2024年1月22日無料公開記事「2024年問題」船社のシナリオ 内航NEXT

《連載》「2024年問題」船社のシナリオ⑩
トラック輸送台数が過去最高記録
名門大洋フェリー

  • X
  • facebook
  • LINE

2021年12月に就航した“フェリーきょうと”

 新門司/大阪南港航路を運航する名門大洋フェリー(大阪市、野口恭広社長)は、2024年問題を追い風に輸送量を伸ばしている。2021年度に投入した新造船“フェリーきょうと”と“フェリーふくおか”は車両の輸送能力が旧船から5割増えたが、ほぼ満船で運航。輸送能力の拡充が奏功し、2022年度のトラック輸送台数が過去最高を記録した。今後も2024年問題を契機とした輸送量アップを見込んでおり、乗船日の分散や船舶の大型化などで需要増に応えていく。
 名門大洋フェリーは4隻で1日2便運航。午後5時発の1便と午後7時50分発の2便があり、特に貨物は1便への乗船要望が多い。集荷の遅れなどで1便に乗船できなかった場合も2便に乗船可能なダイヤがトラック運送事業者の支持を集めている。2021年度に2隻のリプレースを実施し、“フェリーきょうと”と“フェリーふくおか”が就航した。モーダルシフト需要に対応してトラック積載台数(12m車換算)を約162台と旧船から50%増強。二口荷役を導入して積載台数が増えても荷役時間を短縮し、可動橋も設けた。
 新造船効果もあり、22年度のトラック輸送台数は過去最高の18万4000台となった。野口社長は「2024年問題を念頭に中小の陸運事業者に営業を行い、その成果が出ている。2024年問題に早めに対応しようとしているトラック運送事業者が既にフェリーの利用をスタートした。20年以降、有人トラックの増加で火・水・木曜日に乗船が集中し、ドライバーズルームが満室になることもある」と語る。
 傾向をみると有人トラックの比率が上がってきており、野口社長は「ドライバーの休息時間を確保したい企業が増えているのだろう」と分析。「食品を扱う冷凍車の場合、西・南九州から出発して新門司/大阪南港のフェリーに乗船し、その後陸路で関東まで向かう運行もある」と話す。貨物の種類別では、飲料を含めた加工食品、機械、鋼材などのフェリーの利用が伸びている。また、九州で製造し関東から輸出する機械の荷動きが旺盛だという。
 2024年問題にともなうモーダルシフト需要は今後さらに増大すると見込み、現在の船隊の輸送能力を最大限活かすために乗船日の分散化に取り組みたい意向だ。野口社長は「現在貨物は平日に利用が集中している。働き方改革関連法の施行後、週末の乗船が落ち込んでいるのが課題だ。前述の冷凍車などは月曜日に配達できるよう土・日曜日に乗船する。そういった顧客を掴んでいくとともに、リードタイムに余裕のある貨物の乗船日を調整していただくといった工夫も必要だ」と構想を練る。
 輸送能力の増強では、2015年就航の“フェリーおおさかⅡ”と“フェリーきたきゅうしゅうⅡ”のリプレースの検討に着手する。野口社長は「船台の確保などを踏まえると早ければ25年にはより具体的にリプレース計画を立てる必要がある。大型化は必至だが、21年度の新造船を上回る積載台数とするには港湾の整備が必要で、本船の大型化と港湾整備を併せて検討する必要がある。また、船価と造船所の選定も課題だ。フェリーは基本的に建造隻数が2隻程度でフルオーダーメイドなので船価が高くなりやすい。また、最近の物価上昇により船価も高騰しており、大型フェリーを建造する国内造船所も減ってきている。次世代フェリーの建造はこれまで以上に経営を左右する決断となるだろう」としている。

関連記事

  • 第10回シンガポールセミナー
  • カーゴ