2022年8月5日無料公開記事内航NEXT 内航キーマンインタビュー

《連載》内航キーマンインタビュー⑤
環境対応を含む地域最適化に貢献
商船三井内航 小林洋社長

 商船三井グループの商船三井内航は、不定期船と特定荷主・貨物向けの専用船を約30隻運航している。小林洋社長は同社の強みを「商船三井の営業部門・技術部門・海技安全部門と連携し、各荷主向け外航・海洋サービスに国内事業サービスを加えたトータルサービスを展開できることだ」と述べつつ、グループ外の企業との連携強化への意欲も示した。事業環境について「環境問題や地政学リスクが高まる中、地産地消の動きなど地域最適化へのニーズが強まっている」との認識を示したうえで、「各地域の顧客や船主、コミュニティーとも関係を深め、環境対応を含めた地域発展に貢献したい」との抱負を語った。

■グループの総合力を発揮

 ― 商船三井内航の運航規模と船隊構成は。
 「現在約30隻の基幹船隊を運航し、特定荷主・貨物向けの専用船と不定期船が半々。このうち自社管理船は1隻で、さらに2020年に竣工した国内初の内航LNG燃料貨物船“いせ みらい”や液化LPG船など数隻を友好船主と共同保有している。専用船の種類は幅広く、電力会社向けの石炭船・黒油タンカーや化学メーカー向けのLPG船、工場原料や融雪剤として利用されている塩輸送、木質バイオマス燃料輸送などを手掛け、鉄鋼会社向けRORO船を顧客と共に開発して保有している。不定期船は鉄鋼製品、石炭、コークス、スクラップを始め幅広い貨物を輸送しており、中でも主要貨物は鋼材だ」
 ― 商船三井内航の内航オペレーターとしての強み・特徴は。
 「商船三井グループとして、商船三井の営業部門・技術部門・海技安全部門と連携し、各荷主向けの外航・海洋サービスに国内事業サービスを加えたトータルサービスを展開できることだ。大手海運会社の100%子会社で、ばら積み貨物輸送を主とする内航コモンキャリアは稀であり、信頼ある商船三井グループの看板をベースにして幅広いお客様にサービスを展開できる。特に電力会社向けの輸送に関しては、今後も商船三井の外航営業部門と連携しつつ、新しい輸送需要にもワンストップでお応えしたい」
 「環境関連をはじめとする新規ビジネスへの参画においても商船三井グループの総合力が推進力となる。これまでも内航貨物船初のLNG燃料船“いせ みらい”や、鋼材輸送専用のRORO船の開発にあたり商船三井技術部と協業し、お客様にとって最適な仕様の船を開発した経緯がある」
 「今後は商船三井グループ企業との連携に加え、グループ外の企業との連携も太く強くしていきたいと考えている。昨年当社は田渕海運、村上秀造船、阪神内燃機工業と共に国内初のメタノール燃料内航タンカーの建造に向けた戦略的提携を締結したが、このプロジェクトもグループ内外の連携が結実したものだ。また、商船三井テクノトレード、大手総合化学工業メーカーのトクヤマ、船舶管理会社のイコーズ、本瓦造船と、水素燃料内航貨物船の開発に向けて検討を行っている。検討会を通じて脱炭素化に向けて水素を有効活用する方法を見出していきたい」
 「当社の現在の人員は役員を含めて30人。プロパー社員のほか、私を含む商船三井出身者、新卒採用、キャリア採用と、バラエティに富んだ社員構成になっている。特に近年キャリア採用を増やしており、さまざまな経験と知識を有する社員が集まり、多様な分野にチャレンジする素地が整いつつある」
 「運航船のほとんどが用船だが、信頼のおける船主とのパートナーシップが基盤になっている。現在約30社の船主、船舶管理各社と取引させて頂いている。自社管理船への乗組員手配を含め、船員は配乗会社から配乗して頂いているが、商船三井出身の運航管理者を中心に全社一丸となって安全管理体制を築いている。安全運航の維持に重要なことは、現場任せにしないこと。われわれ陸上オペレーターも常に現場での作業を想像し、陸上と海上が一体となって安全意識を継続していく必要がある。現場業務への想像力を鍛えるため、月に一度の『事故振り返る会』を開催し、過去発生した事故について理解を深める機会を設けている。本船の現場は常在戦場であり、リスクへの想定と備えが重要であると考えている」

■新たなエネルギー輸送需要にも対応

 ― 船隊整備計画と今後伸ばしていく船種は。
 「お客様のニーズ次第ではあるが、エネルギーの転換期を迎える中で、将来のガス船の需要に応える必要がある。現在われわれが手掛けているガス輸送は化学製品用のLPGだが、その他の用途のガス輸送にも積極的に関わっていきたい。今後産業用燃料は化石由来(石炭・重油)からバイオマス、アンモニアや水素などに置き換わる見通しなので、外航部門と連携しながら新しいエネルギー輸送需要に応えていきたい。一方で、内航船は外航船以上に船員供給人数が限定される状況であり、パートナー船主と有能な船員の確保を前広に進めていく必要がある」
 ― 中長期の事業方針は。
 「商船三井グループの経営方針、企業理念、事業目標を共通のものとしながら、国内の海洋サービスを充実させることでグループの企業価値向上に貢献したいと考えている。環境問題や地政学リスクが高まる中、地産地消の動きなど地域最適化へのニーズが強まっている。国内沿岸での海事産業において当社が関与できるサービス分野はまだ沢山あると思う。商船三井グループ企業と連携を深め、各地域のお客様や船主、コミュニティーとも関係を深め、環境対応を含めた地域発展に貢献したい。風力発電事業への関与もその思いを込めて計画している」
 ― 内航海運業界全体の課題と解決策は。
 「船員の労働環境改善と高品質な船舶の導入が課題だ。課題解決のためには、デジタル化や業務の簡素化などが必要と考えている。商船三井と旭タンカーが出資するe5ラボ・マリンドウズや、特別会員として参加する内航ミライ研究会とも情報を共有しており、内航海運のDXソリューションを友好船主にも還元し協働していく」
 「低・脱炭素化への対応として新燃料導入は不可欠であるが、タンク容量の問題や安全面での制約などから内航小型船での応用ハードルは高い。重油を燃料とする既存船の効率は高く、現状で言えば運賃率、貨物積載量、補油機会などを犠牲にしなければ導入は難しいが、将来の低・脱炭素化を実現するためにはできるところから着実に進めていく必要がある。排出権取引や新燃料の価格見通しなど、将来訪れるビジネス環境を見越して新技術導入を積極的に進めていく考えだ。
 一方で、重油を燃料とする船であってもより推進効率の高い船を開発できる余地があると考えている。1トンの貨物を1マイル1時間で運ぶエネルギー効率に着目し、高い推進効率を実現する船の開発も重要と考える。減速・増速のメリハリをつけ、顧客ニーズと環境負荷低減ニーズの両方を満たす、きめの細かい海上輸送がオペレーションの要になると考える。環境対応優良船については、国土交通省主導でモデル化が進んでいる連携型省エネ船のコンセプトも現実的な解と考える。環境・安全対策に優れた船や船員にとって働きやすい船を市場に増やすためには、安全面、機能面における船質の見える化を行い、優れた船を建造・所有する船主に金融、保険面でモチベーションを与える仕組みも考えるべきだろう」
(聞き手:深澤義仁)
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