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2024年10月1日無料公開記事洋上風力発電

洋上風力関連調査の負担軽減へ
日本版セントラル方式、順次導入進む

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洋上風力発電事業を開発する上では、風況調査や海底地盤調査や環境影響評価(環境アセスメント)など各種調査・手続が必要となる。再エネ海域利用法に基づく公募を巡っては、同一海域で複数の事業者が重複して調査・手続を行っており、漁業関係者など地域住民の負担増に加え、事業者においても事業化が見通せない中で多大なコストを負担する状況となっている。政府はこれらの課題解消と案件形成の効率化に向け、洋上風力のセントラル方式の確立に向けた環境整備を順次進めている。

政府が取り組むセントラル方式は「政府や自治体の主導的な関与により、効率的な案件形成を実現する仕組み」と定義され、再エネ海域利用法に基づく洋上風力発電事業者公募や、促進区域指定に向けた協議会の運営などの地域調整、系統接続の確保もその一環として行われている。これらに加え、サイト調査と、環境アセスにかかる各種手続きや調査についてもセントラル方式の対象として運用に向けた準備が進められている。

風況・海底地盤・気象海象を対象とするサイト調査では、エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)がセントラル方式による調査業務を担うべく2022年度に法改正が行われた。23年度から毎年度3か所程度の区域で実施されており、調査結果は公募に参加する事業者に提供され、調査費用は選定事業者が負担することになる。これにより、複数の事業者によって公募前に実施されていた現地調査が不要となることから、地域関係者の負担軽減が期待される。なお、JOGMECの実施するサイト調査は基本設計に必要な内容を対象とするもので、選定事業者は落札後に別途、詳細設計のための調査を行うこととなる。

環境アセスについては、環境省がセントラル方式の導入に向けた取り組みを進めている。事業者は環境影響評価法と電気事業法に基づき、騒音や水の濁り、鳥類、海洋生物など環境への影響について環境アセスを行うこととなっている。

環境配慮を巡っては再エネ海域利用法と環境影響評価法等において検討内容の重複が生じている。また、サイト調査と同様、環境アセスにおいても複数の事業者により初期段階のアセス手続が行われる事態が起きており、行政、地域住民の負担増加につながっている。これらの課題解消に向け、環境省は環境アセスの一部を国が行うセントラル方式の確立を目指す。これに向けては、今年3月に閣議決定された再エネ海域利用法の改正法案に、海洋環境などの保全の観点から適切な配慮を行うため、促進区域の指定の際に国が必要な調査を行う仕組みを創設するための内容が含まれている。

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