2023年12月11日無料公開記事内航NEXT
「2024年問題」船社のシナリオ
《連載》「2024年問題」船社のシナリオ④
長距離航路への移行進む
新日本海フェリー
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2017年の新造船就航に伴うダイヤ改正も奏功
北海道と本州日本海沿岸を結ぶ長距離4航路を運航する新日本海フェリー(大阪市、入谷泰生社長)では、苫小牧発のトラックの仕向地が従来の秋田から新潟に切り替わるなど、より距離が長い航路にシフトする動きが出ているという。2017年の新造船就航に伴うダイヤ改正も奏功し、貨物の利用が増加。トラック運送事業者に根強いフェリーの割高感の払拭が欠かせないとの認識で、さらなる利用拡大に向けて車両メンテナンスの負担軽減やドライバーの労働環境改善、安全運行などのメリットを訴えている。
新日本海フェリーは、小樽/新潟、苫小牧/敦賀、小樽/舞鶴の直航便を各2隻でデイリー運航するほか、苫小牧/秋田/新潟/敦賀航路で2隻を運航している。トラックの積載台数はいずれも150台前後だ。
17年に小樽/新潟航路の新造船就航に合わせてダイヤを変更。以前は小樽を午前10時30分発、新潟に翌午前6時着で運航していたが、高速フェリーを投入することで、午後5時発、翌午前9時15分着とした。阿部利宏執行役員営業部長は「ダイヤ変更により、早ければ集荷翌日に目的地に到着することが可能となった。これによって集荷地域が広がったこともあり、貨物の利用が増えた」と効果を語る。 同社の航路を利用する大型トラックの8割近くが北海道の顧客。北海道発の貨物は農産物が多く、業務用を含めた冷凍食品、加工品や魚介類もある。
2024年問題の影響として、北海道航路でより長距離の航路への切り替えを検討する顧客が今年になって増えている一方で、コスト面でフェリーの利用に二の足を踏むトラック運送事業者も多いという。陸送事業者は陸上だけの輸送料金と長距離フェリーを利用した料金を比較して割高だと考えるためだ。これに対して新日本海フェリーは、タイヤの摩耗やオイル代などメンテナンスも考慮するとそれほど割高ではないことを周知しているが、目先のコストだけで見て比べてしまうケースが多いという。
こうした中で同社は、フェリーを選択してもらうためにドライバーへのサービスを強化。フェリーの代替建造時にドライバー室の個室化を進めているほか、露天風呂付きのフェリーも就航させている。阿部執行役員は「ドライバーの皆様に船内で温かい料理を食べていただきたいので、レストランの割引券を配布している。当社だけでなく、フェリー各社は長い航海でも快適に過ごせるよう取り組んでいる」と語る。
安全面からもフェリーのメリットを訴える考えで、阿部執行役員は「運送会社の使命は安全に貨物をお届けすること。輸送の安全性を高めるためにフェリーを利用することは有効ととらえている」としている。