2024年1月25日無料公開記事「2024年問題」船社のシナリオ 内航NEXT

《連載》「2024年問題」船社のシナリオ⑪
フェリーで運転手の休息期間確保
川崎近海汽船

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八戸/苫小牧航路の乗船時間は約8時間で、フェリー乗船中は休息期間として拘束時間から除外できる

 川崎近海汽船(東京都千代田区、久下豊社長)の八戸/苫小牧フェリー航路では、トラックドライバーが乗船中に休息期間を確保できるという面でのフェリーの利用がある。RORO船の北海道発着航路では、拠点港の苫小牧に加えて釧路などの道内他港の利用が今後増えるとみている。九州では農産品の無人航送に期待を寄せるが、トレーラ化が課題のため、トラックでもRORO船を利用しやすい方策を検討している。
 同社はフェリーの八戸/苫小牧航路を毎日4便運航。RORO船は、日立/釧路を毎日1便、常陸那珂/苫小牧を毎日2便、大分/清水航路を毎日1便運航している。
 2024年問題の川崎近海汽船の航路への影響は現時点では大きくないが、他の短距離航路から同社の八戸/苫小牧航路に変更する顧客が出てきているという。フェリー部の嶋村嘉高部長は「ドライバーの休息期間を確保するためにより中長距離の航路を選ぶトラック運送事業者が増え始めている。八戸/苫小牧航路の乗船時間は約8時間で、フェリー乗船中は休息期間としてカウントされて拘束時間から除外できるので、労務管理の点からもメリットが大きいのではないか」と話す。こうしたニーズも踏まえて、今後貨物輸送の利用が少ない朝便の需要を掘り起こしていきたい考えだ。
 RORO船の営業を担当する中越公一内航定期船第2部長は「北海道発の貨物は産地が各地に散らばっており、現状は道内の貨物を苫小牧に集約して本州に発送しているが、トラックドライバーの運転時間を減らすために近隣の港湾からの乗船も増えるかもしれない」と語る。そのうえで「現在は苫小牧にあるヘッドを使うと苫小牧に戻ってくる必要があるが、より柔軟なシステムに変えてドライバーの労働時間を短くするといった取り組みも考えられる」と述べる。
 川崎近海汽船は、既に海上輸送が定着している北海道よりも、九州発着貨物がモーダルシフトのポテンシャルが大きいと見ている。中越部長は「九州からの長距離輸送はトラックによる陸送が多いが、九州/関東などはモーダルシフトに最適。特に九州の農産品は関東でも一定量消費され、温度管理が可能なトレーラを使って運んでいる。現在北海道航路では2割が冷凍シャーシだが、九州航路は1割にも満たず、拡大の余地がある。2024年問題を契機に進展するのではないか」と期待を寄せる。
 九州でモーダルシフトを進めるうえでの大きな課題としてトレーラ化を挙げる。中越部長は「トレーラ化はコストがかかるため、トラック運賃増などでトラック運送事業者がトレーラに投資できるようになるまでに時間がかかる。トレーラの購入やけん引免許取得に対する公的な助成があればモーダルシフトが進むのではないか」と語る。一方でトレーラが普及するまでの当面の対応として「10トントラックで港まで運んでトレーラに詰め替えるなど、これまでとあまり変わらない運び方ができるような工夫を考えている」という。
 同社は、2024年問題で海上輸送は一時的に増えるものの、国内の貨物輸送量自体は長期的に縮小していくと予想。その中でサービスのさらなる向上で顧客の定着化を図る考え。嶋村部長は「例えば、冷凍車などの輸送中に荷主が貨物の状況をリアルタイムで把握できるサービスは需要がありそうだ。こうした工夫で輸送サービスに付加価値をつけ、利用につなげたい」と語る。

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