2022年8月2日無料公開記事内航NEXT

<内航NEXT>
提案型貨物営業を推進
商船三井フェリー、マーケティング機能を強化

  • X
  • facebook
  • LINE

商船三井フェリーのRORO船“ぶぜん”

 商船三井フェリーは、マーケットインの思想に基づいた提案型の貨物営業を推進している。貨物輸送に関するマーケティング機能の強化に向けて昨年、営業マーケティング室を設立した。芦澤潤室長は、「従来は営業部隊が顧客から得たミクロの情報を基にセールス活動を進めていたが、マクロ視点でのマーケット情報の活用が不足していた」と振り返る。その不足を補うため、「営業マーケティング室として、業界団体のデータなどを基に品目別の物量の動向や、品目別市場の変化などを調査することで、今後のマーケットに対する仮説を立てている。ミクロ情報とマクロ情報を組み合わせたハイブリッド型ビジネスインテリジェンスを経営とセールスに役立てていく」方針だ。
 商船三井フェリーは、茨城港・大洗港区と苫小牧港を結ぶフェリーを1日2便運航するほか、RORO船で東京/瀬戸内・九州航路を運航している。フェリーは旅客輸送のみならず、北海道/首都圏間の大動脈の貨物輸送にも対応している。
 足元では、カーボンニュートラルに向けた荷主の環境意識の向上が進むほか、2024年度から始まるトラックドライバーの時間外労働規制の強化によりトラックによる陸送が難しくなる「2024年問題」への対応として、海運モーダルシフトの機運が高まっている。フェリーやRORO船はトラックと比べて輸送中のCO2排出量が約5分の1となっており、環境に優しい。また同社は、2025年に大洗/苫小牧航路の深夜便にLNG燃料フェリーを就航させる予定だ。LNG燃料の活用や最新技術の搭載により従来船と比べてCO2排出量を約35%抑える見通しで、環境負荷が小さい利点を生かして、モーダルシフトの受け皿として集貨を進めていく方針としている。芦澤室長は、「CO2の削減は世界全体で待ったなしの課題だ。顧客の環境対策戦略に寄与できる点を強みとしてアピールしていく」と強調する。
 一方で集貨営業に当たっては、「内航フェリー・RORO船の世界には外航とは異なり、マクロ的にマーケット動向を把握するための適切な指標が存在しない」(芦澤室長)ことが継続的な課題だ。そのため、今あるフェリー・RORO船サービスに積載する貨物を集めていくというプロダクトアウトの考え方に偏らぬよう、顧客のニーズやマーケットの動向を踏まえたマーケットインの考え方によるサービスにしていくことを目指し、足元ではマーケティング機能を強化している。
 市場動向を把握するため具体的には、品目別の生産・販売状況や、生産拠点の立地状況のほか、各港での集貨促進に向けた助成制度や、荷主のホワイト物流の取り組み状況などを調査・分析している。「営業先で仮説を基に会話することで、話が広がったり新たな情報を得られるなど、効果的な会話に役立っている」(同)ようだ。また最近では、顧客満足度調査を実施し、サービス利用者のニーズを把握した。今年からフェリー・RORO船における貨物輸送予約をウェブ上で行えるポータルサイト「SMART」のサービスを開始したほか、ホームページを刷新するなど顧客利便性を高めているが、今後も顧客満足度調査の結果を基にサービスのさらなる品質向上につなげていく考えだ。
 芦澤室長は、「荷主の中には2024年問題の存在を知らないほか、フェリー・RORO船が同問題の有効なソリューションであることを認識いただけていない可能性もある。2024年に物流が社会インフラとして目詰まりを起こさないよう、2024年問題の啓蒙と課題解決に向けて尽力していく。そのためにも、利便性の良さを感じていただけるサービスの提供を目指す」としている。

関連記事

  • カーゴ
  • Sea Japan 2024 特設サイト