2025年8月1日無料公開記事洋上風力発電

浮体式洋上風力発電システムでAiP取得
三井海洋開発、ABSから

  • X
  • facebook
  • LINE
  • LinkedIn

AiP授与式のようす。三井海洋開発の松宮晃一CTO(左)、ABSのロブ・ラングフォードグローバルオフショア再生可能エネルギー担当バイス・プレジデント

 三井海洋開発(MODEC)は、浮体式洋上風力発電システム「iTLP2-FOWT」に関する基本設計承認(AiP)を米国船級協会(ABS)から取得した。7月31日発表した。風車本体を含まない支持構造物部が今回のAiP対象範囲となる。同社は「i-TLP2」を「安価でクリーンな電力を供給によるエネルギー・トランジションに貢献する革新的なソリューション」としている。
 「i-TLP」は優れた経済性の実現に加え、4つの開発テーマに基づいて開発された安価でクリーンな電力の供給に貢献する風力発電システム。4つの開発テーマは①固定式洋上風力発電設備向けに設計・製作されたタービン・タワーを使用可能にする②サイト面積当たりの発電キャパシティを最大化する③迅速な建造・据付を可能とし、早期のウインドファーム建設を実現する④どのような土質の海底に対しても設置可能にする―。
 トラス構造と円形のポンツーンを採用して作りやすい構成要素とし、接続部分の一部を可動式にすることで陸上での組み立てが容易になっている。MODECは「固定式洋上風力発電設備が設置される海域よりも深い50m以上の水深をターゲットとした、従来のセミサブ式などの浮体式洋上風力発電設備に代わる新たな風力発電の選択肢となりえる」としている。
 セミサブ方式、スパー方式といった緩係留を用いた浮体式風力発電設備は、発電中に浮体の揺れが大きく、広い海底占有面積が必要で、風車の大型化に伴いより難しい対応が求められることとなる。そのため、MODECは緊張係留(TLP)方式を用いた浮体式洋上風力発電設備の開発を進めてきた。
 「i-TLP」は「i-TLP2」の前世代コンセプトで、既にABSからAiPを取得していたものの、開発テーマに対しさらなる改善の余地があり未発表としていた。今回の「i-TLP2」は、浮体の揺れや海底占有面積が小さいというTLP方式の特徴に加え、ファーム規模での建造需要にも迅速に対応できるよう浮体設備の建造方法にも工夫を加えた。
 同社は、「i-TLP2」の開発からヒントを得て、従来の着床式の限界水深を超えた最大100m程度の水深にも設置可能となる新たな着床式の洋上風力発電システムも並行して開発中。
 MODECは、今回の「i-TLP2」を安価でクリーンな電力を供給によるエネルギー・トランジションに貢献する革新的なソリューションとして、洋上風力発電のエッセンシャル・プレイヤーを目指す同社にとっての大きなマイルストーンと位置づける。「今後も、要素技術の成熟度の向上に努め、引き続き真摯な姿勢で技術開発や実証機会を探求し、より経済性が高く環境負荷の小さい革新的な洋上風力発電ソリューションの実現に向けて邁進していく」としている。

関連記事

  • 海事プレスアプリ
  • 増刊号シンガポール2025