2024年7月31日無料公開記事SEP船の現在と未来
洋上風力発電
《連載》SEP船の現在と未来②
国内SEP船は4隻、既存船の改造も
欧州勢は大型SEP船の整備進む
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日本では大手建設会社を中心にSEP船の整備が進んでおり、現在4隻が竣工しているほか、さらに2隻が既存船の改造により追加される予定だ。世界のSEP船の多くは欧州企業により保有・運航されているが、風車の大型化に拍車がかかる前の2010年代に竣工したものが少なくないため、大型風車に対応したSEP船の建造を順次進めている。
現在、日本企業が保有するSEP船は、五洋建設の800トン吊SEP船“CP-8001”(19年建造)、五洋建設と鹿島建設、寄神建設による共同出資会社PKYマリンの1600トン吊SEP船“CP-16001”(23年建造)、清水建設の2500トン吊SEP船“BLUE WIND”(2022年建造)、大林組と東亜建設工業が共同保有する1250トン吊SEP船“柏鶴”(23年建造)だ。
今後追加予定のものは、戸田建設と熊谷組、西松建設、若築建設、岩田地崎建設、吉田組が共同保有するSEP船“JWFC SUNRISE(仮称)”だ。同船は2014年建造の中古SEP船を1300トン吊に改造するもので、2025年3月に改造完了、25年9月に供用を開始する予定だ。また、五洋建設はDEMEオフショアとの合弁会社ジャパンオフショアマリン(JOM)保有でSEP船1隻を26年から稼働させる予定。同船はDEMEオフショアのSEP船“Sea Challenger”を改造し、クレーン能力を1600トン吊に増強する。
SEP船を保有・運航する海外企業はカデラー、DEMEオフショア、フレッド・オルセン・ウィンドキャリア、ヴァン・オード、ヤン・デ・ヌール、シーウェイ7が主に挙げられる。SEP船は海外ではWTIV(洋上風力発電設備設置船)と表記され、自己昇降式台(SEP)を搭載していないクレーン船を含む場合もある。特にSEP船を指す場合はジャッキアップ・ベッセルと呼ぶことが多い。
カデラーは今年エネティとの合併を完了し、新生カデラーとして再出発した。エネティはカデラーとの統合を明らかにした際、既存船3隻を売船し、船隊の更新を進める方針を明らかにした。新生カデラーのSEP船隊は建造中の7隻含め計11隻で、全て竣工すれば新鋭船を中心とする世界有数のSEP船隊を擁することとなる。新造船は今年第3四半期から順次竣工予定で、クレーンの吊り能力は1600トン吊、2500トン吊、2600トン吊となっている。
DEMEオフショアはJOMが保有する“Sea Challenger”を含め、SEP船5隻を保有している。クレーンの吊り能力はそれぞれ異なり、600トン吊、800トン吊、900トン吊、1500トン吊、1600トン吊となっている。いずれも2012年から18年にかけて竣工したものだ。
フレッド・オルセン・ウィンドキャリアのSEP船隊は3隻。うち2隻が2012年〜13年建造の1600トン吊で、1隻が12年建造の1200トン吊。
ヴァン・オードはSEP船3隻を保有しているほか、20MW級風車対応のSEP船1隻を現在建造中だ。新造船は今年5月に進水し、2025年から供用を開始する予定。
ヤン・デ・ヌールはSEP船2隻を保有しており、うち1隻が世界最大級のSEP船とされる3200トン吊SEP船“Voltaire”(2022年建造)。もう1隻は2013年建造で1500トン吊となっている。
シーウェイ7の船隊は重量物輸送船が中心で、SEP船は2500トン吊クレーン搭載の自航式SEP船“Seaway Ventus”(2023年建造)を保有している。