2022年11月1日無料公開記事内航NEXT

<内航NEXT>
《連載》内航キーマンインタビュー⑲
学界と現場をつなぎ課題解決を
日本航海学会内航海運研究会、三好晋太郎会長/佐藤淑子幹事

 日本航海学会は今春、新たな研究会として内航海運研究会を立ち上げた。カーボンニュートラルや働き方改革、デジタルトランスフォーメーションなど内航海運が抱えるさまざまな課題を学会員と内航海運業界で共有し、課題の解決に向けた調査研究に取り組む。学会内の研究会という中立性を生かし、課題を持つ内航関係者と、課題解決に資する技術を持つ事業者のマッチングの場としても活用していく方針だ。内航海運研究会の三好晋太郎会長(三井E&S造船)と佐藤淑子幹事(日本気象協会)に研究会設立の背景と今後の方針を聞いた。

 ― 内航海運研究会を立ち上げた背景は。
 「日本航海学会として、新規会員の増加と研究対象の拡大を進めていくことが課題となっており、着目したのが『内航海運』だった。内航海運業界は現在、航行中の温室効果ガス(GHG)の削減や、船員の働き方改革、デジタル化などさまざまな課題を抱えており、解決に向けて待ったなしの状況だ。一方で内航事業者は中小事業者が多く、単独で研究開発を行うことが難しい。また、課題解決のための技術を取り入れたくても、情報にアクセスすることすら難しい現状もある。こうした中小事業者が多い内航海運業界を、公益社団法人として支援していく必要があると考え、今年4月に内航海運研究会を発足した」
 「この研究会は、学会の研究者に対しては研究テーマのニーズを、内航海運業界に対してはさまざまな課題解決のソリューションを提供することを目的としている。学術界と内航海運の現場を結びつけることが大きな役割だと捉えている。学会という中立性を生かして、情報提供の場や、さまざまな立場の事業者が意見交換を行う場として活用していただきたいと考えている。学会の非会員でも研究会には参加可能であるため、他業種からのソリューション提案も期待したい」
 ― 内航海運研究会で取り扱う主な研究テーマは。
 「(1)カーボンニュートラルなどの地球温暖化対策に関する事項と、(2)働き方改革など内航海運の労働環境に関する事項、(3)デジタルトランスフォーメーション(DX)や自律運航などに関する事項、(4)課題解決のための研究、参加企業の船舶を利用した実証の促進検討―の4つを挙げている。特に(1)と(2)は、内航関係者からのニーズが強い。内航業界でも温室効果ガス(GHG)の削減は差し迫った課題であり、働き方改革についても船主にとっては死活問題だ。これらの課題を解決するためのソリューションが、(3)のデジタル技術の活用になる。DXを通じて省力化や作業負荷の低減につなげていく。日本財団が無人運航船プロジェクト『MEGURI2040』を実施したが、将来は自律航行や無人運航の技術が不可欠になる。研究会でDXや働き方改革、カーボンニュートラルに関する情報を発信し、参加者間で共有する場として活用していきたい。今後も参加者のニーズを見ながら研究会のテーマについて考えていく」
 ― 課題解決に向けた、参加企業の船舶を利用した実証とはどういうものを想定しているか。
 「現時点では具体化している話はない。ただ、参加者の中には自社の船をさまざまな実証に使用しても良いと提案する船主もいる。このような船主と、実際に船舶を使って研究を行いたい研究者や課題解決のためのソリューションを実験したい事業者をマッチングしていくことを想定している」
 ― 研究会の具体的な活動内容と今後の方針は。
 「春と秋の年2回、テーマを決めて講演会と研究会を実施していく。今年6月に第1回の研究会を開催した。『丸三海運“島風”におけるGHG削減およびDXの実施事例紹介』と『内航コンテナ船の実海域性能と燃費評価に関する共同研究の紹介』をテーマとした講演があり、活発な質疑応答が行われた。約70人の参加があり、内航船社・船主や、航海機器などの舶用メーカーの参加が多かった。思った以上に反響があったと評価している」
 「次回となる第2回研究会・講演会(https://j-nav.org/conf-147/)は11月10・11日に広島県で開催する予定だ。研究会では大阪商業大学の松尾俊彦教授が『内航船員の働き方改革と課題』と題して講演する。第1回研究会で、現場で実務に携わる航海士や機関士からの生の声を聞きたいとのニーズがあったため、松尾教授と現場で働く船員などとのパネルディスカッションも行う。講演会では国土交通省海事局から『内航海運業界でのカーボンニュートラル推進に向けた政策について』と題して講演してもらうとともに、カーボンニュートラルに関する講演を5本予定している。3年後にはシンポジウムを開催したいと考えている」
 ― 学会の他の研究会との連携方針は。
 「日本航海学会内には、シーマンシップ研究会や航法システム研究会などさまざまな研究会が存在する。さまざまな研究会に重複して参加するメンバーも多く、柔軟に連携することで情報共有を進めていきたい。例えば、シーマンシップ研究会とは働き方改革、航法システム研究会ではDXに関して協力できると考えている。最終的には内航海運が抱える課題解決につなげ、内航海運の発展に寄与することを目指していく」
(聞き手:中村晃輔)

三好会長

佐藤幹事

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