査船“EK HAYATE”
川崎汽船グループのケイライン・ウインド・サービス(KWS)は昨年、洋上風力発電の初期調査などを行う海洋地質調査事業に参入した。蔵本輝紀社長は「2025年の最大の目標は、昨年末に事業者が選定された第3ラウンドのサイト調査の案件を獲得することだ」と語る。オフショア支援船では着実に実績を積み上げており、“かいこう”が現在、北部九州の洋上風力建設工事で活躍している。同社は他分野の企業とお互いの知見を活かして事業を展開しており、今後もパートナーとともに高品質なサービスを提供していきたい考えだ。
KWSは昨年4月、海洋地質調査会社EGSサーベイ社(EGS社)と折半出資で「EKジオテクニカル・サーベイ社(EKGS社)」を設立。新会社は1号案件として秋田沖の海底ケーブル調査を受託・完了し、9月にはEKGS社のフラッグシップとして地質調査船“EK HAYATE”が就航した。「西日本の海域でテスト調査を行い、無事に完了した。この船を日本の顧客に安心して使っていただけるだろう。春先以降に行われるだろう第3ラウンドの調査やその他案件での調査につなげていきたい」(蔵本社長)
浮体式洋上風力では、グリーンイノベーション(GI)基金事業「洋上風力発電の低コスト化プロジェクト」のフェーズ2となる秋田県南部沖浮体式洋上風力実証事業において、「効率的な係留施工方法の検討」についてジャパンマリンユナイテッド(JMU)と業務委託契約を締結した。KWSはフェーズ1で浮体式洋上風力の係留施工方法の研究を行い、昨年2月に浮体式洋上風車向け専用船のAiP認証の取得、9月にも日本海事協会と連携して作成した「浮体式洋上風力発電設備建設のための浮体曳航および係留施工ガイドライン」を公表した。「係留方式は海域や浮体の形によって千差万別だ。ガイドラインは浮体式の係留の一連の流れを示したものだが、今回のフェーズ2の検討では実際の施工の諸条件を落とし込み、そこに肉付けをしていくかたちになる」(道嶋事業部長)
KWSが契約によっては運航に関与している“あかつき”は、サプライ業務や調査業務で着々と運航実績を積み上げているほか、洋上風力関連では大型SEP船の曳航や支援業務での活用も検討されている。もう1隻の“かいこう”は五洋建設のSEP船“CP-8001”の曳航に従事しており、現在は北部九州の洋上ウインドファームの建設工事で活躍している。“かいこう”について小林営業部長は、「洋上風力ではDP(ダイナミック・ポジショニング)で定点保持を必要とする作業が多く、既存の作業船だけでは対応が難しい状況がある。実際に現場に入って能力の高さがあらためてわかってきた。今後の一般海域での案件での活躍も期待できる」と語る。
写真左から道嶋事業部長、小林営業部長、蔵本社長
風車のメンテナンスなどに従事する作業員の輸送にも進出していきたい考えだ。「人員輸送船についても整備を進めていきたい。SOV(サービス・オペレーション・ベッセル)ではさまざまな引き合いをいただいている。必要とされる船型は顧客ニーズによっていかようにも変わってくる。柔軟に対応していきたい。地域の事業者との連携なども重要だと承知しており、その点も含めて検討していく」(蔵本社長)
KWSは地質調査事業のEGS社をはじめ、五洋建設やJMU、菅原汽船グループなど、さまざまな分野の企業とお互いのノウハウを組み合わせて事業を展開している。また、浮体式洋上風力では海洋インフラサービス企業のアクテオン・グループ・オペレーションと、オフショア支援船の事業開発ではオフショア支援船事業会社のマルコポーロ・マリンとそれぞれ協業検討に向けた覚書を締結した。「洋上風力向けのサービスは1社で完結するのが難しいと考えている。われわれとしては船会社のノウハウを活かしつつ、船主、EPC事業者など他の方々と手を組みながら、より良いサービスを用船者に提供できるようなスキームを目指していくべきだと考えており、今後もそれに向けて模索していきたい」(道嶋事業部長)