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2024年6月28日無料公開記事洋上風力発電

洋上風車用浮体の量産に名乗り
造船所やブロック工場が設備活用

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 浮体式洋上風力発電の普及を見据えて、浮体式基礎の生産に造船所や船体ブロック工場が事業参入方針を掲げ始めた。日本は住友重機械の横須賀造船所と大島造船所香焼工場が浮体構造物の工場とする構想を掲げており、韓国では船体ブロック用の工場や新工場で量産計画が立ち上がる。東南アジアでも造船所跡地を活用する動きが出てきた。浮体式風車の大規模需要も見込まれる中、既存設備を活用したり、新工場を建設して量産化を目指す。

 韓国ではこのほど、艦艇建造や船体ブロック製造を手掛けるSKオーシャンプラント(旧サムカンM&T)がこのほど、洋上風力基礎部の量産に向けた新工場建設計画を立ち上げた。既に既存の2工場では着床式基礎部の製造事業を開始し、日本や台湾の洋上風力向けにしているが、新たに165万㎡の新工場を建設。完成すれば既存工場と合わせて総面積258万㎡の工場となる。4500トン規模の浮体を年80基規模生産できるという。
 同じく韓国では本紙昨報の通り、ブロック工場のHGS成東造船が米国の浮体エンジニアリング会社プリンシプル・パワーと、浮体式基礎の量産化に向けた覚書を締結。セミサブ型浮体式基礎「ウィンドフロート」を低コストで大規模に製造するための設備と工程を最適化する。同社の工場は敷地面積119万㎡で、既に着床式基礎も手掛けている。ここで浮体を量産し、韓国国内外への供給を目指す。
 東南アジアでも浮体製造の構想が浮上している。フィリピンではスービック湾の旧韓進重工の造船所跡地を今年、韓国のHD現代グループがリースすることを決定。同工場は、艦艇修繕事業などともに、洋上風力発電生産基地として活用する方針で、浮体式基礎の生産も視野に入れている。またシンガポールではアンカーなどを手掛けるムーアイーストがこのほど、造船大手シートリアム(旧センブコープマリン)からクレセント工場を取得。浮体式洋上風力用の基礎関連工事を手掛ける方針という。
 日本も将来の浮体式洋上風力の導入に向けて、造船所が名乗りを上げている。住友重機械マリンエンジニアリングは造船事業から転換し、横須賀造船所の建造ドックなどを浮体基礎の製造に活用する方針を表明している。また大島造船所がこのほど稼働した香焼工場で、やはり浮体式基礎の製造に参入することを検討している。
 浮体式洋上風力発電の普及には、技術確立と低コスト化とともに、浮体基礎の量産体制の構築がテーマになっている。日本だけでも2050年に向け、4000トン級の浮体基礎の需要が年150〜200基に拡大するとの需要予測もあり、アジア全体では相当数の需要が期待されている。この一方、生産場所として有望視されていた造船所は、同じ時期に新造船需要が急増する見通しとなったため、浮体に生産能力を振り分ける余力が乏しくなってきた。効率よく低コストで浮体を量産するには、ある程度は専用工場化が必要との見方もある。

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