2025年2月18日無料公開記事洋上風力発電

《特集》
供給価格と運転開始時期は横並びに
国内洋上風力公募、ルール改定で次のステージへ

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洋上風力作業船の準備も進む(写真=Adobe Stock)

政府は「海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律(再エネ海域利用法)」に基づき、一定の基準に適合した区域を促進区域に指定、同区域の洋上風力発電事業者の公募を実施している。昨年12月に3回目の公募(通称、第3ラウンド)となる一般海域の洋上風力発電事業者公募の結果が発表された。第3ラウンドでは参加者全てが価格点で満点となる120点を取ったほか、運転開始時期も横並びだったため、地域との調整力や事業の実施能力などの事業実現性が決め手となった。第4ラウンドに向けては、経済産業省と国土交通省は1月に「一般海域における占用公募制度の運用指針」を改定し、新たなルールで行われることとなった。一般海域のプロジェクトを見据えた作業船の準備も進みつつある。

第3ラウンドでは「青森県沖日本海(南側)」にJERAらのコンソーシアム、「山形県遊佐町沖」に丸紅らのコンソーシアムが選ばれた。両者ともにシーメンス・ガメサ・リニューアブル・エナジー製の15MW級風車を採用し、2030年6月の運転開始を目指す計画だ。

「青森県沖日本海(南側)」の公募には3事業者が参加し、JERAとグリーンパワーインベストメント、東北電力のコンソーシアム「つがるオフショアエナジー共同体」が落札した。同コンソーシアムは迅速性や事業計画の実行面、電力安定供給に向けた取り組みのほか、漁業関係者との調整や漁業に配慮した風車レイアウトなどが高く評価された。

「山形県遊佐町沖」の公募には4事業者が参加し、丸紅と関西電力、BPイオタ・ホールディングス、東京ガス、丸高のコンソーシアム「山形遊佐洋上風力合同会社」が落札した。同コンソーシアムは迅速性や運転開始までの事業計画のほか、これまでの実績で培った経験を活かした関係行政機関などとの調整能力、地元漁業の発展につながる取り組みなどが高く評価された。

公募では供給価格と事業実現性で各120点の計240点満点で評価を行っている。「秋田県能代市、三種町および男鹿市沖」「秋田県由利本荘市沖」「千葉県銚子市沖」の3区域の公募を実施した第1ラウンドでは三菱商事らのコンソーシアムが最も低い供給価格で入札したことで、事業実現性でも高得点を確保しつつ価格点で他の事業者と大差をつけ、3区域全てを落札した。この結果を受け、第2ラウンド以降の公募では第1ラウンドの供給価格を意識した入札が行われ、価格点の差が縮小することが想定されたことから、「ゼロプレミアム水準」が設けられ、一定価格以下の供給価格の場合は一律120点として評価されることとなった。「秋田県男鹿市、潟上市および秋田市沖」「新潟県村上市および胎内市沖」「長崎県西海市江島沖」「秋田県八峰町および能代市沖」の4区域の公募を実施した第2ラウンドでは「秋田県男鹿市、潟上市および秋田市沖」と「秋田県八峰町および能代市沖」では公募に参加した事業者すべてが、「新潟県村上市沖および胎内市沖」では4事業者のうち3事業者が価格点で120点を取得した。そして今回の第3ラウンドでは参加者全てが価格点で120点を取った。

ゼロプレミアム水準の導入により価格点で差がつかなくなり、第2ラウンドでは計画の迅速性や地域調整力など事業実現性が落札のカギを握ることとなった。第2ラウンドの4区域はいずれも最も早い運転開始時期を提案した事業者が選ばれた。第3ラウンドでは供給価格と運転開始時期で横並びとなったことから、地域調整力などがポイントとなった。なお、価格点や運転開始時期が大差の一因となったものの、いずれのラウンドにおいても選定事業者はほとんどの評価項目で一番手または二番手となる点数を獲得している。

第4ラウンドは新たなルールのもとで行われることになる。経済産業省と国土交通省は1月に洋上風力公募のルールである「一般海域における占用公募制度の運用指針」を改定した。新たな指針では、価格評価における「準ゼロプレミアム水準」の設定やリスクシナリオへの対策の重点評価、セントラル方式によるサイト調査の基本化などが盛り込まれた。また、迅速性評価の変更や保証金制度の見直し、物価変動を考慮する「価格調整スキーム」などについては海域毎に策定される「公募占用指針」で記載される予定だ。洋上風力業界は新型コロナウイルスやロシアによるウクライナ侵攻を契機に、サプライチェーンのひっ迫やインフレなど事業環境が大きく変化し、世界的にプロジェクトの中断や見直しが発生しており、日本では第1ラウンドで3海域を落札した三菱商事が今月5日に各プロジェクトについて事業性の再評価を行っていることを明らかにした。第4ラウンドに向けた準備が進められる中、選定済みの各プロジェクトの動向についても引き続き注目が集まる。


 洋上風力に前進、各社の動向 

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