2026年3月10日無料公開記事

ケープサイズ船隊の拡大目指す
スターバルク パパスCEO

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イーグルバルク買収で年間5000万ドルのコストシナジー

米NASDAQに上場するバルカー船社スターバルク・キャリアーズは2024年にイーグルバルクの買収を完了させ、ハンディマックス船隊を大きく拡大させた。現在は大型バルカーの需要が拡大するとの見通しから、ケープサイズでの船隊規模拡大を目指しており、中古買船、用船、他社との合弁、M&Aなどさまざまな選択肢を実施・検討している。本紙の書面インタビューに応じたペトロス・パパスCEOは今後の船隊整備について「脱炭素化や環境配慮の観点からも大型船は有利だ。大型船はトンマイル当たりの燃料消費量が少なく、温室効果ガス(GHG)排出量を低減できる。特に航海時間の長い大型船はその効果が顕著だ」との考えを示した。

― 船隊規模と発注残は。

「現在の運航船隊の規模は142隻で平均船齢は11.9年だ。発注残については中国の恒力重工(大連)で今年7~9月に竣工する8万2000重量トン型カムサマックス3隻と青島造船廠で今年中に順次竣工する同型船5隻がある。加えて8件の長期用船契約を結んでおり、市況の変化に応じた柔軟性と選択肢を確保している」

― 日本とスターバルクの関わりは。

パパスCEO

「日本は当社にとって長年にわたり戦略的に重要なマーケットだ。これまでも、日本船主から幅広い船型のバルカーで用船してきた。多くは商社を通じたスキームで、一部にはパーチェス・オプション(PO)が付いている。金融面ではこれまでに日本のカウンターパーティーとセール・アンド・リースバック(SLB)取引を行ってきており、その一部は現在も続いている。また日本の金融機関との直接取引を通じ、資金調達の基盤を強化してきた」

「日本の造船所とは、将来船型の設計やドライバルクのニーズの変化について、継続的に意見交換を行っている。関係は2000年代半ばにまでさかのぼることができるが、12年以降は燃費効率を重視したエコシップを日本の造船所が先駆けて開発したこともあり、関係が一層強化された」

「最近では日本の商社と、近代的エコシップに関する合弁会社(JV)を設立した。これは日本との関係強化に向けた重要な一歩と位置付けている。日本は技術力だけでなく、文化・倫理観・長期的関係を重視する姿勢などの面で、高く評価している」

― 日本政府の造船支援策に対する評価は。

「非常に前向きに受け止めている。日本の造船所は長年にわたり世界の造船業の中核を担っており、とりわけバルカーでは高品質かつ燃費効率の高い船舶を納期通りに供給してきた。中国・韓国の造船所の船台は数年先までほぼ埋まっている状況にあり、競争力ある日本造船業の存在は、世界的な供給能力と健全な競争を維持する上で重要だ。また、船主にとっても造船所の選択肢が広がり、設計面での革新が促される」

「韓国の造船所がバルカーから実質的に撤退し、中国の造船所がより高度で複雑な船種に軸足を移す中、日本の造船所の効率性・品質・信頼性という強みに注力する戦略は時宜を得ている。日本建造船は新造船・中古船市場の双方で資産価値が維持されており、その強みが表れている。船主の立場からみれば、日本政府の造船支援策は安全性と環境性能に優れた船舶の普及につながるものであり、歓迎すべき動きだ」

― 重点投資したい船型は。

「特にケープサイズ、ニューキャッスルマックスといった大型船に需要があると見ている。2027年以降に本格化する予定のシマンドゥ鉄鉱石プロジェクトや、ギニア産ボーキサイトの輸出増加により、長距離トレードは大幅に増加する見通しだ。トンマイルベースではブラジル―中国航路に匹敵し、港湾混雑により航海日数の長期化も見込まれるため、大型で高効率な船の需要を後押しするだろう」

― ただ、新造船価は高騰している。

「慎重かつ戦略的に船隊規模の拡大を図っている。ケープサイズやニューキャッスルマックスの新造船価は依然高水準で、造船所の船台の空きは2029年以降だ。そのため、中古船の選択的取得、志を同じくするパートナーとのJV、戦略的な用船調達、そして適切なM&Aも選択肢としている」

「同時に、中型の老朽・低効率船を段階的に売却し、より高い収益を得る機会を増やしているほか、株価が純資産価値を大幅に下回った際に自社株買いを行うことで資本を再配分している。売買船を担う部門を積極的に機能させ、戦略に合致し、リターンに見合う機会を常時検討している」

― M&Aと言えば、2024年にイーグルバルクを買収した。

「船隊規模の拡大により、米国上場のドライバルク企業で最大となった。年間約5000万ドルのコストシナジーを実現しており、営業機能や世界展開も強化された。財務体質も強化され、配当、自社株買い、長期的価値創造を支える資本配分が可能となっている」

― 代替燃料についての考えは。

「燃料の選択肢については依然課題が残る。現状では船主・荷主とも信頼性を重視しており、重油が主流となっている。ただし当社の新造船はすべて“フューチャーレディ”であり、アンモニアやメタノールなどの代替燃料や炭素回収技術への対応準備を施している。同時に、先進的な船型設計、最適化された推進システム、高効率エンジン、電力系統改善、最先端の防汚塗装・船体保守など、燃費効率の向上策にも継続的に投資している。DXによる航路最適化は数年前から全船に導入済みで、燃料・コスト削減に寄与している」

― AIの活用やDXに関する取り組みは。

「現在、業務最適化と意思決定高度化を目的にAIを試験的に導入している。非効率な部分の特定と明確なユースケースの開発に注力している。当社ではAIを“人間の専門性を補完する意思決定支援ツール”と位置付けている。サイバーセキュリティやデータガバナンスにも配慮し、段階的に導入している。将来的には、収益拡大、コスト管理、運航規律、規制対応の継続的改善を実現する手段になると考えている」

― 2026年の業績見通しは。

「2026年の市況は慎重ながら楽観的に見ている。供給は限定的で、鉄鉱石・ボーキサイトの長距離輸送がケープサイズの船腹需要を支え、他船型にも波及効果が見込まれている。当社は多様な船隊構成、強固な営業機能、自社管理体制により、レバレッジ効果を発揮できる立場にある。基本的にはスポットによるエクスポージャーを維持しつつ、リスク調整後のリターンが魅力的な場合は長期契約も選択的に締結していきたい。年内には新鋭のカムサマックス8隻が引き渡される予定であるため、船隊の効率が一段と向上する見込みだ」

― ドライバルクマーケットでの懸念はあるか。

「短期的には地政学的なリスクが最大の懸念点だ。紛争、貿易摩擦、制裁、関税・港湾措置など政策の不透明性がボラティリティを高めている。また中国は最大の需要国だが、不動産不況が鉄鋼需要を抑制する一方、景気刺激策の効果は不透明な状況にある。供給面では発注残が歴史的な低水準にあり、既存船隊が高齢化している。燃料技術・規制の不透明性が新規発注を抑制しているためだ。IMOのネットゼロフレームワークは採択が延期されたが、将来的に船隊の経済性に大きな影響を及ぼす可能性がある」
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