2025年1月15日無料公開記事洋上風力発電
秋田県に船舶管理会社設立
日本郵船、洋上風力事業向け、秋田曳船と
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秋田県での洋上風力事業関連の取り組みを深化
日本郵船が秋田県で洋上風力事業向けの船舶管理会社を立ち上げた。同社は2024年12月に秋田曳船と洋上風力事業に必要な船舶保守管理サービスを提供する合弁事業会社「ジャパンオフショアサポート(JOS)」を設立した。洋上風力発電向けの作業員輸送船(CTV)に関する保守管理と、船員の人材育成・雇用を行う。秋田県で洋上風力発電プロジェクトが着工する27年に船員の配乗などが可能な万全な体制を整えるべく準備を進める。地元の人材を積極的に登用することで、秋田県での洋上風力事業の発展と地域活性化に貢献していく考え。
日本郵船と秋田曳船は14日、秋田県庁で新会社設立の記者発表会を行った。日本郵船の横山勉執行役員、秋田曳船の船木一美社長らが出席した。
日本郵船と秋田曳船は21年に秋田県沖一般海域を中心とした洋上風力発電向けのCTV事業での協業検討に関する覚書を締結した。検討を進める中で、洋上風力事業の推進に向けては船の保守管理や船員配乗を行う陸側の体制をしっかりと地元で確立させることが、電力の安定供給や風車のメンテナンスなどを行う作業員を安全に現場まで運ぶ観点から重要であるとの認識を共有。CTV事業を実務的に執り行う、地元に根差した会社が必要であることから、船舶管理会社設立に合意した。
横山執行役員は「洋上風力発電事業は作業員の安全対策を施す必要があり、また、地元に根付いて長期にわたり継続される。CTV事業も同様に地域で安定したサービス体制の構築が求められる。特に先行してプロジェクトが立ち上がる秋田県を拠点としたサービスの開始が必要だと考えた」と説明した。
JOSは日本郵船と秋田曳船によって24年12月10日に設立された。代表者は秋田曳船の船木社長が務める。資本金は1億円で、出資構成は日本郵船51%、秋田曳船49%。秋田曳船の社屋内に事務所を設置する。
社名の由来について、船木社長は「洋上風力のフロントランナーである秋田を起点として日本全体の洋上風力に貢献していきたいという思いを込めた」と説明。ロゴマークは、波と風をモチーフに船をイメージしたもので、地球や海を想起させる青と、風力発電・グリーンエネルギーを表す緑の2色を配色した。
新会社の主な事業内容は、CTVに関する保守管理と船員の雇用・育成となる。日本郵船がこれまでの外航海運事業や洋上風力事業における石狩湾新港での船舶運航実績、CTVの協業パートナーであるCTV大手のスウェーデン船社ノーザン・オフショア・サービスから得た知見や、秋田曳船が培ってきた地元企業としての土台とノウハウを生かすことで、安全で効率の良い、質の高いサービスを継続的に提供し、日本の洋上風力発電による電力安定供給に貢献していく。
具体的には、秋田県で洋上風力事業が本格始動に向け着工する27年までに万全な体制を整えることを目指す。秋田県では男鹿市・潟上市で28年の洋上風力発電の運転開始が予定されており、その工事が始まる27年頃を想定するもの。今年4月から船員の採用を開始する予定。「初期は熟練度が求められると思うのでまずは経験者を、可能な限り地元にゆかりのある人材から採用したい」(船木社長)。
CTV1隻あたり6人(配乗3人、予備員3人)体制を想定する。管理船1隻の受注ごとに6の倍数で必要人員は拡大することになる。洋上風力事業の拡大とともに、30年代に船員50人程度、陸上スタッフ10人程度の事業規模へと拡大させることを目指す考え。
船員の雇用・育成について横山執行役員は「当社ではすでにCTVの運航実績があるほか、男鹿市に開所した『風と海の学校 あきた』では訓練サービスの一環としてCTVの操船訓練を提供している。これらの知見を活用し、訓練を経て実際に配乗することで、CTVの高水準の安全品質、運航品質を提供していきたい」と語った。
会見では、秋田商工会議所の辻良之会頭もあいさつに立ち、「日本最大の海運会社である日本郵船と、秋田の海を知り尽くしている秋田曳船のコラボレーションに期待している」と語った。
また、会見に先んじて日本郵船と秋田曳船は、秋田県の佐竹敬久知事へ新会社設立の報告を行った。佐竹知事は「2社の知見と能力を発揮し、洋上風力事業が上手くいくよう、また県内のさまざまな部門にも良い効果が波及するよう支援をお願いしたい」と激励した。
日本海東北エリアでは複数の洋上風力発電事業の開発が計画されており、秋田はその取り組みが先行する地域の一つ。その秋田において、日本郵船は22年2月に秋田県と再生可能エネルギー事業の推進や人材育成などに関する包括的連携協定を締結するとともに、同年4月に秋田支店を開設。包括連携協定を具体化する取り組みの一つとして、日本海洋事業とともに洋上風力発電向け訓練センター「風と海の学校 あきた」を24年4月に男鹿市内で開設している。
秋田県の佐竹知事(左から3番目)に設立を報告