2024年1月11日無料公開記事内航NEXT
「2024年問題」船社のシナリオ
《連載》「2024年問題」船社のシナリオ⑧
敦賀/博多の新規顧客獲得推進
近海郵船
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敦賀/博多航路に投入している“なのつ”
内航RORO船定期航路を営む近海郵船(東京都港区、関光太郎社長)は2024年問題によるモーダルシフト需要を踏まえて敦賀/博多航路の新規顧客獲得を進めている。RORO船に馴染みがないトラック運送事業者に有人トラックも積載できることをアピールするなど、周知活動に注力している。
近海郵船の苫小牧発着航路は、日曜日を除く毎日常陸那珂向け2便、敦賀向け1便。敦賀/博多と東京/大阪/沖縄は週3便運航している。 主な輸送貨物は、苫小牧発が紙製品、農産品、工業製品、本州発が生活雑貨、食品、飲料、宅配貨物。トレーラ の無人航送がメインだが、常陸那珂/苫小牧航路、敦賀/苫小牧航路、敦賀/博多航路は 12人までドライバーが乗船可能。いろいろな農産品を各地で集荷する場合、小回りがきくトラックが有効な輸送機材となるため、トラックは有人比率が高い。
2024年問題の影響は航路によって異なるという。RORO船事業を担当する小野田元定航部部長は「北海道はそもそも海を渡らないと本州に物を運べないので、2024年問題でモーダルシフトが進んでいるということはない」と話す。その一方で「敦賀/博多航路は陸続きのためこれまで集荷に苦戦し、2023年4月に週5便から3便に減便したが、2024年問題を切り口に営業を強化している。RORO船にもトラックドライバーは乗れるが、それを知らないトラック運送事業者もいるので、そういった点を周知して新規顧客獲得を図っている」と語った。
BCP(事業継続計画)対策でRORO船を使う事例も増えているという。「 災害で鉄道の不通や道路の寸断が起きると海運の利用が増加する。近年大規模災害が多発しているので、非常時に海上輸送に即切り替えられるよう、船会社との運送契約を締結する企業が増えており、通常時でも貨物の一部を海上輸送に切り替え始めている」と述べた。
2024年問題の影響について小野田部長は「海上輸送へのモーダルシフトは進んでいくと考えるが、RORO船での輸送にも集荷先から港まで、港から配送先までトレーラをけん引するトラクターヘッドを運転するドライバーは必要。規制強化による一人当たりの就労時間の短縮、今後の考えられる人手不足になどにより、海上輸送へシフトされる貨物の受け皿にならない可能性が考えられる。海上へのモーダルシフトのためには、トラクターヘッドを運転できるドライバーの増員は必須。そのためには、陸送をしていたトラックドライバーのけん引免許取得や若手ドライバーの育成が急務になる。トラック会社、トラックドライバーへ国、メーカー、荷主、船社の適切な対応を行わないとトラック業界全体が縮小し、陸上輸送とあわせてRORO船の需要が減る恐れがある」 との見方を示したほか、モーダルシフトの阻害要因として「有人トラックから無人シャーシへの切り替えは多額の投資が必要。中小企業の多いトラック運送事業者が対応するのは簡単ではない」ことなどを挙げた。
「物価高で消費マインドが落ち込んでいることもあり、現時点では2024年問題を踏まえて増便や新規航路開設、船舶の大型化といった対応を行う状況ではない。仮に大型化するとしても、バースも大型化に対応しなければならないため簡単ではない」とサービス増強について慎重な姿勢を示した。